本連載では、あるコンサルタント企業を舞台にして、企業活動とは切っても切れない“コンプライアンス”に関するトピックを、小説の随所にちりばめて解説していく。
神崎 「西山、ここ、ここ!」
西山 「おお、神崎、遅くなってすまん」
神崎亮太は行きつけの居酒屋の奥まったコーナーから、同期で施設管理部シニアスタッフの西山新吾を呼んだ。
神崎 「いや、俺もついさっき来たところなんだ。まずは、駆けつけ一杯といこうか」
神崎と西山は、同期入社ということもあり気が合う仲間でもあり、よくこの居酒屋で一緒に飲んでいた。
西山 「神崎、最近はどんな感じだ?」
神崎 「ああ。いまはラーメンのチェーン店のK社に給与システムを納めるプロジェクトで、相変わらず兵隊として大塚マネージャにこき使われてるよ」
西山 「ああ、K社ね。そのプロジェクトも大変そうじゃないか」
神崎 「ああ。それより、お前は最近どうなんだよ。何だか、ずいぶんと忙しそうじゃないか」
西山 「そうなんだ。3週間後に東京国際フォーラムで開かれる転職フェアがあるだろう?」
神崎 「ああ、知ってる。わが社も出展するんだってな」
西山 「そう。それで、人事部採用課とコンサルティング部門の製造業グループとウチの総務部がプロジェクトチームを組んで、中途採用20人獲得をミッションにして活動中というわけだ。で、俺は、施設管理部長のご指名でそのプロジェクトメンバーになって、会場設営の部分を担当してるんだ」
神崎 「なるほどね。それじゃ、これからますます忙しくなるな。でも、会場設営といえば、内装工事やデザインが絡んでくるから、お前の得意分野じゃないか。よかったじゃん、お前のキャリアパスにとっては有利だろう」
西山 「ああ、確かにな。今回の転職フェアプロジェクトは、確かに大きなチャンスなんだ」
神崎 「まぁ、頑張れよ。お前ならできるって。ところで、デザイン業者はどこを使うつもりなんだ? もしかして……」
西山 「そう、フェニックス社に依頼するつもりだ」
神崎 「そうか。それはいい。富岡社長も元気かな。あれからもう1年もたつのかぁ。早いもんだなぁ」
西山 「そうだなぁ。去年の社内のリモデリングで、お前んとこのサービス業グループの会議室のデザインで、お前、富岡社長に食ってかかったもんな」
神崎 「食ってかかったんじゃなく、あのときは、富岡社長の説明が訳分からなくて、もっときちんと説明しろ、っていっただけだよ」
西山 「いやいや、『そんなアンクリアなプレゼンじゃメイクセンスしない、もっとロジカルにいってくれ』なんて、外資系コンサルタント丸出しの英単語会話で食ってかかったじゃないか」
神崎 「若気の至りってやつだな。でも、リモデリングの後、富岡社長に誘われて何度か一緒に飲んだけど、気さくで面白いオヤジだよな」
西山 「富岡社長はいま、32か33のはずだぞ。オヤジ呼ばわりはかわいそうだろ!」
神崎 「今年の暮れにもリモデリングが予定されているみたいだけど、そのときもフェニックス社を使うつもりなのか?」
西山 「ああ、そのつもりだ。なかなかいい仕事をするからな」
神崎 「たしかに。ジョブのクオリティはハイグレードだよな」
西山 「また英単語会話かい!」
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