加速度的な普及にともない、フラットパネルTVはいくつかの方向に分かれて進化を始めた。一つは、言うまでもなく大型化。CESの展示会場では、家電メーカーがサイズを競い合っている。そして比較的小さなパーソナルサイズのディスプレイでも、新しい動きが見え始めた。
CESのトピックとしては、まず開幕前日に、韓国LG Electronicsが76インチというPDPを発表した。207万画素、1920×1080ピクセルの解像度を持ち、1080pのフルHDをサポート。輝度は800カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1という仕様だ。
巨大な、という表現がぴったりの76インチPDPだが、奥行きがあまりないためか、横から見たときの圧迫感は少ない。パネル自体の奥行きはわずか83ミリという(ニュースリリース)。LGは、76インチPDPを今年第4四半期に北米市場に投入する計画。価格は未定ながら、「少なくとも3万5000ドル以上」とこちらも破格。
しかし、上には上がいる。世界最大の称号は、Samsungの80インチPDPが勝ち取った。もちろん1920×1080ピクセルの解像度を持ち、コントラスト比は実に2000:1。価格や出荷時期などの詳細は未定だが、そのサイズと明るさは来場者の注目を集めている。
韓国勢を中心にひたすら大画面化を推し進めるメーカーがあるなか、一方で普及サイズの液晶ディスプレイにも高付加価値化という新しい動きが見え始めた。
たとえば、シャープが出展した「OPEN AQUOS」はユニークだ。2つのPCカードスロット(Type II)を持ち、無線LANカードを介してPCと接続。PCで録画した動画を視聴できるという。
また、メモリカード内にある画像やオーディオファイルを再生する機能や、内蔵マイクで録音・再生を行うメッセージ機能などもある。「オーディオはWMA/MP3を再生可能だ。カードスロットも、ほとんどのメモリカードフォーマットをサポートしている」(同社)。
液晶パネルには同社のAdvanced Super View液晶を採用し、480pに対応する。インタフェースはコンポーネントビデオ、S端子、コンポジット。ラインアップは15インチ、20インチの2タイプと、いずれもパーソナルサイズだ。
こうした動きは、決してシャープだけのものではない。ソニーが出展したニューコンセプトのロケーションフリーテレビも同様の機能を持っている。今年のCESは、Microsoftの「Media Center Extender」など、ネットワークメディアプレーヤーの機能を持つセットトップボックスが非常に多く見られるが、「ならばテレビにその機能を盛り込んでしまえ」と考えるのは自然の流れだ。
「特に、日本ではセットトップボックスを使う文化があまりない。そのため、各種プレーヤーの機能を付加した製品が普及する可能性は高い」。こう指摘するのは、Wind Riverのシニアプロダクトマーケティングマネジャー、ジェシカ・シーブ(Jessica Schieve)氏。
同社のリアルタイムOS「VxWORKS」は、組み込み用途としてしられるが、2年前にコンシューマーエレクトロニクス製品向けの開発キット「WIND RIVER PLATFORM FOR CONSUMER DEVICES」をリリースして以来、急速に家電への採用が増えている。例えば、ソニーの「WEGA」や東芝「RD」シリーズなどで採用実績がある。
さらに同社は、Philipsと協力してネットワークメディアプレーヤーに必要な機能セットを盛り込んだデジタルテレビ向けのリファレンスモデルをCESの会場で披露。既に日本企業を含む複数のベンダーと商談の場を持っているという。「このプラットフォームを使えば、家電メーカーは開発期間を短縮し、市場の動きに合わせてタイミング良く製品を投入できる。MicrosoftのMedia Center Extenderも良いソリューションだが、まだPC周辺機器の域を出ていない」(同氏)。
薄型・軽量という特徴を活かすため、液晶ディスプレイが相次いでワイヤレス化されたのが2003年。ネットワークに繋がるための基盤は既に整備去れ、今後はその上で動くアプリケーションが多様化していくことになるだろう。
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