家電量販店の店頭で、いつの間にかPDAのスペースを奪う勢いで売り場面積を広げているのが“電子辞書”だ。カシオ計算機の調べによると、2004年度は台数で335万台、金額にして570億円の市場に成長する見込みだという。
使い勝手の成熟とともに高機能化を果たし、一つの成熟期を迎えた電子辞書。40種類以上の電子辞書をラインナップするカシオ計算機にこれからの展望について尋ねた。
“電子辞書”という製品ジャンルの登場は意外に古い。1981年にはカシオから「TR-2000」、シャープから「IQ-150」という製品が「電子辞書」と銘打たれて登場している。
PCの世界で1981年と言えば、MZ-80B(シャープ)やFM-8(富士通)が登場し、米IMBがIMB PCを発売した年だ。NECから、後の大ヒットマシン「88シリーズ」の初代にあたるPC-8801が発売されたのもこの年のことだった。
当時の“電子辞書”は電卓開発の延長から生まれた商品であり、液晶は小さく、搭載メモリも少なかった。そのため収録語句も少なかった。その後、1990年代に入り液晶の大型化や大容量メモリの搭載によって、現在発売されている電子辞書の基礎となるモデルが登場する。その中には、ソニーの「DD-1」のようにキャディに収納した8センチCD-ROMでコンテンツを供給するというものもあった。
カシオはもともとが電卓メーカーであったことから、電子辞書に対する取り組みも電卓からの流れがそのスタートであったという。
「電卓に、スケジュールや辞書機能を組み込もうという多機能化の発想が、電子辞書のスタートです。現在まで続く“エクスワード”の1号機「XD-500」は1996年に発売されていますが、キーボードは備えておらず入力はペンタッチでした。まだまだ試行錯誤の時代だったんですね」(開発本部 第二開発部 商品企画室 室長 八木愼一氏)
その後、同社では製品化の方向性について「ユーザーごとのニーズをくみ取る」というスタンスを打ち出し、「50音キーボード配列モデル(QWERTY配列が苦手な層向け)」「カラーバリエーション(女性向け)」「小型+バックライト(電車や飛行機の機内でも扱いやすいように、出張などを想定したビジネスマン向け)」「古語辞典搭載(高校生向け)」などのバリエーションモデルを展開することになる。
そして現在。国内市場にはカシオを始めソニー、SII、シャープ、キヤノンの5社が「電子辞書」というジャンルの製品を出荷しており、いずれも売れ行きは好調であるという。
現在の製品はハード・ソフト(使い勝手)・コンテンツ(辞書)のいずれも初期のモデルから比べれば長足の進歩を遂げており、各社の主力製品はQVGA解像度の液晶を備えるほか、多いものでは40〜70という辞書(コンテンツ)を搭載している。
使い勝手の面でも改良が加え続けられた。初期の製品は単純に調べたい言葉を入力して、その意味を知ることができるだけであったが、表示している語句を搭載している他の辞書で検索する「ジャンプ」機能や、これまで調べた語句を振り返る「履歴」機能、英語学習などで力を発揮する「単語帳」機能などが開発され、各社のモデルに備えられている。
「キーを押した際の反応や表示速度のレスポンス、全体的な使い勝手なども、XD-1000からのノウハウが蓄積されて、最新製品に反映されています。それに、カシオは電卓がルーツのメーカーだからでしょうか、キータッチや電池の持ち時間についても開発陣のこだわりが結集しています」(八木氏)
電子辞書という製品の特徴的なところは、汎用性を高めることでヒットしたPCとは異なり、あくまでも「専用機」であるということだ。
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