総務省は1月21日、高速電力線通信の実験を許可する際の方針を決定した。これは、他の無線通信への干渉を避ける“漏えい電界強度の低減技術”の検証に限り、実験設備の設置を認めるというもの。内容は、昨年11月に公表した実験制度の実施方針をほぼ踏襲した形となっている。
新しいラストワンマイルやホームネットワーク手段として期待される電力線通信技術だが、現在の規制枠内では10K-450KHzの周波数帯しか利用できず、このため家電制御やセンシングなどに用途が限られている。一方、総務省はこれまでも「電力線搬送通信設備に関する研究会」などを通じて2M-30MHz帯の追加を中心とする電力線通信の規制緩和を検討してきたが、この周波数帯を使う航空管制や短波放送、アマチュア無線などへの干渉対策が不十分とされ、規制緩和が見送られていた。
しかし、現状では新技術を開発しても実証実験を行う環境がないことから、今年度内にも実験制度が設けられる予定だ。今回の発表は、実験に必要な設備の設置許可に関する指針を示したものであり、同時に実験を行うための条件を規定したものといえる。
具体的な条件としては、前述のように「漏えい電界強度の低減技術を検証するための実験を目的とするものであること」をはじめ、使用する周波数は2M-30MHzまでの範囲で、かつ高周波出力および占有周波数帯幅は必要最小限のものであること、規定の安全施設を設置すること、他の通信等に妨害を与えないものであることなどが挙げられている。さらに実験者には、技術の概要や電磁障害を起こさないという技術的根拠を示すこと、実験中は連絡窓口を設置し、仮に電磁障害の発生が認められた場合はすぐに運用を停止するといった条件も盛り込まれた。
2M-30MHz帯が利用できるようになれば、電力線通信でも数10Mbpsから100Mbps超という高速通信が実現する見通し。米国の業界団体「Home Plug」にHD-PLCを提案中の松下電器産業をはじめ、複数の企業や団体が許可を申請するとみられている。なお総務省では、関係法令の公布・施行を待ち、実験用設備の設置を許可していく方針だ。
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