システム管理、有事に備えておこう目指せ! ネット時代の幸せな管理者(10)(2/2 ページ)

» 2008年09月11日 12時00分 公開
[仲西 亮子,@IT]
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計画を立てるときのポイント

 災害発生時から事業の復旧までの流れを図1にまとめました。具体的にBCPとはこの中で「BCP発動」から「BCP解除」までを範囲としますが、その前後の初期対応や全面復旧もBCPには盛り込みます。BCPの大きな項目は3つです。BCP検討の基本的なシナリオは下記のようになります。検討の際に参考にしてください。

ALT 図1 災害発生から事業の復旧までの流れ

BCP発動フェイズで考えるべきこと

初動対応

 避難や消火活動、救命活動など、災害発生時にすぐに対応すべき行動のこと。災害の度合いによりBCPの発動が判断される。重要資産の安全な場所への運び出しなどは、ここで行われる行動となる。

事前に準備/検討しておく事項

  • 避難マニュアル
  • 緊急時持ち出しリスト
  • 連絡網

BCP発動

 BCPの発動を誰が行うか、発動の基準は何かを定めておく。BCPはBCM(Business Continuity Management)統括責任者を事前に決定し、災害時、BCP発動基準に達した場合は、BCM統括責任者がBCP発動の決定を行う。

 BCP発動基準に災害が達していない場合も、現場責任者などがBCM統括責任者へ被害状況を報告したうえで、BCP発動を促すことが可能である。

事前に準備/検討しておく事項

  • BCP発動基準
  • BCP発動権限者の順位
  • BCP発動時の体制
  • BCP発動中の情報伝達フロー

初期対応

 BCP発動後、ビジネスを再開するまでの手順、行動のこと。災害発生から24時間以内に着手できるように準備しておく。また最重要業務の継続や早期回復のために、緊急事態時の体制に切り替え、ビジネスを早期に再開させるまでを検討する。

 このフェイズでは、正確な情報と状況を把握するため、日ごろからの準備に最も時間を費やしておく必要がある。

 被災の状況を調査し、ビジネスが再開可能かを判断する。また顧客への説明などもこのフェイズで行う行動となる。

事前に準備/検討しておく事項

  • 緊急対策本部設置場所の順位
  • 従業員の安否確認マニュアル
  • BCP対策チェックシート
  • 顧客対応リスト

BCP発動中に重要なこととは?

ビジネス再開フェイズ

 BCP発動後、初期対応での情報収集の結果により、緊急対策本部がその状況を判断し、ビジネスを再開するまでの行動のこと。このときの優先順位は前述の企業の最重要業務から再開する。

事前に準備/検討しておく事項

  • ビジネス再開の優先順位
  • 最重要業務を行うに当たり必要な設備/物資の整理

ビジネス回復フェイズ

 前述の「ビジネス再開フェイズ」に続き、可能な範囲でほかの業務を再開する行動のこと。このときに再開する業務は、その状況や環境が許容する範囲で行う。

事前に準備/検討しておく事項

  • 最重要業務以外の業務における重要性の順位とその業務を行うに当たり必要な設備/物資の整理

復旧準備

 被災から環境や社会インフラ(電気/ガス/水道/流通/通信/交通機関など)の復旧の目途がつくとともに、ビジネスの再開準備を行う。情報収集を的確に行い、不足している物資などがあれば調達を行い、全面復旧フェイズに備える。

全面復旧フェイズでするべきこととは?

 災害発生前の状態に体制、設備を戻し、ビジネス活動を全面復旧させるまでの行動のこと。

 全面復旧を行う際に、社内インフラの確認などを行う必要があり、この確認項目は事前に準備しておく必要があります。

事前に準備/検討しておく事項

  • ビジネス全面再開の確認事項/チェックリストなど

BCPの見直しと訓練

 BCP発動後に限らず、通常時でも災害を想定した訓練や内容の見直し、ビジネス展開の変更に伴うBCPそのものの修正が必須です。

 またBCP発動後は行った各担当者の対応について記録を残しておくことも重要です。この対応記録を基に改善すべきBCPの事項について検討し、随時見直しを行い、必要があれば定期的な訓練の計画を立てます。修正事項については、関係する従業員全員への周知を心掛ける心がけてください。

 万が一の際には、焦らず事業の継続を行えるよう、日ごろから準備をしておくことが必要です。ここまでのことが、皆さんの会社のBCP草案のお役に立てればと思います。

著者紹介

▼著者名 川村 聖一

2001年 日本電気株式会社入社。キャリア営業、法人顧客SEに従事。

2004年 同社ISP部門へ異動。ISPネットワーク設計・構築、新技術導入、ISMS取得に従事。

2006年 NECビッグローブ株式会社へ出向。法人向けアウトソースサービスのコンサルティング・設計・運用を担当。Internet Weekプログラム委員。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 仲西 亮子

2000年 三井情報開発株式会社(現:三井情報株式会社)入社。

2000年 外資系ISPの技術部へ出向、IPアドレス管理やドメイン名管理業務に従事の後、同社iDCのバックボーン運用業務従事。

2002年 三井情報開発株式会社でiDC事業開始と共に出向解除。同社でASの管理・運用業務に従事。

2005年 同社のiDC事業部がMKIネットワーク・ソリューション株式会社として子会社化。これに伴い、MKIネットワーク・ソリューションズ株式会社へ出向、現在に至る。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 山崎 佑司

1999年 ソニーシステムデザイン株式会社(現:ソニーグローバルソリューションズ株式会社)入社。ソニー本社をはじめとした、大規模エンタープライズネットワークの設計、構築、運用を担当。

2001年 ソニーグループのショールームや、ソニーグループが主催する各種イベントにおけるネットワークシステムの企画、設計、構築、運営を手掛ける。

2003年 ソニーグループiDCのネットワーク運用業務に従事。データセンターインフラの設計、構築等の業務を行う。

2006年 テオーリアコミュニケーションズ株式会社入社。システムインテグレーション全般を担当する。

2007年 JANOG運営委員として活動。


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