ソニーは5月18日、2004年度の経営方針説明会を都内で開いた。出井伸之会長兼グループCEOは「2003年度にスタートした構造改革は着々と進んでいる。本年度はさらにこれを進め、地盤を固める年」と述べ、2006年度に焦点を合わせてホームエレクトロニクスとモバイル分野に集中していく方針だとした。
2003年度連結決算では、同年度スタートの構造改革計画「トランスフォーメーション60」(TR60)に基づいたリストラ費用が響き、営業利益はマイナス約47%の大幅減益に。その分、グループ合計約9000人の人員削減の実施や生産・物流拠点数の約1割削減などで、固定費削減効果は本年度で約880億円、2006年度で2000億円を見込む。
PC「バイオ」もシェアを追わずに収益性改善に専念した結果、ワールドワイドで黒字化を達成し、「年末緊急商品プロジェクト」として投入したDVDレコーダー「スゴ録」がヒットするなど、製品での成果も出てきている。昨年の“ソニーショック”については「全体のマネジメントと、個別のカンパニーなどでぎくしゃくしていたところがあった」(出井会長)と反省。一定の止血策を経て、本年度は事業面、経営面で地盤固めを着実にする時期だと位置付けた。
製品の集中領域はホームエレクトロニクスとモバイルエレクトロニクスの2分野だ。
ホームエレクトロニクスでは、バイオシリーズやPDP・液晶のフラットパネルディスプレイやDVDレコーダーなどに加え、HDD内蔵型ビューワーなどの多機能TVにも力を入れていく。
またモバイルエレクトロニクスは携帯電話やデジタルカメラ、DVカメラ、年内発売予定のPSPなど。「携帯電話とソニーの得意商品が近づいている。“個電”として新ビジネスを生むチャンス」(出井会長)として注力。「ポケットを制するものは未来を制する。絶対に競合に勝ち続ける」(高篠静雄副社長兼モバイル担当COO)。
集中領域に応じて開発部隊の統合も進める。またCCDやプロジェクター用高精細液晶、CELLプロセッサなど、高付加価値化・差別化に必要なコアデバイスへの投資も続けるなど、商品開発力を強化する方針だ。「質的変化を達成すれば、量的変化も達成できる」(安藤国威社長兼グループCOO)。
経営面では、グループ本部を中心として、各事業領域が自律的に動く「協調分担型」の組織とする。「求心力と遠心力がバランスよく働く体制にチャレンジする」(出井会長)。英Sony Ericsson Mobile Comunicationsを社長として軌道に乗せた井原勝美氏が副社長兼グループCSO&CFOに就任。グループ戦略の立案を担当する。
出井会長らが繰り返したのは、これらの計画は「2006年度の飛躍」に備えてのものだという点。出井会長は「2006年以降、個人がパワーを持つ時代になるだろう。そうするとマスプロで売っていく時代は変わり、大企業やベンチャー、広告宣伝などさまざまなもののあり方も変わるだろう。その臨界点が2006年」と説明する。
また久夛良木健副社長兼ホーム・ゲーム・半導体担当COOは「PCはツールはそろっているが使いにくい。PCとTVなどデジタル家電のいいところを両方備えた製品を作るには大変なテクノロジーが必要」と述べ、CELLプロセッサを使った製品が2006年以降に登場することを示唆した。
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