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「副作用」は覚悟していた――文化庁に聞く著作権法改正の舞台裏第2回 輸入音楽CDは買えなくなるのか(2/4 ページ)

» 2004年05月13日 10時59分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 文化庁によれば、同庁独自での調査は行っていないが、国内で購入できる洋楽CDの内、75%が国内でプレスされているもの。16%が国内レーベルによる直接輸入CD、残りの9%がその他の輸入ディストリビューターによるもの、と理解しているそうだ。

 しかし、洋楽CD全体の枚数については「7000万枚程度では」と述べており、前回の記事で民主党の川内博史代議士の触れた「輸入盤6000万枚、国内盤7000万枚」という数字と大きく食い違う。また、実際に影響が出る規模は、「還流CDの枚数(68万枚)と大きく変わらないと考えています」と言う。文化庁としては、さほど大きな影響はないと考えているようだ。

 森下氏は、私見としながらも「影響が少ないと予想されるから洋盤CDの輸入制限を行ってもいい、という論理が成り立たないように、還流CDも68万枚と少ないから規制をしなくても良いという論理も成り立ちません。法改正によってアジア市場へ進出することができるならば、それは必要な措置です」と述べる。

 「さまざま要件を付けることで、既存のCD流通には大きな影響を与えないようにしています。何も要件を設けずに著作権法の改正を行った場合、価格を含めて大きな影響が出ると考えられますが、要件を設けてありますので、副作用はないと考えています」

 文化庁としては、「国内で同一のCDがある場合に限る」「販売目的に限る」「国内販売表示がないと販売停止にできない」などの要件を盛り込むことによって、輸入CDへの影響を抑えつつ、アジアへの日本音楽の進出を促したいというのが主張だ。

 ここで気になるのが、「同一のCD」の条件。同じタイトルでもジャケットが違っていたり、各国版で収録内容が違っていれば、ファンとしては「違う」CDと認識する。こうした差異についてはどう判断されるのか。

 「ジャケットが違うだけの場合には同一と見なされるでしょう。あくまでも収録されている楽曲で判断が行われます。最終的には司法判断になりますが、2曲3曲と追加収録されていたりすれば競争力を持つ別商品になると思いますので、(税関で)止まることはないと思います」

 ジャケット違いはアウト。ボーナストラックが収録されているものはOKというわけだ。では、輸入盤がCDで、国内盤がCCCDであった場合、これは「同一のCD」になるのだろうか。

 「収録されている楽曲が同じならば、(CDでもCCCDでも)同一と判断します」

 予想されたことだが、同じ楽曲が収録されている場合、国内盤のCCCDがあれば、輸入盤のCDが輸入停止になる可能性が高い。ただ、現時点ではその基準はまだ明確に策定されていないということなので、法案が可決されてから具体的な“止める”基準作りが始まることになる。

 「柔軟性を保つためには細かな明文化は避けるべき。また、どんな法律にもグレーゾーンはあり、裁判所はその解決のためにあります」

 ただ、音楽には旬がある。裁判所の判断を仰ぐ暇は輸入盤ディストリビューターや小売店にないと思うのだが……。

RIAAからは「輸入権に賛成する」というコメントが寄せられている

 昨年12月に行われたパブリックコメント募集の際、全米レコード協会(RIAA)と国際レコード産業連盟(IFPI)は、「輸入CDの規制に賛成する」という趣旨のコメントを寄せたとされている。

 これは、日本レコード協会の依田巽会長(エイベックス代表取締役会長兼社長)が、「洋楽レコードの直輸入を還流防止によって禁止するようなライセンサーに対して働きを行う考え方は日本にはありません。日本の5社はそういう意向はございません」とコメント(第159回国会 文教科学委員会 第11号 平成16年4月15日)し、確認書として提出した内容と、相反するように見える。

 この点について森下氏は、RIAAとIFPIからパブリックコメントが寄せられたことを認めた上で、彼らが「輸入権に賛成していることも事実です」と明かす。

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