自動販売機に無線アクセスポイントを取り付け、“無線LANスポット”にする試みが夏から始まる。場所は、愛知万博の開催を来年に控えた名古屋市内。自販機から半径50メートル以内なら、無線LAN内蔵のノートPCやPDAでブロードバンド接続が可能になる。
実証実験を実施するのは、自動販売機の維持・管理サービスを提供している“自販機オペレーター”のホーキング。ネットワーク構築を担当するIRIコミュニケーションズ、およびロケーションオーナー(設置場所を提供)に対する営業や設置作業を担当するタケショウと手を組み、自動販売機を無線LANスポットにする新規事業を立ち上げる。
「飲料自動販売機は、国内に約260万台が設置されている。これをインターネットに接続可能なインフラとして活用し、さまざまな事業展開を図っていきたい」(ホーキング)。
実証実験では、まずホテルや駅の構内などにある自動販売機をホットスポット化。回線には光ファイバーもしくはADSLを使い、自動販売機にモデムや2.4GHz帯の無線LANアクセスポイントを設置する予定だ。実験は50台程度の自動販売機からスタートするが、年内には名古屋市だけで1000台前後にまで拡大する予定。さらに、2005年には全国展開し、2〜3万台の自動販売機をホットスポット化するという。
「われわれは15社の管理会社と協力関係にあり、メーカー(管理)の分も含めると(対象となる)自動販売機は50万台程度になる。各管理会社も計画に前向きで、課題は回線の敷設速度ぐらいだ。それも、現在のブロードバンド環境を考えれば大きな問題にはならないだろう」。
具体的なビジネスモデルの検討は実証実験の後になるが、今のところ主に2つの方向を考えている模様だ。1つは、自動販売機のアクセスポイントを既に無線LANスポット事業を展開している接続事業者やISPなどの“足回り”として提供する回線のホールセール。「プロバイダに依存しない形の“ローミングプロバイダー”を立ち上げ、複数のプロバイダの接続が可能な環境を構築する。提携したISPのユーザーは、IDとパスワードで接続可能になる」。もちろんユーザー認証は行うため登録は必要だが、事前登録のほか、利用時に登録することもできるようにするという。
もう1つのビジネスは「テレメーター事業」だ。こちらは自動販売機の通信機能を利用し、オンラインによる売り上げや在庫の管理を可能にするというもの。在庫を遠隔管理できれば、各オペレーターは商品の配送ルートなどを大幅に効率化できる。多くのオペレーターが計画に賛同した理由もこれだ。
実際のところ、自動販売機に通信機能を搭載するという考え方は決して目新しいものではない。日本コカ・コーラの自動販売機がiモードと連携する「Cmode」をはじめ、モバイルキャストが開発した無線LAN内蔵の自動販売機など、最近になって動きが活発化し始めている。前者はコンテンツ配信、後者はカーテレマティクス指向といった方向性の違いはあるものの、全国の街角に立つ約260万台の飲料自販機を重要なインフラと位置づけた点は共通だろう。とはいえ、これまでにない規模で自動販売機のホットスポット化を計画し、また屋外での利用も視野に入れているというホーキングのアプローチはかなり新鮮に見える。
「現在の無線LANスポットは数が少なく、屋内に限定されている。また特定のサービスに加入していないと利用できない所もネックだ。自動販売機はへの展開は、“点”でしかない現在のホットスポットを“面”に拡大するものだと考えている」(ホーキング)。
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