インドオフショア開発のコストはいくら?インドオフショアの裏話(1)(2/3 ページ)

» 2008年09月18日 12時00分 公開
[向井永浩,ソフトブリッジソリューションズジャパン]

20人月以下の小規模プロジェクトはコストメリットが出ない

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 以上の状況を踏まえると、多少のオーバーヘッドが生じてくるため、単価が日本市場と比べて安いとはいえ、一般的に考えて20人月以下の小規模プロジェクトでは、正直、コストメリットが出ないと考えた方がよいでしょう。

 また、今後品質についても述べたいと思いますが、オフショアを開始する際、オフショア開始当初から“コストダウンありき”で進めるよりは、まず、作業範囲を限定して開発手法の取り決めなどを行い、“品質ありき”で進める方がいいと思います。

 そして、だんだんと体制を拡張するなどコスト削減につなげ、最終的にはオフショア対象作業を広げる、蓄積された業務知識・ノウハウをベースに安定したオフショアチームを確立することが、成功の秘訣(ひけつ)ではないかと筆者は考えます。

 作業範囲を限定すると述べましたが、具体的には上図の知識・ノウハウ共有蓄積時においては、オフショア側の作業は製造部分(プログラミング⇒単体テスト)にのみに作業範囲を絞って実施するのもよいでしょう。

 そして、ODC体制拡張期において作業範囲を製造部分(プログラミング⇒単体テスト)から、さらに詳細設計から製造部分(詳細設計⇒プログラミング⇒単体テスト⇒結合テスト)と作業範囲を広げます。

 そして、最終的には基本設計も含め、すべてオフショア側で実施します(基本設計⇒詳細設計⇒プログラミング⇒単体テスト⇒結合テスト⇒システムテスト)。

 このように、段階的によりオフショア側に展開することでリスクを抑え、徐々にコストを抑えていくことができます(上図の?線)。

 逆に、オフショア活用スタート地点からフルターンキーで実施すると、スタート地点では単価レベルでは安価になったように思われます。しかし、リスクが後ほど問題に変わり、最悪のケースとしては、散々もめた揚げ句、火消し役としてオフショア側に駐在員を送り込む必要性などが発生し、コストが青天井に膨らみ失敗するケースも考えられます(上図の点線)。

 また、ある程度長期的かつ定期的に追加開発などが見込まれるプロジェクトを、オフショア開発プロジェクトに選定することも大事な要素ではないかと思います。なぜなら、リスクを抑えた段階的なオフショア展開ができるからです。

 オフショア側にも徐々に業務知識・ノウハウが蓄積され、結果としてトータルコストダウンにつながります。オフショア側からしても、受注者の心理としても、長期的な仕事が見込まれるので、お互い良い関係が構築しやすいです。

 これだけを見ると、納期が差し迫っているのに、オフショア開発など面倒だと感じる読者も多いと感じますが、すべての企業で当初から手軽に実施でき、コストダウンが目に見えて表れるようであれば、国際競争の原理で国内エンジニアは職を失っているか、給与水準が下がっているかもしれません。

 また、国内エンジニア不足が進んでいる日本で、面倒だからという理由は通じなくなるときが近づいているのではないかとも感じます。また、面倒になる理由は、設計書があいまいなど、発注側の日本に起因することが多いのも確かです。

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