
AIを活用した文字認識(AI OCR)は、請求書や契約書といった紙帳票を高精度に読み取り、デジタルデータへ変換する技術としていま高く注目されています。ディープラーニングによる認識エンジンにより非定型帳票や手書き文字の抽出までも可能となり、入力ミスや作業時間の削減、データ活用の高度化が実現します。
この記事では文字認識AI(AI OCR)の仕組みと従来OCRとの違い、導入メリットや具体的な活用シーン、選定のポイントと進め方、主な人気製品を詳しく解説します。
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目次
文字認識AI(AI OCR)が注目される背景
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)や業務のペーパーレス化が加速する中、請求書や申込書など紙ベースでの業務を効率化する取り組みが求められています。特に帳票のデジタル化は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
2024年1月に電子帳簿保存法における猶予措置が終了し、電子取引データの保存が原則義務化されました。これにより、電子化された帳票の正確な入力・保存・検索性が企業に強く求められるようになっています。
こうした背景から、AI技術を活用したOCR(AI OCR)による文字認識とデータ化のニーズも急速に高まっています。
従来のOCR(Optical Character Recognition)は、印刷された定型文書の読み取りを前提としており、手書き文字や複雑なレイアウトの書類には対応が困難でした。そのため誤認識の修正や確認作業が手作業に依存するケースが多く、業務効率化の障壁となっていました。
一方、AI OCRはディープラーニングをはじめとする機械学習技術を活用し、大量のデータから文字やレイアウトのパターンを自動的に学習します。その結果、手書き文字や非定型帳票、さらには写真からの文字認識など、従来OCRでは対応が難しかった領域にも対応可能となっています。
例えば、申込書に手書きで記入された内容を高精度でデジタル化し、データベースと連携して自動登録するなど、業務自動化の中心技術として活用されつつあります。
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AI OCRとは? 従来のOCRとの違い
AI OCRは「人工知能(Artificial Intelligence)」と「光学文字認識(OCR)」を組み合わせた技術です。大量の画像データから文字パターンを学習し、従来型のOCRで難しかった複雑なレイアウトや自由記述欄なども高い精度で読み取ります。
例えば、従来型OCRはあらかじめ設定されたボックス枠などに沿ったフォーマットでしか正確に読み取れないといった、ある程度の制限・限界がありました。AI OCRは複数行の自由記述欄や漢字・カタカナ・数字が混在する項目でも柔軟に認識が可能です。
さらに、AI OCRには以下の特長があります。
- より高精度な文字認識
- 非定型帳票への対応
- 学習機能による精度向上
- 連携・管理機能
より高精度な文字認識
生成AIと同じディープラーニングを用いた認識エンジンにより、対象物に書かれている文字列を高い精度で識別します。これは、ある程度の手書き文字の認識までも含みます。Smart OCRなどの製品は独自の画像補正技術を組み合わせ、手書き文字やにじみ、傾きなどのノイズを自動補正した上で読み取り、より高精度にデータ化する能力を備えています。
非定型帳票への対応
AI OCRは定められたフォーマット以外でも認識できるように、AIが帳票のレイアウトを自動的に分析してデータ抽出を行うことも可能です。これにより請求書や契約書など都度書式が異なる書類でも迅速にデータ化できます。
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学習機能による精度向上
入力結果をAIが継続的に学習することで、使うほどに精度が向上します。修正されたデータを反映して次回以降の誤認識を減らす仕組みを備えるツールも多くあります。
連携・管理機能
AI OCRはAPIやRPAツールと連携しやすいデータ構造・設計であることもポイントです。読み取ったデータをERP(基幹システム)や経費精算、請求書管理システムなど他システムと自然に連携して効率を高める、クラウド上で法令(電子帳簿保存法など)に沿って的確に帳票管理を行うといった多くの企業が望むニーズにも合致できます。
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AI OCR(文字認識AI)の導入メリット
AI OCRを導入することで企業にもたらされる効果は多岐にわたります。主なメリットは以下の通りです。
- 入力作業時間を削減できる
- 入力ミス・ヒューマンエラーが減る
- 業務効率化とコスト削減を実現する
- データ活用と分析基盤を強化できる
- 法令・監査対応の対応力を強化できる
- 柔軟な働き方への体制を強化できる
入力作業時間の大幅削減
手作業で行っていた帳票の転記や確認作業をAI OCRが担うことで、入力時間を大幅に削減できます。AI OCRを導入することで手入力の工数を減らし、入力確認の負担を削減できることが大きく期待されます。製品によっては非定型帳票にも対応するため、フォームごとにテンプレートを作成する手間も不要となります。
入力ミス・ヒューマンエラーの軽減
精度の高い文字認識によって誤入力や転記ミスが減少します。深層学習で学習を重ねたAI OCRは類似文字の識別や誤認識時の推定修正のような作業も得意分野であり、最終的な人による確認作業を強力に支援します。
業務効率化とコスト削減
入力作業が効率化されることで、人的コスト、人員不足の課題、従業員をより付加価値の高い業務へ配置するといった人員管理の効率化が期待できます。併せて、紙書類の保管コストや郵送コストの削減、ペーパーレス化による環境負荷軽減も期待できます。
データ活用と分析基盤の強化
紙帳票がデジタルデータとして蓄積されることで、データ分析やレポート作成が容易になります。
また、会社・組織としてデータ活用が進み、組織全体で情報共有しやすくなるとことも間接的な大きな効果として見込まれます。
法令・監査対応の効率化
電子帳簿保存法やインボイス制度などへの対応に向け、紙帳票の電子保存化、そしてデータとしての正確かつ確実な管理体制が企業に求められています。
AI OCRを活用した管理体制を確保することで、作業の標準化、データドリブンな意思決定を支援するほか、法令・基準を順守する体制もより強化できます。
テレワーク・リモートワーク対応
クラウド型のツールは、適当なデバイスとネット環境があれば、場所を問わず帳票処理が可能となる利便性があります。在宅勤務や出張先などでも請求書処理や契約書のチェックがスムーズに行えます。
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AI OCR(文字認識AI)の具体的な業務活用シーン
AI OCRはさまざまな業種・業務で活用されています。以下に代表的な例を紹介します。
経理・会計業務
請求書や領収書、納品書などの経費精算書類はフォーマットが複数存在し、入力作業が煩雑になりがちです。AI OCRは非定型フォーマットを自動分析して必要項目を抽出するため、多くの企業で経費精算の効率化に利用されています。
契約書・申込書のデジタル化
手書きの契約書や口座振替依頼書など、自由記述の多い書類もAI OCRでデータ化できます。自由記述欄や複数行書き込みを含む手書き文字でも高精度に認識できることから、重要な契約書・申込書を用いる業務の多い金融機関や保険会社のような業種にも採用が進んでいます。
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人事・総務部門
履歴書やアンケート用紙、年末調整書類など、多様な書式の文書を一括でデータ化するニーズが特に高まっています。手入力を極力減らすことで人事部門の作業負担を軽減できます。
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製造・建設分野
図面や検査表のような専門的な帳票にもAI OCRが活用され、成果を高めています。熟練者不足の現場で品質管理に貢献します。
医療・物流・小売
医療機関での診断書や検査記録、物流業界での送り状、荷札の自動読み取り、小売業界でのバーコードや棚札の識別など、複雑で多様な帳票のある業種、現場でもAI OCRのニーズが高まっています。作業の自動化やデータのリアルタイム共有といった「デジタルデータ」を軸に効率よく管理・判断する体制に向けた基礎となります。
AI OCR(文字認識AI)製品の選定ポイント
AI OCR導入を検討する際のチェックポイントは以下の通りです。
- 認識精度・対応範囲
- 運用のしやすさ
- システム連携・拡張性
- 学習機能とカスタマイズ性
- セキュリティと運用形態
- コストとサポート体制
認識精度・対応範囲
機能の基礎として、手書き文字や活字、カタカナ・英数字などの混在文字をどの程度、どのような方法で認識できるか、高精度化を支援する独自機能、非定型帳票への対応範囲などを確認します。
例えば、画像補正機能や傾き補正機能を備え、FAX受信画像のズレやノイズを除去して認識率を高めるといった機能をウリにする製品もあります。
運用のしやすさ
管理画面やユーザーインターフェースが直感的で、専門知識がなくても設定・運用できるかを確認します。文字認識精度やデータ化機能に付随し、帳票のフォーム設計もノーコードでできる製品、マスター参照や自動計算機能のような付随機能も含まれている製品なども「まとめて1つで」の観点で利便性が高く、支持されることがあります。
システム連携・拡張性
OCRで読み取ったデータの「連携性」、具体的にはAPIの利用やCSV出力が可能かどうかを確認しましょう。
契約書や発注書などはERP(基幹システム)、受発注管理システム、在庫管理システム、CRM(顧客関係管理システム)、SFA(営業支援システム)など、営業関連・顧客・名刺データならばCRM、SFA、名刺管理システム、MA(マーケティングオートメーション)ツールなど、請求書や領収書ならば請求書システム、会計システム、販売管理システム、経費精算システムなど、ほか全体的な業務シーンでは帳票システム、ワークフローシステム、勤怠管理、RPAツールなど、さまざまな連携先が考えられます。
学習機能とカスタマイズ性
自社特有の帳票や用語に対応するために、ユーザー辞書やテンプレート登録が可能か、修正したデータを学習して精度が向上する仕組みがあるかを確認します。例えば、AIによるテンプレート自動生成や管理機能を備える製品であれば、使うごとに継続的な精度向上が期待できます。
セキュリティと運用形態
機密性の高い書類を扱う場合はオンプレミス環境・自社管理下の環境に導入できるかどうか、クラウドならば暗号化やアクセス制限機能などの機能、データ送信の暗号化や国内データセンター利用など、セキュリティ対策が十分かを社内規定にも沿って確認しましょう。
コストとサポート体制
初期費用や月額料金、従量課金の有無、サポート内容を比較します。
クラウド型製品にはトライアル期間や無料プランを用意し「契約前に試用できる」ものも多くあります。このような無料版があればぜひ遠慮なく試用し、本導入前に実際の帳票でテストするなどして使用感を確かめることを強くおすすめします。
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