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“大画面の三菱”の復活は「リアプロTV」から劇場がある暮らし――Theater Style(2/3 ページ)

» 2004年09月24日 20時42分 公開
[西坂真人,ITmedia]

デバイスを持たない強み

 現在、コンシューマ向けに国内でリアプロTVを展開するソニーとセイコーエプソンの両社は、表示デバイスに液晶方式を採用している。だが同社が国内向けに用意している62型のリアプロTVでは、表示デバイスにDLP方式を採用することを明言している。

photo 国内で発売が予定されている62型DLPリアプロTVの試作機

 なぜ、DLPを採用するのだろうか。

 「単板方式でプリズムがいらないDLPは、光学エンジン自体のコストが安くなる。そしてTVは毎日何時間も使うものなので、DLPの長寿命性も大きなポイント。液晶方式は配向膜が有機材料でできており、ランプに含まれる青色成分に反応して経時劣化する。また、映画を観る時に重要となるコントラスト比でDLPは有利。コスト/寿命/画質とトータルバランスが一番優れているものとして、ボリュームゾーンである62型でDLP方式を投入した」

photo リアプロTVの表示デバイス

 ただしDLPでは、視線を移動した時や動きの速いシーンなどで映像内にRGBの残像が感知される「カラーブレイキング」の問題がよく指摘される。だが尾家氏によると、同社の研究レベルではカラーブレイキングは実用上問題ないという結果が出ており、逆に液晶パネルの動画応答性の低さの方が実用上で問題があると指摘する。

 ただし同社も、リアプロTVはすべてDLP方式のみと決めているわけではない。

 「62型リアプロTVでは、現時点で最良のデバイスということでDLPを選んだだけ。例えば、高精細化が欠かせない82型では、1080p表示が可能なLCOSを採用している。ただしLCOSはコスト高になるのが課題。われわれはデバイスを内製していないがゆえに、デバイスに縛られることがないのがメリット。LCOSやその派生デバイスなどが低コストになったら、DLPにかわってそれを使うかもしれないし、液晶が無機材料などを使うことで劇的に長寿命になった場合は液晶を採用するかもしれない。このようなフットワークの軽さがわれわれの武器。“デバイスを持たない強み”といってもいい」

photo DLPタイプ62V型(左)とLCOSタイプ82V型(右)

50〜60インチ以上でプラズマは敵ではなくなる

 プラズマ/液晶などフラットパネルテレビは、“1インチ1万円”が普及のターニングポイントとよく言われる。だが尾家氏は、この“普及の指標”はナンセンスであると一蹴する。

 「直視型デバイスのテレビは、インチが大きくなると面積と体積が増え、コストアップ要因も面積と体積の増加に比例する。つまり、“1インチ当たりいくら”といった1次関数では表せないのだ。実際に液晶/プラズマの量販店価格をグラフにプロットすると、2次関数になっているのが分かる。“1インチ1万円”のレベルは、液晶で20インチ、プラズマで32インチで、それ以上は2次関数的に上がってくことを考えると、プラズマで50〜60インチ以上の価格は現実的ではない」

 一方、リアプロTVの北米での市場価格を同様にプロットしてみると、インチと価格の関係はほぼ1次関数になっているという。

photo 液晶/プラズマ/PTV(リアプロTV)のインチ別の市場価格

 「50〜60インチは現時点でリアプロTVの優位性があるものの、プラズマのコストダウンも激しいので今後はわからない。だが、60インチ以上は、当分リアプロTVの優位性はゆるぎない。北米ではマイクロデバイス方式でも、1インチ5000円に近いところまできている。ちなみに、CRT方式はすでに1インチ5000円を切っている。

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