今すぐできる、メンテナンス力の向上!目指せ! ネット時代の幸せな管理者(8)(2/2 ページ)

» 2008年04月24日 12時00分 公開
[仲西 亮子,@IT]
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メンテナンス業務は作業が肝心

1. 作業は8割が準備

 筆者が運用の業務を始めたときに、現場の先輩から「作業は8割が準備、後の2割が本番作業」と教えられました。今ではこの言葉を、筆者自身の後輩にも伝えています。

 この言葉の意味は、とにかく丁寧に作業の準備を行うことです。本番を想定して作業の手順や実際の現場での立ち回り準備を事前に行った上で、実際の作業に臨むことが作業そのものの成功につながるというものです。

 想定した作業の流れをきちんと頭に入れ、想定外の事象が発生したときに、それに対処できる余裕を作っておくことが重要です。

 事前に想定している作業の流れを追うので精いっぱいだと、想定外の事象が発生したときに、冷静に対処することが困難になってしまいます。

 事前の準備には、論理的な作業の手順の作成から物理的な作業の準備まで幅広くあります。

 作業手順書の作成は、追加設定を行ったりパラメータの変更をしたりしたら、次の手順に行く前に、何を確認するか、どういう状態になっていることが正解かまでを明記しておくといいと思います。

 物理的な作業の準備では、ケーブルの事前配線や、サーバのマウント位置の目印を事前に付けておくのは当然です。最も重要なことは、作業を複数で行う場合、作業中誰がどこにいるのか、連絡手段は何かといったフォーメーションを、事前に決めておくだけでなく、作業に関係するメンバー全員で共有することです。

 そのほかにも、作業中に想定外の事象が発生したときの報告先と取るべき手段、手順で不具合が発生したときの切り戻し手順も検討しておきましょう。

2. 作業の確認に「やり過ぎ」はない

 作業は慎重に行うことです。それが作業時間を長引かせないポイントだったり、想定外の障害を発生させないポイントだったりします。

 作業を急ぐあまり確認作業を怠ると、必ずその後に痛い目に遭ったり、作業が長引いたりするものです。

 面倒ですが、コマンドを1つたたいたら、幾つかのコマンドでその正常性を確認するくらいの心持ちが重要です。

 また、作業時に発生する障害の影響範囲は、想定しているよりも大きくなることがあります。従って、確認作業も「作業対象の機器そのもの」だけでなく、もう少し広げることが肝要です。例えばネットワーク機器であれば近隣、同エリア、経路を交換している機器などの範囲を広げて確認することが重要ですし、サーバであれば、同じドメイン内のさまざまな機器の動作確認を行うことが、作業による影響で発生する障害の早期発見、早期対応につながります。

やっぱり重要なメンテナンス業務の中長期計画

  皆さんは、機器の寿命やライフサイクルについて、きちんと考えているでしょうか。

 リースの期限前に事務担当者から「更新か、返却か」と聞かれて焦ったことはありませんか。

 機器だけでなく、ライセンスやサーバ証明書などを運用する際には、「期限」というものも重要になります。そうしたライセンスやサーバ証明書の期限の管理も、システムの安定運用には欠かせません。

 また、機器の変更については、寿命やアップグレードなどを中長期的な視点で検討しておくことが重要になります。次にどういう機能が必要になるか、何を最優先事項として選定を行うか、ベンダの販売計画なども把握しておく必要があります。また製品については販売終了時期やサポート終了期限などの情報も、中長期計画に検討のポイントとして入れておくことも有効です。

 メンテナンスは日々の心掛け次第です。この心掛け次第で皆さんの管理するシステムが安定するかどうかがかかっています。

 面倒を面倒と思わず、習慣として行うことはとても重要です。きっと皆さんもいろいろな経験を通して、今回お話したことは頭で分かっていらっしゃる方も多いかと思います。ただ、その理解を実践しているかどうか、となると、ちょっと耳が痛い方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 システムは生きています。生きているからこそ、日ごろの世話(=メンテナンス)が重要になるわけです。

 皆さんの日々のメンテナンス作業で、本記事を参考にしてください。

著者紹介

▼著者名 川村 聖一

2001年 日本電気株式会社入社。キャリア営業、法人顧客SEに従事。

2004年 同社ISP部門へ異動。ISPネットワーク設計・構築、新技術導入、ISMS取得に従事。

2006年 NECビッグローブ株式会社へ出向。法人向けアウトソースサービスのコンサルティング・設計・運用を担当。Internet Weekプログラム委員。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 仲西 亮子

2000年 三井情報開発株式会社(現:三井情報株式会社)入社。

2000年 外資系ISPの技術部へ出向、IPアドレス管理やドメイン名管理業務に従事の後、同社iDCのバックボーン運用業務従事。

2002年 三井情報開発株式会社でiDC事業開始と共に出向解除。同社でASの管理・運用業務に従事。

2005年 同社のiDC事業部がMKIネットワーク・ソリューション株式会社として子会社化。これに伴い、MKIネットワーク・ソリューションズ株式会社へ出向、現在に至る。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 山崎 佑司

1999年 ソニーシステムデザイン株式会社(現:ソニーグローバルソリューションズ株式会社)入社。ソニー本社をはじめとした、大規模エンタープライズネットワークの設計、構築、運用を担当。

2001年 ソニーグループのショールームや、ソニーグループが主催する各種イベントにおけるネットワークシステムの企画、設計、構築、運営を手掛ける。

2003年 ソニーグループiDCのネットワーク運用業務に従事。データセンターインフラの設計、構築等の業務を行う。

2006年 テオーリアコミュニケーションズ株式会社入社。システムインテグレーション全般を担当する。

2007年 JANOG運営委員として活動。


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