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御三家とは一線を画すクオリティ――ソニー“シネザ”「VPL-HS50」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style (4/7 ページ)

» 2004年11月05日 21時09分 公開
[本田雅一,ITmedia]

ソニーらしいモニタライクな絵作り+α

 全体的な絵作りは安心して見ていられるクセのないものだ。グレースケールを見ると階調ごとの色相もブレが少なく、実際の映像も素直で階調が豊富な“モニタライクな絵”である。

 ただ、肌色だけはやや赤みのある“健康的に演出された”肌色で描写される。こうしたプラスαの演出は、ここ数年のソニー製固定画素テレビにも見られる傾向だ。特にアイリスが固定されたモード(アイリス切、またはオン)での階調の自然さ、滑らかさは良い。一見して色数が多いという印象だ。ただし完成度は高いが、肌色の演出に関しては好みもあり意見の分かれるところかもしれない。

 また、“安心して見ていられる”のは、おそらくトーンカーブがうまく作られているためだろう。本機はガンマ調整から4つのトーンカーブを選べるが、どのプリセットを選んでも極端な設定は行われない。ガンマを選択し、全体の明るさは部屋の暗さに応じてブライトネスで調整するというやり方だが、特に細かなカスタマイズが必要だとは感じられない完成度の高いプリセットである。

 実は米国版のVPL-HS51にはUSB端子があり(試用機も実はHS51仕様だったため、バックパネルにはUSBのミニB端子がある)、PCをUSBケーブルで接続しHD20でも使われていたImage Directorというソフトウェアでカスタムのトーンカーブを作れていたが、HS50では省かれている。

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photo 黒補正機能によるトーンカーブの違い。信号の黒レベルが高くコントラストが低い映像ソース時に利用するもので、通常はオフにしておけばいい。2段階の選択が可能な点はうれしい

 色温度設定に関しても同じで、大幅に、ドラスティックに色温度が変わるプリセットは用意されていない。高、中、低の3段階。低はやや黄色が強く違和感を感じたが、ハイビジョンや映画DVDなどは中の設定で良い。アナログ地上波を見る場合や、色温度高めが好みならば高が適しているが、いずれにしろわざとらしさのない適切なプリセットだ。もちろん、ユーザープリセットも用意されており、RGBそれぞれのゲインとバイアスをマニュアルで調整できる(3つまで保存可能)。

 また、本機から追加されたリアルカラープロセッシング(RCP)という機能で、簡単に絵作りをカスタマイズすることもできる。調整したい色(赤/マゼンタ、青、緑/シアン、黄色の4系統)を選び、調整したい色の中心を選択、さらに中心とする色からの範囲を選び、その範囲の色に対してのみ色相と彩度をカスタム設定できる。調整は4系統それぞれ独立して行え、全体を一つのユーザーメモリとして登録。3つまでのオリジナルのカラー設定を作り、切り替えて使用することが可能だ。

photo RCPの設定画面。特定の色域を選択し、色の濃さと色合いを調整できる

 画面上では選択している色の範囲以外がグレーアウトされ、ユーザーインターフェイスもわかりやすい。フォトレタッチで言えば、色域を選択して色相と彩度を調整する、といった感覚だ。

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