CES初日となる1月7日、米IntelはCES会場内において発表会イベントを開催し、今後Intelが家電業界に対する取り組みについて説明した。このイベントは基調講演とは別に「Industry Insider Presentation」という主要企業の首脳による講演という位置付けのもの。Intel社長兼COOであるポール・オッテリーニ氏によって進められた。
講演の冒頭でオッテリーニ氏は、「PC業界は、シリコンの集積度が20−24カ月で2倍に向上するという『ムーアの法則』に則って発展してきた。それと同様のサイクルを今後は家電業界にも浸透させていく」と、ムーアの法則が家電業界にも当てはめることができると語った。
現在の家電業界は、技術がアナログからデジタルへと変化したことにより、発展のサイクルが加速している。以前、家電業界は3−5年のサイクルで技術が発展してきていたが、現在では9カ月−2年程度のサイクルに縮まってきた。採用されるシリコンは、カスタムチップから汎用チップが多用され、ソフトウェアも汎用のものが採用されている。また、開発コストも下がってきている。
こういった変化が進んでいる家電業界に、Intelの技術を注ぎ込むことによって、家電業界でもムーアの法則に則った発展を後押しできるという考えだ。これまで以上にIntelが家電業界に対して力を入れていくという決意表明と受け取ってもいいだろう。
では、Intelが家電業界に対してどういった行動を起こしていくのか。今回の基調講演でその具体例がいくつか示されたが、その一つが「Entertainment PC」である。
「消費者は、シンプルで、リモコン一つで操作でき、柔軟性があり、アップグレードが可能で、ローコストな製品を求めている」。オッテリーニ氏はそのように指摘し、その消費者の要求を満たすアイテムを具現化したものとしてEntertainment PCと名付けられたコンセプトマシンを示した。
Entertainment PCは、Media Center PCを発展させたリビングルーム向けのPCだ。Entertainment PC1台で、テレビやDVDを見たり、テレビを録画したり、音楽を聴いたり、ゲームをプレイすることが可能。ビデオデッキ、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、AVアンプ、家庭用ゲーム機など様々な家電製品をひとまとめにして使いやすくした、そういったコンセプトのマシンである。
3GHz以上のPrescottを搭載し、無線LAN機能を標準でサポートする。またHDTV出力に対応し、ハイビジョンクラスの映像を楽しめる。799ドルほどの価格で今年中頃に登場するとされており、対応製品の開発を予定しているメーカーもいくつか公表された。
このEntertainment PCは、ベースは間違いなくPCだ。しかし家電製品として位置づけていることもあり、キーボードやマウスといったPCに必要な入力デバイスは備えておらず、1個のリモコンのみで操作するようになっている。10フィート離れた場所からリモコンで操作する、という形態を想定した設計になっているそうだ。前日のビル・ゲイツ氏の基調講演で発表されたMedia Center Extenderも利用可能で、家庭内での映像や音楽の配信も可能となる。
「LCOS」もIntelが家電業界にアプローチする具体例の一つである。LCOSは「Liquid Crystal on Silicon」の略で、シリコン基板上に反射型液晶素子が形成された液晶表示モジュールだ(関連記事を参照)。従来の液晶モジュールよりも容易に高精細化が可能な上、製造にはシリコンの製造技術がそのまま応用できるため、低コストで歩留まりも良い。つまり、Intelが得意とするシリコン技術がそのまま応用できる。そこで、IntelはLCOSの製造し、大画面テレビの分野に参入すると発表したのだ。
基調講演では、実際にIntelのLCOSモジュールを利用した50インチクラスのリアプロジェクションテレビが用意され、その画質の良さをアピールした。また、IntelのLCOSモジュールを利用すれば、50インチクラスのリアプロジェクションテレビも1800ドル程度で製造できるとしている。実際にIntelのLCOSモジュールを利用した製品は、今年末頃に登場するそうだ。
さらにオッテリーニ氏は、デジタルビデオレコーダーやデジタルビデオカメラにもIntelのプロセッサが続々採用されていくことになるだろうとも語り、今後は家電分野でもIntelアーキテクチャが浸透していくとの見通しを示した。
ところで、家電分野での成功には、コンテンツビジネスが深く関わってくる。そこで、著作権保護を中心としたIntelのコンテンツビジネスに対する取り組みについても言及された。
ネットによる音楽や映画の違法流通が問題化しているが、5C(Intel、松下電器産業、日立、東芝、ソニーの5社)で開発したデジタルコンテンツの著作権保護技術である「DTCP」(Digital Transmission Content Protection)などを利用して、著作権を保護しながらデジタルコンテンツの配信を行う仕組みを構築中とした。
モバイル分野の話題として、「Florence」というモバイルPCのコンセプトモデルを示した。17インチの液晶ディスプレイ、次世代Centrinoモバイルテクノロジ、次世代のチップセット、ICH6などを搭載。見た目は取っ手の付いた薄型液晶ディスプレイのようで、キーボードなどは本体後部に折りたたまれている。そして、キーボードの部分を開いてテーブル上に設置する。
キーボードはワイヤレス化され、取り外しが可能。左側にテンキーが用意されているが、その部分も取り外しが可能で、ワイヤレスタイプのVoIPフォンモジュールとして利用できる仕組みだ。また右側に装備したパッドタイプのポインティングデバイスも取り外すことができ、Windows XP Media Center Edition用のリモコンとしても利用できるようになっている。
また、「Carbonado」というグラフィックプロセッサも発表した。実際にCarbonadoを搭載する携帯端末が示されたが、VGAサイズのディスプレイで3D描画がスムーズに行われていた。Carbonadoは、PDAや携帯電話といった携帯デバイスをターゲットとしたグラフィックスプロセッサで、Dellが発売しているPDA「Axim」シリーズの次世代モデルでの採用が決定しているそうだ。
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