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“パッケージ配信サービス”でDVDを作る特集:サーバー型放送で何ができる?(中編)

» 2004年02月04日 23時59分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 前回に引き続き、WOWOWが計画しているサーバー型放送を使った新サービスを取り上げる。今回は、あまり聞き慣れない“パッケージ配信サービス”だ。WOWOWでは、このサービスを“サーバー型放送の本格展開”と位置づけ、2007年に開始する方向で検討を進めている。

 パッケージ配信サービスは、サーバー型放送によってHDD内に蓄積されたコンテンツをDVDなどの外部メディアに保存し、市販のパッケージソフトと同等のものを自宅で製作できるサービス。VoDが「レンタルショップに出向く手間をなくす」ものなら、こちらは「DVD販売店に出かける必要をなくす」ものといえるだろう。

 コピーワンス対応機器とメディアを使えば、今でもDVDを焼けるじゃないかーーという疑問はもっともだ。もちろん、本放送(WOWOWならペイテレビ)ならDVDに焼くことも可能。ただし、ペイテレビとパッケージ配信サービスで大きく異なるのが、配信のタイミングだ。

劇場公開から半年で配信?

 前編で解説したように、映画の流通手段(ウィンドウ)は、劇場に始まり、セルDVD、PPV&VoD、ペイテレビ、無料放送という流れに沿っている。そして、VoDは従来のペイテレビよりも早いタイミングで配信できるため、WOWOWのような有料放送事業者にはメリットがあると書いた。では、パッケージ配信サービスはどのウィンドウに相当するのか。

 WOWOW経営企画部の柳川良文参事は、「WOWOWとしては、セルDVDと同じウィンドウにしたい」と話している。セルDVDは、劇場公開からおよそ半年で販売される2番目のウィンドウ。実現すれば、劇場で見逃した映画も、ほんの数カ月後にはサーバー型放送で配信されることになり、現在のペイテレビより丸1年早いことになる。

photo パッケージ配信サービスの仕組み。SDカードなどに記録してモバイル用途に利用できるパッケージ配信も検討されている

 利用手順は、基本的にハイブリッドレコーダーで行う作業と同じだ。受信機のストレージには、ユーザーが知らないうちに番組が蓄積されている。その中から手元に残しておきたい番組を選び、DVDなどのメディアに“ムーブ”する。このとき、受信機はインターネット経由でWOWOWのセンターサーバに接続し、課金処理を行うという。

 「パッケージ配信サービスでは、外部メディアに記録する際、“記録権”を購入する必要がある。料金は今後の交渉によるが、基本的にはパッケージソフト購入に相当する金額だ」(柳川氏)。必要なくなるパッケージコストや物流コストが価格に反映される可能性もあるが、ハリウッド側はパッケージ販売と同等の利益を確保することを前提にしている。このため、劇的に安くなることは考えにくいという。

HD画質が前提だが?

 WOWOWでは、パッケージ配信の番組はHD画質を基本とする計画だ。記録メディアも「少なくともDVD以上の容量を持つもの」を想定している。はっきりしないのは、サービス開始までに3年の期間があり、その間にBlu-Rayなどの大容量メディアが普及している可能性が高いため。いずれにしてもHD画質の映画ソフトを自宅で作成できる点は興味深い。

 ただし、HD画質が前提になると、WOWOWが予定している“隙間”の周波数帯だけでは明らかに帯域が不足する。このため、2007年を目標として、同社はBSデジタル放送の割り当て周波数の追加を求めていく方針だ。

 仮に、デジタルハイビジョン1チャンネル分の周波数帯が追加できれば、伝送容量は24Mbpsのプラス。HDTVなら再生時と同じ時間で、また6MbpsのSD画質なら、再生時の4分の1の時間で蓄積できる。ファイル型サービスのメリットを活かし、柔軟な運用を可能にするためにも、周波数帯の追加は不可欠だという。

 「地上放送を含めた全ての放送がデジタル化され、今後はHDTVが“標準品質”の時代になる。蓄積媒体(HDD)の大容量化に合わせ、伝送帯域も拡大する必要がある」(同社)。

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