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麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」 〜秋のプロジェクター編〜劇場がある暮らし――Theater Style(2/4 ページ)

» 2004年10月29日 16時22分 公開
[西坂真人,ITmedia]

麻倉氏 : そういった中で、ホームシアターとしての突破口を開いたのが松下と三洋です。面白いのは、DLPではマランツやヤマハといったAV専門メーカーが主に市場を作ってきたのに対して、液晶では松下・三洋といった家電メーカーが主導している点です。家電メーカーの狙いは“大衆化”。蛇口をひねれば水が出てくるように家電を普及させようとする松下幸之助の水道哲学が、ホームシアター向けプロジェクターにも生かされているといっていいでしょう。そのコンセプトに性能・画質が追いついてきたのが、今年の液晶プロジェクター新製品4機種というわけですよ。

――4機種ともにセイコーエプソン製の第4世代「D4」液晶パネルを使用してますよね。松下/三洋のプロジェクターでは前モデルでもD4パネルを使っていましたが画質の違いはあるのでしょうか。

麻倉氏 : 同じD4パネルを使っていても、昨年と今年の製品を比べると今年の方が断然画質がいい。本当に同じパネルなのかといぶかしむぐらいです。機能やイメージでホームシアターの垣根を取り払ったのが昨年までのモデルで、画質の向上が飛躍的に高まったのが今年のモデルという言い方ができますね。

三洋電機「LP-Z3」

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――三洋電機のホームシアター「Zシリーズ」について教えてください。

麻倉氏 : 2002年に登場した初代のLP-Z1は、レンズシフト/短焦点という“大衆の武器”を用意してくれました。普段は収納し、週末にリビングで観るというおかたずけ視聴スタイルを提案し、大衆レベルでのホームシアターの夢を実現したのがZシリーズ。それ以前にもソニーが「シネザ」のサイドショットで“6畳シアター”を提案していたが、画質劣化がつきまとうのでなかなか普及まではいかなかった。三洋のZシリーズは、画質劣化がほとんどないレンズシフトでそれを開花させたのです。

――画質はどうでしょうか。

麻倉氏 : シルキーな画質がZシリーズの特徴です。これまで私は液晶プロジェクターを、単に明るいだけで黒のしまりがない“脳天気画質”と称してたのだが、Z1ではそのあたりを改善してシネマライクな画質を作ってきた。さらに昨年のZ2では、販売のメインストリームに持ち込むべく、パワフルなテレビ的な絵作りも導入しました。ただしちょつとやりすぎでしたね。

――今月発売した新製品「LP-Z3」は?

麻倉氏 : Z3はZ2で評価の高かったコントラスト感や鮮鋭感は残しながら、滑らかさを表現できるようになり、特に階調方向の情報量が多くなってグラデーションが細かくなりました。今年の液晶プロジェクター新製品群は、全体として動的絞り機構をうまく取り入れているのが特徴。さらに階調や色数も増やし、絵作りもていねいに行ってきている。それがもっとも顕著なのがZ3で、“活気があってしかも滑らか”という品位感の高い画質に仕上がっています。

――約10億7000万色/RGB各1024階調でコントラスト比2000:1と、競合機種に比べてスペックの良さが目立つ。

麻倉氏 : ホームシアターの場合は、数字は無視しましょう。何十億なんて言い方は最低です。ユーザーをばかにしていますよ。高いコントラスト比や色数の多さなどは、単に絵作りの“道具”を揃えたというだけのこと。いくら良い道具があっても、映像の絵作りをする人がどれだけセンスがどうなのかが本質です。Z3ではその道具を“元気さ”にふるのではなく“きめ細やかさ”として表現している点を評価します。三洋も3代目になって絵作りの要領が分かってきた。

 短焦点レンズのZ3は、観たい時にテーブルに置いて観終わったらしまうという“お片づけ型”。毎回、画面位置の微調整が必要なので、そのためにも簡単に調整できてシフト量も多めなレンズシフト機構はありがたいですね。

(三洋電機「LP-Z3」のレビュー記事はこちらを参照

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