そのコミュニケーションツール、必要か目指せ! ネット時代の幸せな管理者(13)(2/2 ページ)

» 2009年03月19日 12時00分 公開
[川村 聖一,@IT]
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調整メールの削減、Web化のススメ

 次に、一見便利に見えるようなメールを検討しましょう。本連載の読者は、きっと1日に何十、何百、場合によっては何千ものメールを受信していることでしょう。

 このメール、実は大変効率が悪いということに、多くの人が気付いていません。

 メールを読むだけで、1日のどれほどの時間をメールの処理に使っていることでしょうか。社内あてのメールのためにどれだけ時間を使っているかを計算するときっと驚かれることでしょう。自分がほとんど関係のない業務のメーリングリスト、取りあえず入っているCc、もしかしてメールで業務の進ちょくを管理していたりしませんか。

 例えば、システム面での依頼などをWebベースのシステムに変更してみてはいかがでしょうか。メールだと、以下のような流れを想定します。

  1. 新サーバを構築したいです、これが仕様書です。なるはやでよろしくお願いします。
  2. 承りました。ちなみに、構築予定は3週間後になります。
  3. もう少し早くなりませんでしょうか。リリースが早まったため、1週間前倒しでの検討をお願います。
  4. 承知しました。しかし別件を遅らせる調整が必要です。少々お待ちください。
  5. [別件]本件の構築ですが、2日ほど後ろ出ししてしまっても問題ないでしょうか。
  6. [別件]問題ありません。了解しました。
  7. 調整できました。では2週間後にシステム準備が整います。

 この一連の連絡のやりとりがWebベースになるだけで、担当者のみに、必要なメールだけが飛び、かつ履歴は一括Webベースで管理できます。Webベースとひと言でいっても、さまざまな実現方法があります。各業務に特化した申請システムがあればベストですが(その使い分けはどうするか、などはここでは議論しませんが)、Yahoo! グループや、そのほかのSNSなどスレッド管理が可能でメールなどとの連係も可能なものを利用することが近い効果を得ることができます。トラブルチケット管理などで利用される進ちょく管理機能を備えたマネジメントシステムであれば、業務の種類によってはより高い効果を得られることでしょう。何度もいいますが、これもインターネットサービスではなく自社内でホスティングできるものが一番です。つまり、ステータスを確認したいと思う人が必要な情報をいつでも入手でき、余計な情報が余計な人に飛ぶことはなくなります。

 日本では、メールにもマナーがあります。

〇〇と申します。お世話になります。

△△の件についてですが……

現状は××となっています。

以上お願いしたく存じます。

何とぞご検討のほどよろしくお願いします。

 このようなフォーマットを、いくつも作成するわけです。これをテンプレート化していても、多少の追加などが発生します。

 Web上に必要な情報を入力するだけで必要な調整が行われる。これだけでどれほどの担当者の時間と余計なメールのやりとりを減らせるかは、想像していただくだけでよく分かると思います。また、メールや添付ファイルなどにはミスは付きものです。しかもメールにはエラーチェックする仕組みや、必要な情報が抜けていることを確認する技術はありません。Webであれば、フォーム入力内容をチェックする簡単な機能を追加するだけで、漏れ・抜け・ミスを極端に減らすこともできます。

ファイルサーバの欠点とメリット

 ファイルサーバを、社内で重宝していますか? ファイルサーバも、毎回使っているディレクトリ(フォルダ)であれば情報を探すにもさほど苦労しないことでしょう。しかし情報があふれ、さまざまな部署が勝手にサーバやフォルダを公開しているようでは、ファイルサーバ内の情報検索(検索できるようならまだいい方です)や、「どこにあったっけ……」といろいろな人に聞いて回ったり、メールで確かめる始末になり、情報の在りかを探すのにかなりの時間が費やされているのではないでしょうか。

 自社の業務に合うWeb管理システム、例えばWikiなどを利用すると大変便利です。Wikiの優れていることの1つに検索性が挙げられます。

 ファイルサーバはファイルをためている人がほとんどで、ファイルに属性を書き込んだり、説明をファイルプロパティで付け加えたりする人はあまりいないようです。検索システムを別途用意しない限り、検索のスピードもあまり良くなく、ほとんどの場合はファイル名で検索するしかすべがありません。

 Wikiでは、ファイルを置いて、それに説明を付けることも簡単にできます。さらに補足説明を自由に書くこともできたり、ファイルに関係なくリンクをまとめることもできたり、さまざまな利用ができます。Wikiは、ポータル機能とファイルサーバ機能を統合させたような使い方で最も力を発揮します。社内向けWebサイトを作るために外部発注をしているような部署であれば、ぜひ、Wikiを導入しましょう。その分予算をぐっと削減できます。

 とはいえ、何が何でもすべてをWikiにしてファイルサーバは必要ないということではないでしょう。整理されたファイルの置き場として使う場合はWikiが良いと思いますが、雑多な置き場としてはファイルサーバの方が適しているからです。複数人による管理表の更新なども、ファイルサーバの方が良いことが多いかと思います。

コミュニケーションツールを考え直す

 システム管理現場で利用するツールは、営業部門や経理部門などが利用するツールとは要求事項が異なることが多いはずです。残念ながら、全社システムの要件は営業部門や経理部門などの利用を想定していることが多いために、システム管理業務に適さないことが多いのです。

 最後に、ぜひ一度、現在利用しているコミュニケーションツールが、その業務に最善なのかをいま一度問い直してみませんか。この不景気のうちに、ちょっとした業務の改善のネタをシステム管理の現場でも求められているのですから。

著者紹介

▼著者名 川村 聖一

2001年 日本電気株式会社入社。キャリア営業、法人顧客SEに従事。

2004年 同社ISP部門へ異動。ISPネットワーク設計・構築、新技術導入、ISMS取得に従事。

2006年 NECビッグローブ株式会社へ出向。法人向けアウトソースサービスのコンサルティング・設計・運用を担当。Internet Weekプログラム委員。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 仲西 亮子

2000年 三井情報開発株式会社(現:三井情報株式会社)入社。

2000年 外資系ISPの技術部へ出向、IPアドレス管理やドメイン名管理業務に従事の後、同社iDCのバックボーン運用業務従事。

2002年 三井情報開発株式会社でiDC事業開始と共に出向解除。同社でASの管理・運用業務に従事。

2005年 同社のiDC事業部がMKIネットワーク・ソリューション株式会社として子会社化。これに伴い、MKIネットワーク・ソリューションズ株式会社へ出向、現在に至る。

2007年 JANOG運営委員として活動。

▼著者名 山崎 佑司

1999年 ソニーシステムデザイン株式会社(現:ソニーグローバルソリューションズ株式会社)入社。ソニー本社をはじめとした、大規模エンタープライズネットワークの設計、構築、運用を担当。

2001年 ソニーグループのショールームや、ソニーグループが主催する各種イベントにおけるネットワークシステムの企画、設計、構築、運営を手掛ける。

2003年 ソニーグループiDCのネットワーク運用業務に従事。データセンターインフラの設計、構築等の業務を行う。

2006年 テオーリアコミュニケーションズ株式会社入社。システムインテグレーション全般を担当する。

2007年 JANOG運営委員として活動。


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