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“大画面の三菱”の復活は「リアプロTV」から劇場がある暮らし――Theater Style(1/3 ページ)

» 2004年09月24日 20時42分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 三菱電機は今年5月の大画面液晶テレビ「REALシリーズ」の発表時に、北米などで展開しているリアプロTVを今年度内に国内でも展開することを明らかにした。

 大画面テレビ市場での復権を担うリアプロTVの可能性や製品に盛り込まれた独自技術などについて、同社映像エンジン技術部長の尾家祥介氏に話を聞いた。

photo 三菱電機映像エンジン技術部長の尾家祥介氏


 “大画面の三菱”というフレーズを、最近あまり聞かなくなった。

 同社は、コンシューマ向けとしては最大サイズの37型ブラウン管テレビ「37C960」を1985年に世に送リ出すなど、80〜90年代には大画面の分野で確固たる地位を築いていた。ブラウン管テレビが全盛時、大画面CRTを生産できるメーカーは少なく、家電メーカー各社のフラッグシップにラインアップされていた36型テレビの多くは三菱製ブラウン管を使っていたという裏話もある。

 「当社のテレビ事業では“画質の追求”が一貫したテーマ。画質の差がハッキリと出るのが大型テレビということで、大画面に力を入れてきた」

 だが、大画面テレビの主役がブラウン管からフラットパネルテレビに移行するにつれ、プラズマの製造拠点を持たない同社の大画面市場(国内)でのポジションは徐々に下降していった。それでも、同社の大画面テレビを好むシアターファンからの、“次世代のダイヤモンドトロン”を願う声は少なくない。

 尾家氏は、プラズマ/液晶の製造拠点を持たない同社にとって、リアプロTVこそが大画面TV市場で他社と真っ向勝負できる“切り札”であると語る。

 「リアプロTVは、液晶/プラズマのようなデバイス直視型と違い、表示デバイスと画面との間に光学エンジンやスクリーンなどの要素が入っており、ここは独自に開発できる部分でもある。デバイスを自社で持つためにはかなりの設備投資が必要だが、リアプロTVの場合はDLPやLCOSといった表示デバイスを他社から購入したとしても、光学エンジンの部分で差別化が十分できる。デバイスを持たない当社のようなメーカーが勝負できる製品」

photo リアプロTVの構成

 光学エンジンは、ランプからデバイスに当てるまでの「照明系」とデバイスから先の「投射系」に大別される。照明系部分で優れた技術が開発されれば、明るい映像が得られるようになる。また、投射系部分で優れた技術が開発されれば、解像度が良くなりシャープな映像が得られるようになる。

 「つまり、テレビ画質に大きく影響するポイントの多くが、この光学エンジン部分で占められているのだ。これまで大画面テレビでは一貫して画質を追求してきた当社が、光学エンジンの自社開発にこだわる理由がここにある」

 光学エンジンの自社開発は、コスト的にもメリットが大きい。

 「光学システムの中で表示デバイスが占めるコストは全体の20%以下。残り8割のコストを左右する光学エンジンは、メーカー的には利益面でうまみがあるし、コストダウンのポイントにもなる」

 同社は100%出資のMDEA(三菱・デジタル・エレクトロニクス・アメリカ)を通じて、米国でリアプロTVを展開。米国でのリアプロTV市場は年間250万台ほどの規模があるが、その中でMDEAは20%前後のマーケットシェアを誇り、ソニーやサムスンとともにトップグループを形成しているという。

 「当社はCRT方式から含めるとリアプロTV開発の歴史は10数年にも及ぶ。その中で蓄積されてきたノウハウが、現在のマイクロデバイス方式になってからも生かされている。CRT管もマイクロデバイスも光学エンジンの部分はほとんど違いはない。長年培ってきた“画質への追求”が、今、製品で評価されている」

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