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BD支持は“ソニーグループだから”だけではない〜Sony Pictures特集:次世代DVDへの助走(2/2 ページ)

» 2004年02月20日 14時01分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 一方、コンテンツビジネスにおいて重要となるメディア製造・複製コストに関し、AOD陣営の方が有利と言われている。これはコンテンツビジネスの利益を決定する重要な要素ではないのだろうか?

photo Sony Corporation of Americaのブルーレイディスク・グループ上席副社長Michael R. Fidler氏

 「AOD側がどう話しているかは知らないが、BDの複製コストはAODとそれほど変わらないところまで持って行ける可能性がある」と話すのはFidler氏。実際、開発途上にある現在は、完全に新規に製造装置を作らなければならないが、DVD製造装置を構成するコンポーネントのうち90%はBDにも転用可能で、フィルムを貼り付ける製造方式がこなれれば、CD製造装置の技術を転用できる可能性があるそうだ。

photo 「2004 International CES」のソニーブースで展示されていたBD-ROMのメディア。片面一層、片面2層の2種類がある

 「ビジネスの側面で話すならば、BDのセキュリティについても考える必要があるだろう。BDは全く新しいメディアであり、セキュリティ対策は万全だ。新しい機能を使うことで、インタラクティブなコンテンツを作るための複雑なオーサリングによるコスト増大も抑えることができる。BDにはディスクごと、ユニークなIDが振られるため、かなり強固なコピー防止技術も導入できる。それらトータルのパフォーマンスを考えれば、初期のコストだけで単純に比較することはできない。それに、われわれは普及した方が安くなると考えている。BDの製造・複製コストは必ず安くなる。現時点でのコスト比較は無意味だ」(Eklund氏)。

コンシューマーは、本当のHDパフォーマンスを知らない

 もっとも、いくら高品質を唱えたところで、消費者がより高品質な映像を求めなければ、HDコンテンツをリリースしても、単にマニア層向けの製品として終わってしまうだけだ。かつてオーディオ用メディアは、その便利さが受けてアナログディスクからCDへと移行した。しかし、使い勝手がほぼ同じDVD-AudioやSACDへの移行には成功していない。

 「現在、ほとんどの消費者はDVDの画質しか知らない。HD放送もあるが、リアルタイムエンコードのコンテンツには品質の限界もある。本当のHD品質がどのようなものかを知れば、きっと欲しくなるだろう。しかも消費者は、デジタルテレビへの移行期においてHDTVを選択している。高品質を楽しむための受け皿が、すでに家庭の中に存在するというのは大事なことだ。オーディオの場合、その品質を楽しめる環境は非常に限られていたが、HDコンテンツでは、品質の高さが普及をドライブするだろう」(Fidler氏)。

 高価な機材を購入する必要のあったオーディオと異なり、HDTVは既に家庭に入っている。品質の高いTVがあるのなら、それを活かしてみたいと思うのはごく当たり前の心理だろう。

 「もちろん、HD品質が認知され、HDコンテンツが大きなビジネスへと成長するには、長い時間が必要となるとは思う。しかしDVD-AudioやSACDのようにはならないだろう」(Fidler氏)。

 もっとも、HDコンテンツの本当の品質を知らないのは、消費者だけではない。コンテンツを制作する側も、自分たちが作ろうとしているコンテンツが、非常にレベルの高いものであることを認知すべきだとEklund氏は話す。

 「われわれ、次世代光ディスクに関わる人間は、その可能性を常に追い、SDコンテンツとの違いを認識している。しかし、制作しているすべての人間がそうだとは言えない。HD品質を知らないのは、SDコンテンツにしか関わっていない業界関係者も同じことなのだ。きちんとHDコンテンツのパフォーマンスを引き出すため、制作スタッフを再教育する必要があるだろう。その必要性を感じるほど、SDとHDは異なるものだ」(Eklund氏)。

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