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前代未聞の撮影会LifeStyle Weekly Access Top10(5月28日〜6月3日)

» 2004年06月04日 20時30分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 既にご覧になった方も多いかもしれないが、昨日(6月3日)から東京メトロ銀座線で“動くトンネル広告”こと「地下鉄トンネル内大型CM(サブメディア式)」の運用が開始された。これは、「パラパラ漫画」の原理を利用して、トンネルの壁に動画CMを映し出すというもの。言葉で伝えるのはけっこう難しいのだが、実際に見たら他人にも教えたくなる。そんな広告メディアだ。

 東京メトロは、動くトンネル広告のパブリシティのため、6月2日に報道関係者を集めて試乗会を行った。回送電車扱いの特別電車を仕立て、午前と午後の2回に分けて実際に走らせたのだ。しかも事前にカメラマンを集め、“動くトンネル広告”の撮影方法をレクチャー。同社によると、このようなスタイルでプレス発表を行うのは前代未聞だという。

photo 6両編成の回送電車にぞろぞろと乗り込む人たち。東京メトロのスタッフも混じっているが、ほとんどは報道関係者だ

 乗り込んだほうも、新鮮な体験をさせてもらった。回送電車に乗ったのが初めてなら、ほぼノンストップで上野から渋谷まで走ったのも初めてだ。それだけならいいのだが、今回の被写体は、見たこともない“トンネルの壁”で、しかも自分と壁との間には開かない窓がある。電車は動いているから、三脚を立てても揺れは止まらない。そしてなにより、シャッターチャンスはわずか15秒なのだ。いかに難しい条件か、分かっていただけるだろうか。

 走り出した電車の中では、各社のカメラマンたちが、貴重なシャッターチャンスを逃すまいと窓の外に集中している。一方、通過する駅のホームでは、電車待ちの人たちが驚いた表情を浮かべていた。無理もない。本来なら人が乗っていないはずの回送電車の中で、何十台というテレビカメラや一眼レフカメラが、自分のほうにレンズを向けているのだから……。


 どうにか撮影が終わり、回送電車が渋谷に着くと、スタッフも報道陣も一様にホッとした表情を浮かべた。ただ、それも束の間のこと。デジカメやテレビカメラのモニターで撮影した映像をチェックして、急いで会社に届けようとする人、担当者を捕まえてインタビューを始める人など、それぞれに動き始める。

 しかし、私の隣にいたカメラマンの男性は、どうやら納得のいく写真が撮れなかったらしく、「午後、もう一度乗る」と言い残してホームを去っていった。哀愁ただようその背中に、真のプロフェッショナルの姿を見たような気がした(一応、泣く場面です)。

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