
「評価シートの集計に膨大な時間がかかる」「評価者によって基準がバラバラで、社員の納得を得にくい」──。このような人事評価に関する悩みは、多くの企業にとって共通の課題ではないでしょうか。Excelや紙媒体での評価管理は手軽な一方で、業務の非効率化や評価の形骸化を招きがちです。
こうした課題を解決する手段として、今あらためて注目されているのが「人事評価システム」です。人事評価やその関連業務をデジタル化し、データとして管理する体制を整えることで、評価業務を大幅に効率化できるだけでなく、データに基づいた客観的で公正な評価を実現し、従業員のエンゲージメント向上や戦略的な人材育成につなげられます。
本記事では、人事評価システムの基本機能から導入のメリット、失敗しないための選定ポイントまでを網羅的に解説。さらに、最新のおすすめ人事評価システム(全12製品/2025年11月時点)を厳選してご紹介します。この記事を読めば、自社に最適な人事評価システムを見つけ、戦略的な人事施策への第一歩を踏み出すことができるでしょう。
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目次
人事評価システムとは? 基本機能と導入が進む背景
まずは人事評価システムの基礎と基本的な役割、多くの企業で導入が進んでいる理由を復習しましょう。システムがどのような機能を持ち、なぜ現代の企業経営において不可欠なツールとなりつつあるのかを解説します。
人事評価システムの基本機能
人事評価システムは、目標設定から評価、フィードバック、人材情報の一元管理まで、人事評価プロセス全体を効率化・可視化するためのツールです。主要機能は以下の通りです。
- 目標管理(MBO・OKRなど):従業員一人ひとりの目標設定や、組織目標との紐づけ、進捗状況の管理を行う。
- 評価シートの作成・運用:評価項目や基準を柔軟に設定し、Web上で評価シートの配布、入力、提出、集計を完結させる。
- 評価ワークフロー設定:自己評価、上長評価、二次評価といった評価フローをシステム上で設定・自動化し、進捗管理を容易にする。
- フィードバックと支援:評価者と被評価者間の面談記録やフィードバック内容を記録・蓄積し、コミュニケーションの質を高める。
- 人材情報の一元管理・可視化:評価結果やスキル、経歴といった人材情報をデータベースに集約し、組織分析や人材配置の検討に活用する。
なぜ今、人事評価のシステム化が必要なのか
近年働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、企業が持続的に成長するためには「従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させる」ことが不可欠です。
従来の年功序列型の人事制度は変化の激しい時代に対応しきれなくなると言われます。そのため、多くの企業が成果や能力、データに基づく公正な評価制度の構築を急いでいるのです。しかし、Excelや紙のような確実性が乏しく手間もかかる運用、経験やカン、その場・その時対応でといった定性的な評価だけの運用では、評価プロセスの煩雑さ、そして評価基準の曖昧さといった課題がつきまといます。
人事評価システムはこうした課題を解決し、効率的で、公平で、戦略的な人事評価を実現するためにあります。評価業務の負担を軽減するだけでなく、評価データの蓄積・活用を通じて、客観的な根拠に基づいた人材育成や配置転換を可能にし、企業の競争力強化に直接貢献することも期待されます。
360度評価/目標管理制度(MBO)機能
「360度評価/360度フィードバック」と「目標管理制度(MBO/Management by Objectives)」は、人事評価システムの中で重要な役割を担います。360度フィードバックは、多角的な視点から従業員のパフォーマンスを評価することで公正な評価を実現します。一方、MBOは従業員と管理者が共同で目標を設定し、その達成度を評価することで、成果重視の評価を行います。
360度フィードバックでは同僚や部下、上司からの評価を収集し、総合的に判断します。このアプローチは、公正性と透明性を確保するために有効であり、従業員一人ひとりの強みや改善点を多角的に発見することなども可能です。評価が多方面から行われることで評価結果に対する納得感も高まり、従業員のモチベーション向上に寄与します。
一方のMBOは、四半期ごとに具体的な目標を設定し、その達成度に応じて評価を行う取り組みです。これにより目標達成に向けた従業員の行動が明確化され、管理者との連携強化が期待できます。MBOは、目標設定から進ちょく管理、評価まで一貫したプロセスによって、最終的な成果に対して適切な報酬やフィードバックが行える利点があります。
360度フィードバックとMBOの併用により、より包括的で公平な評価も可能となります。双方の機能を組み合わせることで従業員の多角的なパフォーマンス評価と具体的な成果に基づく評価のバランスが取れ、総合的な人材管理が実現できます。
Excel管理はもう限界? 人事評価のよくある課題とシステムによる解決策
この章では、多くの企業がExcelでの人事評価管理で直面する具体的な課題と、それらを人事評価システムがどのように解決するのかを解説します。自社の状況と照らし合わせながら、システム導入の必要性を確認してみましょう。
課題1:評価シートの配布・回収・集計に時間がかかりすぎる
評価時期になると、人事担当者は全従業員分の評価シートを作成・配布し、提出状況を管理し、回収後は膨大なデータを手作業で集計する必要があります。ファイルのバージョン管理が煩雑になったり、催促の連絡に追われたりするなど、人事担当者の業務負荷は計り知れません。
<システムによる解決策>
人事評価システムを導入すれば、評価シートの作成から配布、提出、集計まで、すべてがツール上で完結します。進捗状況などもダッシュボード機能で一目で把握でき、未提出者へのリマインドも自動化できるため、評価業務にかかる工数を劇的に削減できます。
課題2:評価者によって評価基準にバラつきが出てしまう
評価者研修を行うなどの対策を取っているにせよ、「評価が甘い上司」「厳しい上司」といった評価者ごとの基準のバラつき(甘辛調整)を完全になくすことが難しい課題です。こうしたバラつきは、従業員の不公平感やモチベーション低下の原因となります。
<システムによる解決策>
システムによっては、評価者ごとの評価傾向をデータで可視化して調整をサポートする「甘辛調整機能」を備えるものもあります。また、評価項目ごとに具体的な判断基準や過去の評価履歴を参照できるため、評価者は客観的な根拠に基づいて評価を下しやすくなります。
課題3:評価結果を人材育成や配置に活かせていない
Excelなどで独自管理される評価データは「単なる評価結果」としてファイルに保存されるだけで、「その後」の分析や活用が難しい状況になりがちです。過去の評価履歴を遡ったり、複数の従業員の能力を横断的に比較したりすることも難しいため、戦略的な人材育成や配置転換につなげられていないケースが多く見られます。
<システムによる解決策>
人事評価システムは、評価結果やスキル、経歴といった「正しく、最新の」人事・人材情報を一元的に蓄積し、適切に管理できます。例えば、従業員一人ひとりの強みや課題を可視化し、ハイパフォーマーの特性を分析したり、適切な研修プランを策定したりと、データに基づいた戦略的なタレントマネジメントを実現します。
人事評価システム導入で実現する6つのメリット
人事評価システムを導入することで、あなたの会社はどんなメリットが得られるのでしょう。業務効率化はもちろん、組織全体の成長につながる多様な効果は以下の通りです。
評価業務の大幅な効率化ができる
人事評価システムの最大のメリットは、評価プロセスの自動化による業務効率化です。評価シートの配布・回収・集計といった手作業がなくなり、人事担当者は評価制度の企画・改善や人材育成といった、より戦略的な業務に集中する時間を創出できます。
実務シーンでは、評価期間が数週間から数日へ短縮されるといった定量的な効果も期待できるでしょう。
客観的で納得感の高い評価が実現できる
システム上で評価基準や過去の評価履歴を明確に参照しながら評価を行えるため、評価者の主観や記憶に頼った評価を防ぎ、客観性を担保しやすくなります。評価プロセスが可視化されることで、従業員は「なぜこの評価になったのか」を理解しやすくなり、評価に対する納得感が高まります。
これは、エンゲージメントの向上や離職率の低下にも繋がる重要な要素です。
従業員のエンゲージメント向上が期待できる
公正な評価制度は、従業員のエンゲージメント(仕事への意欲や主体性)を高める上で不可欠です。自身の成果や成長が正当に評価されていると感じることで、従業員は仕事へのモチベーションを高め、自律的に目標達成へ向かうようになります。
また、システムを通じた定期的なフィードバックは、上司と部下のコミュニケーションを活性化させ、信頼関係の構築にも貢献します。
データに基づいた人材育成・人員配置ができる
システムに蓄積された評価データやスキル情報を分析することで、個々の従業員に適する育成プランを立案したり、部署やプロジェクトのニーズに合致した人材を抜擢したりすることが可能になります。
例えば、「リーダーシップ」の評価が高い従業員を次期管理職候補としてリストアップするなど、勘や経験だけに頼らない、データドリブンな人材活用が実現します。
評価制度の形骸化を防ぎ、社内に定着させられる
せっかく構築した評価制度も、運用が煩雑では次第使われなくなり形骸化してしまいます。誰でも直感的に使えるシステムを導入することで評価制度の運用がスムーズになり、社内に定着しやすくなります。
評価プロセスが日常業務の一部として組み込まれることで、評価制度本来の目的である「人材育成」と「組織力強化」が継続的に実現されます。
効果的なフィードバックで従業員の成長を促進できる
多くのシステムには、1on1ミーティングの記録を残せる機能や、目標の進捗をリアルタイムで共有できる機能が備わっています。これにより、期末の評価面談だけでなく、日常的なコミュニケーションを通じたタイムリーなフィードバックも可能になります。
具体的で的確なフィードバックは、従業員の気づきを促し、成長を力強くサポートします。
関連記事人事評価ワークフローの構築ガイド|Excel管理から脱却する5ステップ
失敗しない人事評価システムの選び方5つのポイント
この章では、数ある人事評価システムの中から自社に最適なものを選ぶための5つの重要なポイントを解説します。これらのポイントを確認し、多角的な視点から製品を比較検討しましょう。
ポイント1:自社の評価制度に対応しているか(MBO・OKR・360度評価など)
まず最も重要なのは、システムが自社で採用している、あるいは今後導入したい評価制度に対応しているかを確認することです。
例えば、目標管理制度(MBO)、OKR(Objectives and Key Results)、コンピテンシー評価、360度評価など、企業によって評価制度は様々です。柔軟に評価項目を設定できるか、独自の評価シートを再現できるかなど、カスタマイズ性も重要なチェックポイントです。
ポイント2:機能の範囲は十分か(評価特化型か、タレントマネジメント一体型か)
人事評価システムは、評価機能に特化したシンプルなタイプから、人材育成、スキル管理、人員配置シミュレーションといった幅広い機能を持つ「タレントマネジメント一体型」まで多岐にわたります。
まずは評価業務の効率化を最優先したいのか、将来的には人材データを活用した戦略人事まで見据えているのか、自社の目的を明確にし、必要な機能の範囲を見極めることが大切です。
ポイント3:管理者と従業員の双方にとって使いやすいか
システムは人事担当者や管理職だけでなく、一般の従業員も利用します。そのため、ITツールに不慣れな人でも直感的に操作できる/分かりやすいインターフェースかどうかは言わずもがな基本ですが。改めてとても重要です。
クラウド型の製品には、一定期間無料で使える無料版(無料トライアル/無料デモ)を用意する製品が意外と多くあります。ぜひ遠慮なく活用することをおすすめします。実際に現場のメンバー、上長、経営層、他部門のメンバーなど多くの人、さまざまな視点で操作してもらい、使い勝手や自社の業務とのフィット感を確認しましょう。
ポイント4:導入・運用時のサポート体制は手厚いか
システムの導入は、ゴールではなくスタートです。導入時の初期設定支援はもちろん、運用開始後に操作方法の疑問やトラブルが生じた際に、迅速かつ丁寧に対応してくれるサポート体制があるかは、システムを社内に定着させる上で欠かせない要素です。電話やメール、チャットなど、どのようなサポート窓口があるか、対応時間なども事前に確認しておきましょう。
ポイント5:料金体系は自社の規模や予算に合っているか
料金体系は、主に「月額利用料×ユーザー数」で決まる従量課金制が一般的ですが、初期費用やオプション料金も考慮する必要があります。自社の従業員数や利用したい機能の範囲を基に、複数のシステムで見積もりを取得し、コストパフォーマンスを比較検討しましょう。「最低利用人数」が設定されている場合もあるため、特に中小企業は注意が必要です。
2025年最新 おすすめの人事評価システム13選
この章では、現在市場で高く評価されているITセレクトおすすめの人事評価システムを参考としてご紹介します。360度評価に特化したツールから、総合的なタレントマネジメントを実現するシステムまで、各製品の特徴を比較し、自社の課題解決に最も貢献できるシステムを見つけましょう。(製品名 abcあいうえお順/2025年9月時点)
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