ITIL V3はV2からどこが変わったかITIL V3から知るITサービス管理(2)(3/3 ページ)

» 2008年03月17日 12時00分 公開
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ITIL V3における5つのライフサイクル

 さて、これに対して、新たにリリースされたITIL V3ではどのように各プロセスや機能を定義しているのでしょうか。各プロセスの説明を行う前に、サービス戦略、サービス設計、サービス移行、サービス運用、継続的なサービス改善のライフサイクルの流れを理解しておくと分かりやすいので、まずは以下の図を理解しましょう。

 この図は、すべてのサービスソリューションと活動はビジネスからの要求に従って実行されるという考えを示したものです。

ALT 図3 サービスソリューションとユーザーのビジネスの関連性を提示(クリックで拡大)

 ライフサイクルの個々の段階の概要説明は次の通りです。

 注意すべきなのは、各ライフサイクルに挙げているプロセスや機能には複数のライフサイクルにまたがって活動するものがあるという点です。例えば、サービス設計のキャパシティ管理や可用性管理、サービス移行の変更管理や構成管理などは、サービス運用のライフサイクルでも実行されます。

サービス戦略(Service Strategy)は、どのようにしてサービスを設計、開発、実装をしていくべきかということを戦略としてまとめたものです。サービス提供先となるビジネス領域の特定、提供サービスの決定、サービス提供に必要なアセットの準備に関する説明を含んでいます。これらはサービスレベルパッケージとしてサービス設計に引き渡されます。サービス戦略のプロセスには、財務管理/需要管理/サービスポートフォリオ管理があり、ITサービス全体をビジネスと同じレベルから俯瞰(ふかん)して長期的な戦略を立てることに重きを置いています。

サービス設計(Service Design)では、既存サービスや新規サービスのビジネス要件を満たすためにどのような設計、開発をしていくべきか、その方法について述べています。サービス設計では、サービスに必要な要素が一通り含まれるようにプロセスが設けられており、サービスカタログ管理/サービスレベル管理/キャパシティ管理/可用性管理/ITサービス継続性管理/情報セキュリティ管理/サプライヤ管理によってサービスデザインパッケージが定義され、以後はこのパッケージ単位でサービスが管理されます。

サービス移行(Service Transition)では、本番環境に対するサービスの変更をスムーズに行うための方法がまとめられています。ITサービスはこの段階で、変更管理/構成管理/ナレッジ管理/移行計画および支援/リリースおよびデプロイ管理/サービスバリデーションおよびテスト/評価というプロセスを経ることになり、ITサービスは運用フェイズを迎えます。

サービス運用(Service Operation)では、定常運用下におけるITサービスの提供を効果的に行うための方法をまとめています。ここでは、イベント管理/インシデント管理/リクエスト対応/アクセス管理/問題管理というプロセス群と、サービスデスク/技術管理/アプリケーション管理/ITオペレーション管理という機能が存在し、PDCAサイクルのベースとなる活動が定義されています。

継続的サービス改善(Continual Service Improvement)では、これらITサービスライフサイクルのいずれの段階においても、障害個所や弱点に対する改善機会を見つけ出し、顧客に対してより良いITサービスを提供する方法をまとめています。ITサービスの継続的な改善は、7ステップ改善/サービス測定/サービスレポートというプロセスによって成り立っています。

 次回から、これら5つのライフサイクルについて説明していきます。

著者紹介

▼中 寛之(なか ひろゆき)

アクセンチュア株式会社 SI&T テクノロジーコンサルティング マネジャー。東京都立大学(現首都大学東京)経済学部経済学科修了後、アクセンチュア株式会社に入社。現在、あらゆる業種を対象にデータセンター移行・統合、ITサービスマネジメントを中心としたコンサルティングに従事する。アイティメディアでブログを掲載中。


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