
「稟議書の承認待ちで、商談が進まない」「ハンコのためだけに出社するのは、もうやめたい」──。もし、こうした課題に1つでも心当たりがあるなら、その解決策は「ワークフローシステム」の導入かもしれません。
ワークフローシステムとは、稟議や経費精算といった社内のあらゆる申請・承認プロセスを電子化し、自動化するツールです。紙とハンコで行っていた一連の業務をクラウド上で完結させることで、意思決定のスピードを飛躍的に向上させ、テレワークをはじめとする多様な働き方を強力に後押しします。
本記事では、「どの製品を比較すれば良いか分からない」とお悩みの担当者様へ向けて、ワークフローシステムの基本機能から、具体的なメリット、失敗しないための選び方のポイント、そして【2026年度の導入・刷新に向けた】おすすめ製品(全20製品/2025年12月時点)までを徹底解説。経理や人事など部門別の活用事例も交え、貴社のDX推進と生産性向上を実現する最適な一手をご提案します。
機能で比較「ワークフローシステム」人気製品一覧
無料でIT製品選びをお手伝いします
目次
ワークフローシステムとは?
ワークフローシステムとは、企業内の各種申請と承認(意思決定)のプロセスを電子化し、効率的かつ透明性をもって管理するためのシステムです。
例えば「稟議書」「経費精算申請書」「休暇届」など、社内で発生するあらゆる書類の回覧・承認・決裁の流れを、あらかじめ設定したルール(承認ルート)に従って自動的に処理します。
従来の紙/アナログベースでの運用と比べ、申請者はスマートフォンやPCからいつでもどこでも申請でき、承認者は通知を受け取って速やかに決裁できるため、業務の停滞を解消します。この仕組みから「電子決裁システム」や「稟議システム」とも呼ばれています。
【2026年度向け】ワークフローシステム導入・刷新における「労働関連法」対応ガイド
ここでは、2025年度末から2026年度(2026年4月~2027年3月)にワークフローシステムを導入・刷新するシーンを想定し、検討・導入計画のポイントを確認します。
まず、ITシステムは導入後数年間にわたり使われることを前提に準備、設計する必要があります。これを踏まえると本期間(2026年度)は、「2025年秋に施行された改正法の定着期」であると同時に「2028年に予定される社会保険適用拡大への準備期」という重要な結節点にあります。将来の改修コストを抑制、あるいはあらかじめ準備しておくこともいくつか求められることから、以下の法的要件を想定し、選定計画を進めるとよいでしょう。
「改正育児・介護休業法」への対応
改正育児・介護休業法が2025年10月より順次施行。2026年度には本格運用のフェーズに入ります。ワークフローシステムにおいては、申請フローや入力項目の確認と修正、場合によっては抜本的な見直しが必要となる可能性があります。
改正の概要
- 子の看護等休暇の対象拡大
子の対象年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生修了」まで延長されます。また、取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖」や「入園式・卒園式等の行事参加」が追加され、名称も「子の看護等休暇」へ変更される見込みです。 - 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
残業免除を請求できる対象が「3歳に満たない子」から「小学校就学前の子」を養育する労働者へ拡大されます。 - 柔軟な働き方の実現措置
3歳から小学校就学前の子を育てる労働者に対し、事業主は「始業時刻変更」「テレワーク」「短時間勤務」などから2つ以上の選択肢を用意する必要があります。
ワークフローシステムにおける検討、対策ポイント
- 申請フォームの修正、改修
看護休暇の申請理由プルダウンやチェックボックスに「行事参加」「学級閉鎖」などの項目を追加する、などが考えられます。 - 対象年齢チェックロジックの変更
生年月日データと連携し、申請可否を判定するロジックを「小学校3年生修了(9歳に達する年度末)」まで引き上げる設定の修正が発生するでしょう。 - 制度選択履歴の管理
従業員が「柔軟な働き方」のどの制度を選択したかを申請・記録するフローを構築し、履歴として管理できる機能を実装するようにします。
子ども・子育て支援金制度への対応
子ども・子育て支援金制度として、2026年4月より公的医療保険(健康保険等)の保険料に上乗せして「支援金」が徴収されます。これは全世代型の社会保障改革の一環です。
ワークフローシステムにおける検討、対策ポイント
- 給与システム連携項目の追加
ワークフローシステムから給与計算システムへデータを渡している場合、従来の社会保険料とは別に「支援金」に関する項目や区分が必要になることが考えられます。連携定義の確認と、必要に応じて見直しを行いましょう。
雇用保険法の適用拡大への準備
雇用保険法の適用拡大が2028年10月に予定されています。2025年12月時点ではまだ先のことですが、システムの寿命を考慮すると、その対策はそもそも念頭に置いておくことが勧められます。検討・導入時点で「対応可能な仕様であるかどうかを確認する」などから準備を進めるようにしましょう。
雇用保険の適用要件である週所定労働時間が、現行の20時間以上から「10時間以上」へ引き下げられます。これにより、短時間パートタイム従業員、アルバイトなどの多くが新たに加入対象となります。
ワークフローシステムにおける対策ポイント
- 加入判定ロジックの柔軟性確保
入社手続きや契約変更のワークフローにおいて、自動的に雇用保険加入手続きへ分岐する判定値を、プログラム改修などの大掛かりな変更なしで対応できるようなパラメータ/許容設定にしておく(例:「20」から「10」へ設定変更のみで対応できる)、といった対策が有効です。 - 対象者区分の見直し
パートタイマーやアルバイトの区分においても、雇用保険番号の入力欄を必須化する等の準備が必要です。
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
企業がフリーランス(個人事業主)へ業務委託する際の適正化を目的とした法令です。フリーランス新法は2024年11月に施行済みですが、2026年度に導入する新たなワークフローシステムでは標準機能として対応、定着していることが求められます。
ワークフローシステムにおける対策ポイント
- 取引条件明示のデジタル化・自動化
発注申請の承認完了時に、法令で定められた項目(業務内容、報酬額、支払期日等)が記載された通知メールやPDFが、自動的に受託者(フリーランス)へ送付される仕組みを適切に構築します。 - 支払期日管理のアラート
「成果物受領日から60日以内」等の法定支払期限を順守するため、検収完了日から起算して支払期日が迫った場合に経理担当者へアラートを出す、といった機能の搭載、設計が備わっているか、適切かどうかを確認します。
ワークフローシステムにおける対策ポイントまとめ
| 分野 | 関連法・制度 | 想定しておくべき機能、主な改善/対策ポイント |
|---|---|---|
| 休暇管理 | 改正育児・介護休業法 | 看護休暇理由の追加(行事等)、対象年齢制限(小3)のパラメータ化 |
| 働き方 | 改正育児・介護休業法 | 育児中の従業員向け「柔軟な働き方選択」申請フローの実装 |
| 入社・契約 | 改正雇用保険法 | 週所定労働時間10時間以上での加入判定ロジック(2028年対応用) |
| 外部発注 | フリーランス新法 | 発注時の法定記載事項の自動通知機能、60日支払ルールのシステム制御 |
【部門別】ワークフローシステムの具体的な活用例
ワークフローシステムの効果は、全社的な業務効率化に留まりません。実は、経理、人事、営業といった各部門が抱える特有の課題をピンポイントで解決する力を持っています。ここでは、特に導入メリットの大きい4部門を例に、「日々のあの面倒な作業が、どのように変わるのか」を具体的に見ていきましょう。
経理部門のケース:「経費精算や支払依頼の迅速化とミス削減」
経理部門では、月末月初の繁忙期に交通費や出張費などの経費精算、取引先への支払依頼といった申請が集中しがちです。紙の伝票では、入力ミスや勘定科目の間違い、領収書の糊付けといった手作業に多くの時間が割かれていました。
After: ワークフローシステムを導入すれば、申請者はシステム上のフォーマットに入力するだけで、承認・決裁されたデータは自動で会計システムに連携可能です。これにより、手入力によるミスや二重登録を防ぎ、月次決算の早期化にも貢献。まさにDX推進の要となります。
人事・総務部門のケース:「入退社手続きや備品購入のペーパーレス化」
人事・総務部門は、従業員の入退社手続き、住所変更届、慶弔見舞金の申請、オフィス備品の発注など、多種多様な書類を扱います。これらの多くは個人情報を含むため、書類の保管や管理にも細心の注意が必要です。
After: ワークフローシステムは、これらの申請業務を電子化することでペーパーレス化を一気に推進します。過去の申請データも容易に検索でき、「あの書類はどこに?」と探す手間はもうありません。物理的な保管スペースの削減はもちろん、情報セキュリティの強化にもつながります。
情報システム部門のケース:「IT機器の利用申請やID管理の効率化」
情報システム部門では、新規PCの利用申請やソフトウェアのライセンス管理、各種システムのアカウント発行・停止依頼など、IT資産に関する管理業務が数多く発生します。これらの申請がメールや口頭で行われると、対応漏れや管理台帳への記入漏れといったリスクが高まります。
After: ワークフローシステムで申請ルートを一本化すれば、誰が・いつ・何を申請したかのログ(証跡)が確実に記録され、ITガバナンスの強化に直結します。機器の棚卸しやライセンス管理の精度も向上し、情報システム部門の担当者はより戦略的な業務に集中できます。
営業部門のケース:「見積書や契約書の承認スピード向上」
営業部門にとって、顧客へ提出する見積書や契約書の承認スピードは、ビジネスの成否を分ける重要な要素です。上長の出張などで承認が遅れ、競合他社に後れを取ってしまった、という経験は少なくないでしょう。
After: ワークフローシステムを使えば、承認者は外出先からでもスマートフォンで内容を確認し、電子印鑑で即座に承認できます。この意思決定の迅速化が、顧客満足度の向上と受注確度のアップに繋がり、企業の売上拡大に直接的に貢献します。
ワークフローシステム導入による4つの主要メリット
部門別の活用例からも分かるように、ワークフローシステムの導入は企業に多くのメリットをもたらします。ここではその中でも特に重要な4つの効果を掘り下げて解説します。
- 業務効率が向上する
- ペーパーレス化を実現する
- 業務の透明性が確保される
- 業務の標準化を実現する
メリット1. 申請・承認業務の効率化と意思決定の迅速化
最大のメリットは、業務プロセスの劇的なスピードアップです。紙の書類を回覧する手間がなくなり、承認者は場所を選ばずに決裁できるため、承認待ちの時間は大幅に短縮されます。これにより、ビジネスチャンスを逃さない迅速な意思決定が可能となり、企業全体の生産性を向上させます。
メリット2. ペーパーレス化によるコスト削減と多様な働き方への対応
申請書や添付書類をすべて電子データでやり取りするため、紙代・印刷代・郵送費・保管コストといった直接的な費用を削減できます。さらに、オフィスに出社しなくても業務が完結するため、テレワークやリモートワークを推進する上での基盤となり、従業員のワークライフバランス向上にも貢献します。
メリット3. 内部統制・ガバナンスの強化
「誰が・いつ・何を承認したか」という記録がシステム上に正確に残るため、業務プロセスの透明性が飛躍的に向上します。また、役職や規定に応じた承認ルートをシステムで制御することで、不正な申請や承認を未然に防ぎ、企業のコンプライアンスと内部統制の強化を実現します。
メリット4. 業務プロセスの可視化と標準化
これまで属人化しがちだった業務フローがシステムによって可視化・標準化されます。これにより、業務のボトルネックが明確になり、継続的なプロセス改善(BPR)へと繋げやすくなります。また、新入社員や部署異動者も定められたフローに沿って業務を進められるため、教育コストの削減にも効果的です。
おすすめ稟議書の電子化を効率よく進める方法|電子化のメリットと思わぬ落とし穴
失敗しない! ワークフローシステムの選び方と比較ポイント5選
自社に最適なシステムを導入するためには、いくつかの重要な比較ポイントがあります。ここでは「導入したけど使われない」といった失敗を避けるための5つの選定基準を解説します。
- クラウド型かオンプレミス型か
- 操作性とモバイル対応
- 外部システムとの連携性
- 承認フローの柔軟性とカスタマイズ性
- セキュリティとサポート体制
ポイント1:クラウド型かオンプレミス型か
- クラウド型(SaaS): 初期費用を抑え、短期間で導入可能。サーバの管理も不要で、テレワークにも適しています。中小企業を中心に現在はこちらが主流です。
- オンプレミス型: 自社サーバーにシステムを構築。独自の業務フローに合わせた高度なカスタマイズが可能で、セキュリティポリシーが厳しい大企業や金融機関などで採用されるケースがあります。
ポイント2:操作性とモバイル対応
ITに不慣れな従業員も含め、誰もが直感的に操作できる分かりやすい画面(UI)かは、導入後の定着を左右する最重要ポイントです。また、外出先や移動中にも業務が滞らないようスマートフォンやタブレットでの申請・承認に完全対応しているかも必ず確認しましょう。無料トライアルがあれば積極的に活用し、複数名で使い勝手を試すことをお勧めします。
ポイント3:外部システムとの連携性
ワークフローシステムは、他のシステムと連携させることで真価を発揮します。会計ソフト、人事・勤怠管理システム、グループウェア、電子契約サービスなど、既存のツールとデータ連携が可能かを確認します。
CSVでの連携だけでなく、API連携に対応していれば、よりシームレスなデータ一元管理が実現でき、業務の自動化がさらに進みます。
ポイント4. 承認フローの柔軟性とカスタマイズ性
「申請金額によって承認者が変わる」「複数部門の合議が必要」といった、自社の複雑な承認ルートをシステム上で再現できるかは非常に重要です。
例えば、条件分岐、代理承認、差し戻しといった機能はもちろん、組織改編や人事異動に伴うルート変更が、管理者自身で簡単に行えるかどうかもチェックすべき項目です。
ポイント5:セキュリティとサポート体制
企業の機密情報を扱うため、IPアドレス制限、二段階認証、通信の暗号化といったセキュリティ対策は必須項目です。また、導入時の設定支援や、運用開始後にトラブルが発生した際の問い合わせに、迅速かつ丁寧に対応してくれるベンダーのサポート体制も、安心してシステムを使い続ける上で欠かせない要素となります。
おすすめのワークフローシステム20選
ここでは、特に中小企業から大企業まで、幅広いニーズに対応できる実績豊富なクラウド型ワークフローシステムを中心に厳選してご紹介します。自社の課題や目的と照らし合わせ、最適なソリューションを見つけるための一助としてください。(製品名 abcあいうえお順/2025年12月時点)
































