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ドルビー音響をクリアなデジタル伝送で――パイオニア「SE-DIR800C」レビュー:コードレスサラウンドヘッドフォン小特集(2/2 ページ)

» 2004年07月14日 12時43分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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 φ40ミリのドライバーユニットを使ったハウジング部は縦型の楕円形で、一般的なヘッドフォンと比べるとやや小ぶり。重さはバッテリー込みで約280グラム。イヤーパッド部が固めということもあり、一般サイズより少し大きめの筆者の耳ではやや窮屈に感じた。

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 ヘッドフォンには音が外に漏れない構造になっている「密閉型」と音が漏れる「開放型(オープンエアー)」がある。外部の音を遮断し、純粋に再生音だけを聴くというヘッドフォン本来の使い方では密閉型が一番適しているのだろうが、筆者はどうも密閉型の圧迫感が昔から好きになれずに開放型ばかりを選んできた。

 今回のSE-DIR800Cはというと、筆者の苦手な密閉型だ。

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 ハウジングが(筆者には)小さめなのと固めのイヤーパッド、そして密閉型ということで、映画視聴など長時間の使用後は装着による疲労感が少し残った。だが人によってはSE-DIR800Cの装着感は良好で、まったく問題なく何時間でも装着していられるという声も聞く。ヘッドフォンだけは個人差があるので、購入時は実際に装着して試してみることをお薦めしたい。

ドルビーの音響を満喫

 サラウンド機能はドルビーデジタル/ドルビープロロジックII/DTSの各デコーダーを内蔵しており、背面には光デジタルと同軸デジタルの2系統のデジタル入力端子とアナログ入力端子1系統を装備。光デジタルにはDVDプレーヤー、同軸にはCDプレーヤーと2台のデジタル出力機器を接続し、テレビはアナログにつなげて本体上部のボタンで簡単に入力を切り替えて楽しむといった使い方ができる。

photo 背面のインタフェース部

 売りであるドルビーヘッドフォンは各サラウンド処理システムと併用できるため、より広く立体的な音響空間を再現できる。例えば、DTSにドルビーヘッドフォンを組み合わせたり、CDなどのステレオ音声をドルビープロロジックIIでサラウンド化したものをさらにドルビーヘッドフォンであたかも5.1chのスピーカーがあるかのような音場を作り出すといったこともできるのだ。

 ドルビーヘッドフォンの音響効果はDH1(ミキシングルームのように残響を押さえた空間)/DH2(適度に残響のある一般的な空間)/DH3(小規模な映画館の空間)の3段階が用意されている。

 本体前面にはドルビーヘッドフォンに対応したヘッドフォン端子が用意され、有線タイプの手持ちのステレオヘッドフォンをサラウンドヘッドフォンとして利用できる。コードレスのメリットは失われるものの、自分好みのヘッドフォンで気軽に立体音響が楽しめるのは便利だ。

サラウンド効果はバツグン

 5.1chのそれぞれのスピーカーから順番に音を鳴らしていくデモディスクでは、前後左右それぞれのスピーカー位置から音が出てくる様子がヘッドフォンのみでしっかりと再現される。定位感や音の移動は、ソニーMDR-DS3000よりも格段に上だ。

 SE-DIR800CはドルビーデジタルサラウンドEXやDTS-ESなどの6.1chソースにも対応。ドルビーデジタルサラウンドEXの「スターウォーズ エピソード1」を視聴してサラウンド効果を確かめてみると、ポッドレースのシーンでは、音がアタマのまわりをグルグルと縦横無尽に回る。ヘッドフォンでこれだけのサラウンド効果が出れば、映画も十分楽しめる。デジタル伝送の効果で音量を上げてもヒスノイズはまったく聴こえてこないので、迫力あるシーンを大音量で楽しみたいというユーザーにはうってつけだ。

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 さらにドルビーヘッドフォンをONにすると音場の広がりは格段に良くなるものの、明瞭さがやや失われる感じになった。特に映画館の音響を再現するDH3モードでは、残響が耳につき過ぎてホールというより風呂場のような雰囲気。映画を観る場合は、ドルビーヘッドフォンはOFFにしてドルビーデジタル/DTSをそのままスルーで聴く方が筆者の好みだった。

 一方、BSデジタルの野球やサッカーなどテレビの視聴では、ドルビーヘッドフォンをONにすることで臨場感が大いに増す。SE-DIR800Cは残念ながらBSデジタルのMPEG-2 AACに対応していないのでPCM入力からドルビープロロジックII処理してサラウンド効果を出すのだが、ドルビープロロジックIIとの組み合わせではドルビーヘッドフォンの効果がうまく生きるようだ。プロロジックIIは、テレビや映画向けのMOVIEと音楽向けのMUSICの2つのモードが用意されている。

 ソニーMDR-DS3000よりもはるかに明瞭なサラウンド効果は、さすがDolby Laboratoriesとタッグを組んで開発しただけのことはある。ただし、密閉型で圧迫感のあるハウジングは、(好みもあるので一概には言えないが)長時間映画を観る時にネックとなるかもしれない。競合製品が少ないこともあり、市場ではコードレスサラウンドヘッドフォン=SE-DIRシリーズという位置付けで人気も高く、家電量販店などでも視聴できる実機を置いているケースが多い。ぜひ一度、自分の耳で確かめてみるといいだろう。

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