110度CS放送については、2003年末にスカパー2とプラットワンが合併し、プラットフォーム事業はスカパー!1社に集約される形となった。旧プラットワン陣営の中では唯一、独自のプラットフォーム機能を持つWOWOWの次の戦略が注目されたが、1年近くの時を経て、同社は改めてプラットフォーム事業に参入することを明らかにした。
BSデジタル放送のデジタルWOWOWと、110度CS放送5チャンネルをセットで提供し、総称サービス名は「WOWOWデジタルプラス」と命名。本放送を12月1日から開始している。
110度CS放送5チャンネルのラインナップは、邦画専門チャンネル「シネマ080」(メガポート放送)、「囲碁・将棋チャンネル」(サテライトカルチャージャパン)、ライフスタイル応援チャンネル「Act On TV」(リクルートビジュアルコミュニケーションズ)、金融・経済ニュース専門チャンネル「ブルームバーグテレビジョン」(ブルームバーグ)、ハイビジョンの情報・エンタテイメントチャンネル「ep055チャンネル」(イーピー放送)となっている。
これを見て最初に気付くことは、WOWOWのチャンネルがないということである。110度CS放送についてはプラットフォームに徹するということだろう。もちろんBSデジタル放送のWOWOWと、110度CS放送のチャンネルをセットにしたパッケージは組まれている。
スカパー2とプラットワンが合併を発表した際、独自のプラットフォーム機能を持つWOWOWはどうするのだろうかということが話題になった。プラットフォーム機能は、新たに構築しようと思えばそれなりの資金を要する機能であるからだ。それをすでに持っているのであれば、最大限に活かしたいところである。そういう意味で、今回の110度CS放送のプラットフォーム事業への参入は予想されたことではあった。
ただ、そのプラットフォームに乗せるチャンネルラインナップをどうするのかについては、色々と見解が分かれていた。すべてのチャンネルをWOWOWのチャンネルで固めるのではないかとの見方も多かった。BSデジタル放送では、時間帯によっては3チャンネルのマルチ放送も行っているとは言え、基本的には1チャンネルしか持たないと認識されている。
それでいて、カバーするジャンルは、映画、音楽、スポーツ、ドラマ、舞台とエンターテインメント系全般に渡っている。オリジナル番組も制作はしているが、基本的には放映権を獲得してくるというコンテンツ調達モデルとなっている。スカパーの場合には、一つのジャンルにも複数のチャンネルを抱えているので、コンテンツの使い回しも容易である。WOWOWの場合には、1チャンネルしかないため、比較すると“ぜいたく”な使い方になっている面は否めない。
CSチャンネルの方で、スポーツチャンネル、映画チャンネル、音楽チャンネルなどを持つことにより、WOWOWの獲得してきたコンテンツを流せるようにすれば、コンテンツの有効活用になるのではないかという考え方は成り立つ。
そして何よりも、スポーツの大会物の放映権を持つことに対し、批判的に言われてしまうことを避けることができる。例えば、リーガ・エスパニョーラの放映権を獲得したことに対しては、流すチャンネルが一つしかないため、ごく限られた試合しか見られないではないかという不満の声を耳にすることが多い。その点、スカパー!が獲得すれば、複数チャンネルを使ってよりたくさんの試合が見られるのだから、WOWOWはそうしたリーグ物の放映権を獲りに行くべきではないとさえ言われている。
もしCSチャンネルをジャンルごとに持つことにすれば、そうした批判を和らげることにもつながるだろう。
しかしながら、110度CS放送の加入者の現状を見れば、複数チャンネルをジャンル別に持つということのシナジーは少ないと思われる。
スポーツのリーグ物を流している時には加入者が集まるだろうが、それが終われば解約されてしまうだろう。まして、250万件の加入者を持つWOWOWからすれば、15万件程度の加入者しかいないCSチャンネルで別の試合を放映したところで、どれだけのファンの不満を解消できるのかと言えば、大いに疑問であると言わざるを得ない。
映画、音楽、ドラマにしたところで、単なる使い回しに使うにしては、110度CS放送の視聴者のパイは小さ過ぎる。コンテンツの有効活用に見えるかもしれないが、そもそもスカパーとスカパー110のチャンネルが、ほぼサイマルであるにもかかわらず、スカパー110では赤字のチャンネルばかりだ。それを考えると、経営上のリスクを増すことにしかならない可能性が高い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR