デジカメ市場が順調に拡大していることもあり、乾電池メーカー各社はデジカメでの使用に適したことをうたう乾電池を投入している。先駆けになったのは2001年に東芝が発売した「GigaEnergy」だが、今年には松下電器産業、日立マクセルが新製品を発表している。
東芝のGigaEnergy(関連記事)は正極の作用物質にオキシ水酸化ニッケルを使用したニッケル乾電池で、通常のアルカリ電池と比べて約5倍長持ちするという。
松下電器産業のオキシライド乾電池(関連記事)は同じく正極の作用物質にオキシ水酸化ニッケルを使用したニッケル乾電池。特にデジカメ向けとは言っていないが、撮影枚数デモを行うなど、デジカメでの使用にも適した製品であることをアピールしている。
そして、これらの中では最後発となる日立マクセルの「イプシアルファ」は、正極の作用物質に二酸化マンガンを使用したアルカリ電池。同社製品「ダイナミック」や「アルカリエース」の最上位品という位置付けであり、アルカリエースと比較して、撮影枚数が約1.8倍も増加するという。
新製品の方向性について同社では、「デジカメの長時間利用という目的に特化した製品ともいえるが、あくまでも”1.5V出力のアルカリ電池”あることが重要なポイント」としている。
この2点が、GigaEnergyやオキシライド乾電池などと異なるところだ。GigaEnergyはあくまでもデジカメ専用をうたっており、オキシライド乾電池は出力が1.7Vなのでヘッドライトなどに使用すると電球の寿命が短くなることをメーカー側でも認めている。イプシアルファは、デジカメ”にも”強いアルカリ電池なのだ。
本製品の大きなウリは、約1.8倍という撮影枚数増であることは間違いない。同社によるとこの撮影枚数は、カメラ映像機器工業会(CIPA)規格の「電池寿命測定法(CIPA DC-02-2003)」に沿ったテストによるものだという。
具体的には、液晶モニターは常時オン、30秒ごとに光学ズームを駆動、2回に1回フラッシュを発光。そして、5分間撮影した後に電源をオフにし、55分休止するという条件でテストを行った。こうして撮影可能枚数を求たところ、アルカリエースに比べ約1.8倍の撮影が可能だったという。
このテストで特徴的なのは、テストに「休止時間」を含めているところだ。しかし、デジカメのバッテリー寿命を語るとき、今後はこの「休止」がポイントになるのではないだろうか。
というのも、各社が電池寿命を表示する際、連続撮影での枚数が数値として示されることが多いが、特殊な場合を除いて、バッテリーが切れるまでの連続撮影を行うことはまずないからだ。
実際に個人でカメラを使う場合、何枚か撮影した後に電源をオフにし、しばらくした後、電源を入れ直して撮影を行うというケースの方が圧倒的に多い。CIPA DC-02-2003はより実使用に近い測定方法といえるのだ。
ただこのCIPA DC-02-2003は電池業界で標準的な測定法というわけではない。実際、他の電池メーカーに同基準での測定を行う計画があるかどうか尋ねてみたが、「現時点では未定」という回答だった。
現状では各社ともに、電池寿命の表示については独自の測定基準を用いており、「どの電池が本当に一番長持ちするか」という素朴な疑問には、ユーザーが各自で試してみるしかない。
CIPAは、銀塩/デジタルカメラおよび関連機器・ソフトウェアを製造するメーカーの団体。オリンパス、カシオ計算機、キヤノン、京セラ、ソニー、富士写真フイルム、リコーなどのメーカーが名を連ねている。主にカメラメーカーで構成されており、電池メーカーは含まれていない。
基準そのものの発表が昨年12月ということもあり、まだ普及はしていないが、CIPA会員のカメラメーカーでは今後、電池寿命について同基準を使うことで合意しており、既にカシオ計算機のEXILM ZOOMでは、CIPA DC-02-2003による測定値が用いられている。
製品選びにおいて、こうした統一規格はユーザーにとっては大きなメリットになる。規格の普及に向けて、カメラメーカーだけでなく、電池メーカー側の積極的な採用を期待したいものだ。
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