総務省は、NPO法人CANVASと協力して11月17日、ネット社会での子どもの教育やコンテンツのありかたについて考えるシンポジウム「ネット・キッズ・ポップ」を開いた。ゲームクリエイターの飯野賢治さんや、ロックバンド「少年ナイフ」リーダーの山野直子さんといったクリエイターや、教育関係者など計20人が意見を交わした。
シンポジウムでは、ネットが一般化してクリエイターの表現の場が広がっている一方で、親世代のITへの理解不足やIT教育の遅れといった問題が指摘された。また“Cool”なものとして海外で受け入れられ始めている日本のポップカルチャー人気をさらに後押しするにはどうすればいいか、などを議論した。
創作のデジタル化やネットは、作品の表現方法や発表の場を広げた。「アニマトリックス」を手がけた映像作家の竹内宏彰さんはその好例として、CG作家の新海誠さんが製作したアニメ「ほしのこえ」を挙げる。新海さんは、CGを駆使して一人でアニメを製作。DVDはネットで受注販売し、評判はネットの口コミベースで広がった。
若手お笑い芸人にとっても、インターネットが表現の場の1つになっている。吉本興業でデジタルコンテンツ企画を担当する中井秀範さんは、ネットラジオが若手芸人の活躍の場になっていると話す。
「以前は、ラジオ番組を担当して人気を上げるのがステップアップの道だったが、古株芸人が番組から降りず、若手が入り込む隙がなくなった。しかしネットラジオを使えば、ラジオと同じ活動ができる」(中井さん)。舞台は苦手でも文章で笑わせるのが得意といった芸人も、Blogを書けば名を上げられるなど、ネットが芸人育成のベースの1つになりつつあるという。
ただ、デジタル化やネットの活用には課題も多い。特に、教育現場には問題が山積しているという。
ブロードバンドが広まり、家庭へのネット普及率は上がっているが、小中学校のPCの多くはネットに接続されていないのが現状。デジタル教材を活用できる教師も少なく、「PCを使おうと提案しても、保守的な教師に『チョークと黒板だけで大丈夫だ』と反対される」(墨田区立竪川中学校教師の三橋秋彦さん)。資金不足も課題で、デジタル教育を推進するNPOは資金集めに苦労しているという。
ネットモラル教育もほとんど進まない上、そもそもモラルが確立していない現状では親はネットを怖がるばかり。「長崎県佐世保市の女児殺害事件以来、子どもにはインターネットを触らせるべきでないという意見が保護者から出た」(世田谷区助役の山田真貴子さん)。CGクリエイターの松浦さんは、ネットに関わる問題を一度洗い直し、ガイドライン的なものを作る必要があると話した。
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