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「副作用」は覚悟していた――文化庁に聞く著作権法改正の舞台裏第2回 輸入音楽CDは買えなくなるのか(1/4 ページ)

» 2004年05月13日 10時59分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

「輸入CD全体へ影響を及ぼすことは予想できた」――では、なぜ起案されたのか

 「輸入CD全体へ影響を及ぼすことは予想できた」。文化庁・長官官房著作権課の森下平氏(法規係長)は、今回の著作権法改正が輸入CD全般に及ぶ可能性を、起案した文化庁があらかじめ承知していたことを認める。また「(法案自体が)不明瞭ではないかという指摘は(真剣に)受け止めたい」とも述べた。

 そこまで予想されながら、なぜこの法案は起案されたのか。

 森下氏は、知的財産戦略本部の設置を始めとした政府方針を前提とし、著作権物の輸入について見直しが行われたことが、今回の著作権法改正の発端だという。

 「米国には輸入物にも著作権を認める(輸入の制限を認める)法律がありますが、日本と欧州は自由貿易重視の観点からそうした処置を見送ってきました。海外で一度販売された物も、自由にしていい(=譲渡権)とされており、海外で売られた物が日本に戻ってくることもなんら問題ないとされています」

 しかし、その後、EUが非EU圏から安い著作物が入ることへの制限を決定し、日本国内でも「譲渡権を認めながらも、著作物については輸入制限を行うべきではないか」という議論が起こったというわけだ。

 「今回の措置をCDだけとしたのは、書籍などは言葉の壁もあり、規制する必要がなかったからです。それに、譲渡権の原則があるので、『不当に利益を害される場合』と条件を付けています」

 「こうした細かな規定があるのは日本だけで、諸外国ではもっと広範に渡って著作物の輸入を制限しています。今は(還流CDが)68万枚かもしれせんが、今後、アジア諸国で積極的な展開を行う際にこうした措置は必要です」

 森下氏は、文化庁として、日本の音楽文化(邦楽CD)をアジアへ輸出するためには、著作権法によって還流を防がなくてはならない、と今回の法改正の趣旨について説明する。

なぜ還流に著作権法で対処しなければならないのか

 68万枚という、CDの総流通量に比べれば些少な還流CDを防ぐのに、著作権法の改正で対処するのは、過剰措置ではないか、という意見もある。生産者と販売者間の契約などで対処することはできないのだろうか。

 「ライセンスを受けた側が生産したCDを日本に戻す(還流させる)ことはまずないです(発覚すればライセンス違反になるため)。ライセンスを受けていない第三者、つまりライセンス間の契約に縛られない事業者が還流を引き起こしているのが実情だと理解しています」

 「なぜ著作権法で対処するのかと言えば、諸外国の例にならってということになります。著作物の還流対策として関税措置などを行っている例もありませんし、ほかの法律で規制するとしても、ピッタリくる法律はないのが現状です」

 このように、『還流を防止して著作権者の利益を保護する』という観点から、著作権法の改正で対処するのがベストというのが文化庁の考えだ。なお、関税での対処については、関税による輸入規制そのものが日本ではあまり行われなくなっていることと、レコード業界への過剰保護につながるという観点から見送られたという。

 「われわれのやろうとしていることは、レコード業界の保護ではなくて、著作権者である作詞家・作曲家・実演者の保護です。そもそも、日本の音楽産業が海外へ出て行けるように著作権者を保護するという趣旨ですから、(関税法など)経済法による対処はなじまないのです」

文化庁の捉える輸入CDの実態――CDとCCCDは同一物か?

 アジアなどに進出する日本の音楽業界のため、著作権者の権利を守る。そのために著作権法を改正する。この論理は理解可能なものだ。しかし、それが、6000万枚とも言われる輸入CD全体にまで影響が及ぶとなると、容易に納得できるものではない。文化庁では輸入CDの実態をどのように捉えているのだろうか?

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