パイオニアブランドのヘッドフォンは、最近は有機ELで有名な東北パイオニアが開発している。もともとスピーカー工場から興った同社は、オーディオの世界で“スピーカーのパイオニア”を世に知らしめた。オーディオ市場の衰退とともにピュアオーディオ向けスピーカーからは撤退したものの、同社のヘッドフォン開発に歴史あるスピーカー作りのノウハウが生かされている。
その同社が2002年5月に発表したのが、デジタル赤外線伝送方式を採用したコードレスサラウンドヘッドフォン「SE-DIR1000C」。Dolby Laboratoriesが開発した「ドルビーヘッドフォン」を世界で初めて搭載し、音響特性の良いリスニングルームで最大5本までのスピーカーを設置したような立体音場をステレオヘッドフォンで仮想的に楽しめる画期的な製品だった。
このSE-DIR1000Cの廉価版として昨年10月に発売されたのが「SE-DIR800C」だ。デジタル伝送など、ほぼSE-DIR1000Cと同じ機能を搭載しながらヘッドフォンの設計見直しなどでコストダウンを図り、実売価格をSE-DIR1000Cの5万円から3万5000円前後にプライスダウンした。
先日レビューしたソニー「MDR-DS3000」は、ワイヤレスシステムにアナログ赤外線伝送方式を採用していたため、ボリュームを高めにしたときに若干ながらヒスノイズ(サーという雑音)が発生していた。SE-DIRシリーズが採用する非圧縮デジタル赤外線伝送方式は、リスニングの妨げとなるこのヒスノイズが仕様上発生しない。コードレスヘッドフォンで高音質を追求するユーザーには、この点が魅力となるだろう。
各種デコーダーやトランスミッターを内蔵した本体は横置きがベースだが、付属のスタンドを取り付けることで縦置きにも対応する。ヘッドフォンの電源は専用のニッケル水素充電池(単3形乾電池も使用可)を使うが、ソニーMDR-DS3000のように本体に置くだけで充電できるような仕組みにはなっていない。連続使用時間は、専用ニッケル水素充電池で約10時間の充電で約20時間、アルカリ乾電池で約29時間となる。
ヘッドフォンから充電池を取り出し、本体上部にある充電器で充電するという方法は毎日使うにはやや不便。充電台がないだけでなく、本体にはヘッドフォンをかけておくフックもないため、使わないときは本体の上かテレビ周辺に投げ出しておくことになってリビングの美観も損ねる。本体側が薄型コンパクトにまとまっているだけに、ヘッドフォンの収納にも工夫が欲しいところだ。
付属のヘッドフォンは、本体と同じシルバーで近未来的なデザインを採用している。右側のハウジングにボリューム、左側にバッテリーボックスと電源スイッチを装備。上位モデルのSE-DIR1000CはソニーMDR-DS3000と同様に、頭に装着してフリーアジャストバンド部が伸びた時だけ電源が入るというオートパワーON/OFF機構を備えていたが、マニュアル操作で電源ON/OFFを行うSE-DIR800Cは、どうしても“電源の切り忘れ”がつきまとう。今回のレビューでも、電源の切り忘れで使いたいときにバッテリーがなくなっていたということがあった。何らかのオートパワーON/OFF機構は、コードレスヘッドフォンには必須機能だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR