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日本初・株式会社の大学院――デジハリ大学院が開校

» 2004年04月19日 12時06分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 構造改革特区政策による、日本初の株式会社が運営する大学院、デジタルハリウッド大学院大学が開学、4月18日に入学式が行われた。

photo 4月18日に行われたデジタルハリウッド大学院大学の入学式

 同学はデジタルコンテンツのコンテンツプロデューサー/ディレクターを育成することを目的とする大学院で、初年度となる今年の入学者は59名。入学者の年齢は幅広く、下は21歳から上は47歳(平均年齢は30歳)。平均年齢からも分かるように大学新卒者の入学は少なく、3人に1人は起業を目的としての入学だ。講師陣も現役の経営者やディレクターなどがほとんどで、実践的な教育が行われる。

 「1987年頃、デジタルコンテンツ研究のためにアメリカの大学の研究室を日本に誘致するという計画があり、自分がその研究のために渡米した。しかし、帰国して準備を進めた頃にバブルがはじけ、誘致計画は頓挫。紆余曲折を経て1993年にデジタルハリウッドを設立することになったが、“いつか大学院を作ろう”と思っていた」

 学校長を務める杉山知之氏は、大学院設立は10年来の夢であったと語る。

 なぜ大学院なのか? 杉山氏は「日本はほとんどの人がある程度の学問を修めており、インフラも世界最高レベル。サービスやコンテンツも素晴らしい。しかし、それらが有機的に結合しているとは言い難い」とデジタルコンテンツ産業をとりまく課題を指摘。「必要なのはそれらを横断的に結合させること」と、大学院設立の目的を述べる。

 また、「ある分野においてプロになってしまうと、横の連携がしにくくなるという弊害が出やすい。そうした弊害を打ち破るには、同じ目的を持った人間が集まる“大学院”という場が最適だ」と、学生に大学院というフィールドを積極的に活用してほしいとした。

 同学は構造改革特区政策による、株式会社が設立した大学院であることからも注目を集めている。

 特区政策とは各種の規制緩和などを地域限定で認めるものだが、リスク管理などの問題もあり、一口に規制緩和といってもそう簡単にできるものではない。しかし、個人や企業、団体が内閣官房に要請を出すことによって、特区という形で規制緩和を民間側から働きかけることはできる。

 これまで、株式会社が文部科学省の定める大学・大学院を設立することは認められておらず、株式会社であるデジタルハリウッドが大学院を設立できたのは、この特区政策によるものだ。そうした意味では、同学の設立は政府の推進する構造改革・規制緩和政策の一環ともいえる。

 今回の特区申請は大学院の所在地である東京・千代田区から行われた。千代田区には11の大学を始めとした100あまりの高等教育機関が存在するが、区長の石川雅巳氏は「既存大学からの反発は確かにあった」としながらも、「近代教育を守り、育てていくためには更なる改革が必要」と申請の意図を述べた。

 また、内閣官房 構造改革特区推進室 地域再生推進室 参事官の檜木俊秀氏からは「起業を志す人も多いと思うが、規制というものはこのように“変えられるもの”であることを覚えておいて欲しい」と学生へエールが送られた。

 入学した生徒は今後、1年ないし2年をかけて、デジタルコンテンツ産業を担うべく課程をこなしていくことになる。入学生代表からは、“大学院は卒業生の活躍で評価されてしまう。このことを肝に銘じていきたい“と意気込みが語られた。

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