ITmedia NEWS >

「モバイル放送」を追いかけた2500キロ――Sバンドを求めて西へ4日間同行レポート(前編)(2/4 ページ)

» 2004年06月15日 09時04分 公開
[粕川満,ITmedia]

 同行したモバイル放送のI氏に理由を尋ねたところ、おそらくインターリーブが効いているのだろうということだ。

 モバイル放送では、インターリーブのおかげで1.3秒ほどは電波が受信できなくても途切れないで再生できる。それ以上の途絶があると再生は途切れるが、それまでに受信したデータからもう少しだけ(およそ2秒ほど)復元されるので、実際にはトンネルに入って3秒程度経ってから途切れるというわけだ。


ちょっとした途絶はインターリーブで乗り切る

 インターリーブは図にあるように、データを分散化して連続したデータの欠落にも耐えられるようにする仕組みだ。一般にデータは連続して欠落することが多いので、このような時にも損失が少なくて済む。エラー訂正と組み合わせれば元のデータを復元するのも容易になる。

インターリーブの仕組み

 初日は午後出発と言うこともあって、時間節約のため高速を利用して一路京都へ向かった。首都高速から東名高速に入るまではなかなか順調に受信できていた。

 試験放送されているのは、洋楽・邦楽のビデオクリップを中心とした音楽番組、TVドラマやスポーツ、バラエティなどの娯楽番組、マーケット情報や専門家の分析などを伝える経済ニュースなどの映像ch数種と、音楽を中心とした音声chである。

 コンテンツ契約の関係上、今回視聴した内容の詳細については触れることができないのだが、正式な放送開始時にはさらに増えて映像7ch、音声30chになる予定である。

 平日ということもあってか、高速に入ってからは順調に速度を上げ巡航。首都圏では高速道路ですら、上に橋がかかっていることも多いので、どのような影響があるかと思ったが、走り続けている分には途切れることもない。先ほども述べたようにインターリーブが効いているためだ。

ギャップフィラーとさようなら

 快調に走行しながらビデオクリップ番組などを視聴していたが、中井PA付近で画面が途絶えがちになる。「周りに障害物もないのになぜ?」と不思議に思ったが、I氏によると、このあたりではギャップフィラーがかなり遠くなるためだという。ならば衛星からの電波だけを受信すればよさそうなものだが、それでもギャップフィラーの方が電波が強いので、遠くからの電波による遅延でメロメロになってしまうらしい。

 もっとも、このへんはギャップフィラーの出される電波のかたちをうまく調整することで解決できる問題で、そのために“網の目のような道路をくまなく走って”感度を調査している部隊がいるとのこと。われわれのように単純に行って帰ってくるだけでも大変なのに、ご苦労様としか言いようがない。

 そんな会話を続けているうちにギャップフィラー域から脱出したためか、再び安定した受信状況となった。

 ギャップフィラーは現在のところ首都圏のみで稼働しているそうなので、この先はギャップフィラーの存在しないエリア、つまり“衛星からの電波だけで勝負する世界”に突入するわけだ。

長いトンネルではヒマになる……

 東名高速はそれほどトンネルが多い道路ではないが、それでもいくつかは長いトンネルもある。最初にやってきたのは都夫良野トンネル。

 モバイル放送で困るのは、この長いトンネルだ。もちろん、対策は考えられており、そのあたりはすでに記事でも取りあげている。要はギャップフィラーによってトンネル内に電波を中継して途切れないようにするのだ。

 しかしそれはそれ、今ここにあるトンネルには無力である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.