テキストマイニングは、アンケートのフリーコメントの分析にもよく用いられる。企業のブランドイメージ比較の分析を例にとってみよう。
自社の企業イメージや製品・サービスの評価が、ほかの競合と比較して、どのように評価されているのか、おそらく気になるところであろう。従来の選択肢で選ばせる形式では、実は1つ課題がある。それは、消費者の比較項目をあらかじめ選択肢として設定することが非常に難しいことである。
例えば3社の自動車メーカーのイメージを比較するケースを例に挙げよう。従来の代表的なものとしては、次のようなアンケート票を設計し、単純集計や多変量解析にかけるなどの手法が主流であった(表1)。
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表1 自動車メーカー各社のイメージを調査するためのアンケートの例 |
この設問で比較できる項目は、その設計者が想定した項目のみに限られる。つまりアンケート設計担当者が想定できなかった項目や、消費者がそのほかに製品・サービスに対して抱いている具体的な内容を把握することは不可能なのである。
そこで例えば、表2のようなアンケート票を設計してみると非常に興味深いことが分かる。これは6年ほど前に実施した自動車メーカーの企業イメージ比較のアンケート票(ただし、実際のものではない)である。
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表2 過去に実際にこのような自動車メーカーの企業イメージ比較のアンケートをおこなったことがある |
このアンケート結果から、テキストマイニング分析をしてみると以下のようになる(図2)。
この例では、多くのテキストマイニングソフトが実施している単語レベルでの分析ではなく、係り受けレベルの内容をコレスポンデンス分析という手法を用いて分析している。その結果、各社に関連性が強い表現や固有の表現が企業名の周辺に配置されるようになっている。
図の詳細を見てみると、ホンダには「若者に人気がある」や「エンジンが良い」などのフレーズが、トヨタには「高級感がある」や「信頼性がある」などのフレーズが集中している。またニッサンでは「ゴーンが頑張っている」などのフレーズが見受けられるのは非常に興味深い。このようにテキストマイニング分析によって、自社が他社と比較して、どのようにイメージされているかが浮かび上がってくる。
このように、テキストマイニング技術は、日々進化し、その用途も拡大している。技術的な進化も重要ではあるが、それよりも利用シーンに応じて、特化した使いやすいツールやWebサービスが増える傾向が見てとれる。今後もしばらくはこのような傾向が続くと思われる。
参考文献
@cosumeの裏で活躍するBI(ASCII.jp)
『日経情報ストラテジー』 2005年1月号(日経BP社)
『実践!!ネットリサーチ』(宣伝会議)
『顧客の声マネジメント――テキストマイニングの本音を「見る」』(オーム社)
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