IT企業はITSSで人材育成できるのか間違いだらけのIT人材育成(1)(3/3 ページ)

» 2010年02月04日 12時00分 公開
[井上実,@IT]
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シンプルなIT人材体系が解決への道

 では、IT人材体系をもう少しシンプル考えてみたらどうだろうか。

 ITシステムに限らず、企業内の活動は、PDCA(Plan・Do・Check・Act)のマネジメントサイクルを回すことにより行われる。

 ITシステムの場合には、Planに当たるのが企画、Doに当たるのが設計・開発・導入および運用、Checkが評価であり、Actが企画や設計・開発・導入へのフィードバックと当てはめることができる。

 これに合わせた人材を育成することを考えたらどうか。

 主に企画段階を担当する人材、設計・開発・導入の段階を担当する人材、運用・評価を担当する人材に大きく3分類する。Doを担当する人材は1つでもよさそうだが、内部統制上、設計・開発・導入担当者と運用担当者は分ける必要がある。

 Checkを担当する人材を、運用を行う人材と分けることも考えられるが、評価だけを担当する人材というのは現実感がない。また、企画をした人がそのまま設計・開発・導入に携わることも考えられるが、人材像としては分離しておいた方が、適用範囲が広がると思われる。

 また、アプリケーションを担当する人材と、インフラを担当する人材は質的な相違があるため、各段階でこの2つに分けると、6つの人材像ができる。これを職種体系とすることにより、実際に仕事の分担とほぼ一致する。

 レベルは、プロジェクトの複雑性やサイズではなく、システムの対象とする範囲で考える。業務の中の1つの処理(例えば受注処理)から、業務全体(例えば販売業務)へ、さらに事業全体や全社の業務(例えば事業部システム)に範囲が広がるごとにレベルが上がる。

 複雑性の高いプロジェクトや規模の大きなプロジェクトを中小企業が受注することは難しいが、担当範囲を広げることは顧客規模によっては可能である。大企業の全社システムを受託することはできなくても、中小企業の全社システムを受託することはできるからだ。

ALT (図表9)IT人材キューブ

 これらをまとめると、図表9のようなキューブで表すことができる。

 このようなシンプルな人材体系をベースにすることで、大企業だけではなく、中小企業にも適用可能なIT人材育成体系を容易に構築することが可能になり、IT人材全体のレベルアップを図ることができる。

【参考文献】
▼『ITスキル調査結果(2003年〜2008年)』(ITスキル研究フォーラム:iSRF、日経BP社)
▼『IT人材白書2009』(IPA IT人材育成本部=編、オーム社)
▼『ITスキル標準V3.2008.2部キャリア編』(IPA IT人材育成本部 ITスキル標準センター=著)

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