大手電機11社の2003年度決算では、DVDレコーダーや液晶TVにいち早く注力した“デジタル家電勝ち組”の躍進が目立った。構造改革費用に足をとられたソニー以外は前年度比2桁営業増益を計上。景気回復とオリンピックによる需要拡大が期待される2004年度は各社とも、増収増益基調の強気の見通しを立てている。
社名 | 売上高(前年度比増減率、▲はマイナス) | 営業利益(同左) | 最終利益(前年度比増減率、-は黒字転換) |
---|---|---|---|
日立製作所 | 8兆6324億円(5.4%) | 1848億円(20.9%) | 158億円(▲43) |
ソニー | 7兆4964億円(0.3%) | 989億円(▲46.7%) | 885億円(▲23.4%) |
松下電器産業 | 7兆4797億円(1%) | 1955億円(54%) | 421億円(-) |
東芝 | 5兆5795億円(▲1%) | 1745億円(51%) | 288億円(55.8%) |
NEC | 4兆9068億円(4.5%) | 1826億円(51.1%) | 410億円(-) |
富士通 | 4兆7668億円(3.2%) | 1503億円(49.7%) | 497億円(-) |
三菱電機 | 3兆3096億円(▲9%) | 927億円(47%) | 448億円(-) |
三洋電機 | 2兆5080億円(14.9%) | 955億円(22%) | 28億円(-) |
シャープ | 2兆2572億円(12.7%) | 1216億円(22.3%) | 607億円(86.3%) |
日本ビクター | 9219億円(▲5%) | 251億円(12.8%) | 156億円(146.4%) |
パイオニア | 7008億円(3.5%) | 437億円(42.1%) | 248億円(54.5%) |
2003年度は「新三種の神器」と呼ばれる薄型TV、DVDレコーダー、デジタルカメラが各社の業績を引っ張った。シャープは液晶TVが絶好調で過去最高益を更新。DVDレコーダーが快調な松下電器産業やパイオニアも営業利益が大幅アップ。デジタルカメラが成長をけん引した三洋電機は2期ぶりに最終損益が黒字化した。
一方で薄型TV、DVDレコーダーとも出遅れたのがソニー。昨年末に投入した「スゴ録」が好調なものの「PSX」が想定ほど売れず苦戦。ブラウン管TVの不振を薄型TVが補いきれず、巨額のリストラ費用計上も手伝って営業利益を大幅に減らした。
デジタル家電向けの半導体や液晶/プラズマパネルなどのデバイス分野も好調だ。富士通のデバイス部門は前年度の316億円の赤字から一気に275億円の黒字に転換。東芝はNAND型フラッシュメモリの需要急拡大で、半導体部門の営業利益を同2倍以上に引き上げた。三菱は記録型DVD機器向けのレーザーダイオードが好調、日立は携帯電話や薄型TV向けの液晶パネルが伸びた。
メガピクセルカメラ付きなどの高付加価値モデルが人気を集めた携帯電話も好業績を後押し。各社の携帯電話部門は軒並み売り上げを伸ばした。
商品の売り上げ増に加えて、ITバブル崩壊以来、各社が取り組んできた構造改革が奏功し、利益率を押し上げた。人員を削減して事業の統廃合を進めてきた松下や、不採算事業から撤退して「選択と集中」を進めた日立も営業利益を大幅アップ。三菱は販管費を削って原価率を下げたことが営業利益好転に結びついた。
景気回復が鮮明さを増してきた今年度。デジタル家電を中心に購買意欲が高まると読み、11社とも2ケタ増益と強気の見通しを立てている。価格競争が激化する中で構造改革や部品調達の効率化を一層進め、原価率を引き下げて利益率アップを狙う。
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