Yahoo! BBで個人向け通信サービスを席巻したソフトバンクグループだが、次は法人向けサービスに参入する。ソフトバンクは、日本テレコムのすべての発行済み普通株約1億4,400万株を約3,400億円で買収すると発表した。11月16日の取得が予定されている。
発表会の席でソフトバンクの代表取締役社長である孫正義氏は「ブロードバンドナンバーワン企業になるためには、あらゆる戦略的手法を行使する。今回の買収もその一環だ」と意欲を見せた。
(左)リップルウッド・ホールディングス CEOのティモシー・コリンズ氏(中央)ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏(右)日本テレコム代表取締役執行役員社長の重倉英樹氏 |
今回の合併により、ソフトバンクグループは日本テレコムのバックボーンはもとより法人顧客を獲得しサービスの幅を広げることになる。これにより、連結売り上げは1兆円規模に、回線数は約1,000万になる計算だ。なお、回線数1,000万の内訳は、法人音声163万回線、法人データ8万回線、音声個人764万回線、個人データ576万回線(重複あり)。
現在、ソフトバンクグループはYahoo! BBにおけるアクセスラインやバックボーンなどのネットワーク資産からYahoo! JAPANのコンテンツに至るまで保有している。これに日本テレコムの法人向けサービスが加わる。これにより、「このような複合的なサービス持っているのは世界でもソフトバンク1社のみ」(孫氏)と合併によるシナジー効果を強調した。
買収による収益力の強化については、単体の時よりも年間で売り上げは年間200億円増、コスト削減効果は年間300億円になるとの試算が示された。これに現在のソフトバンクのEBITDAの850億円を加えると、約3,400億円の買収額は「事実上、2年半から3年で回収できる」(孫氏)とのことだ。そのため、リップルウッドが2003年に日本テレコムを買収した額である約2,613億円を800億円も上回っている今回の買収だが、このようなシナジー効果が出てくるため妥当な金額であるとしている。
統合による経費の削減効果としては、ネットワークの統合、カスタマーサポート、プロダクトを統合し、組織の効率化が挙げられる。しかし「(ソフトバンクBBにて)3,000人の新卒と1,500人の中途を採用する」(孫氏)としているため、人員の削減は行わないとした。
また、「日本テレコムの経営陣を中心に今後とも運営をしていく」や「当面はODNのブランドは続けていく」(孫氏)としているように買収による日本テレコムの体制に大きな変化はないようだ。また、日本テレコムとソフトバンクBBはシナジー効果により共存していくため、合併などは行わない方針だ。
将来的な展望としては「次は移動体か光ファイバー」としており、これはTD-CDMAとFTTHのことと思われる。しかし、「今やっていることをしっかりと仕上げていくことが重要」だと少々慎重な意見も聞かれた。
なお、現在の日本テレコムの株主はリップルウッドをはじめ6社で、買収額の約3,400億円の内訳は、ソフトバンク買取普通株式が1,433億円、純有利子負債が1,640億円、優先株が325億円。11月16日の取得が予定されている。
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