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モバイル放送、スタートしてみて分かった新たな利便性(2/3 ページ)

» 2004年12月09日 17時49分 公開
[西正,ITmedia]

 新潟中越地震は、モバイル放送の開始早々に起こってしまったために、今回は端末を100台、無償で貸与されるのが精一杯であったようだが、引き続き全国各地で備えが必要であることからすれば、各自治体も含めて、モバイル放送の活用を常に念頭に置いておくべきなのかもしれない。

 特に、充電機器を用意しておくことが重要であることは、今回、携帯電話のバッテリーを補充するために、多くの方が苦労されたことからも明らかだ。バッテリー問題が解消しても、通話が集中するとつながりにくくなるのが携帯電話の弱点であるだけに、携帯電話用の充電器だけでなく、モバイル放送の充電器も併せて用意しておくことが災害対策の新たなポイントになるだろう。

音声多チャンネルの魅力

 いまだに震災の後遺症を残す新潟中越地震の話を記したのと合わせて語るのは不適当であると思われるが、モバイル放送の利便性を説く上では、音声の多チャンネル放送についての再評価も欠かせないようだ。

 移動体向けの衛星放送としては、米国に先行する成功事例があることは良く知られている。2001年9月にサービスを開始したXM Radioと、2002年2月にサービスを開始したSirius Satellite Radioの2社であり、特にXM Radioの躍進振りが注目されているようだ。ただし、2社のサービスはともに音声の多チャンネル放送にとどまるだけに、わが国のモバイル放送が映像チャンネルをも提供できる世界初の移動体向け衛星多チャンネル放送として評価されている。

 カーオーディオの分野でも、今やCDやMDはピークを過ぎて、DVDが視聴できる機器が市場を賑わしている。そうした消費傾向もあって、とかく複数の映像チャンネルが提供できる点にモバイル放送の評価が偏りがちだが、実際に使ってみると、音声の多チャンネル放送の充実振りも、またその使い勝手も非常に良いことが分かる。

 同乗者向けのサービスとしては映像チャンネルも魅力でが、ドライバー自らがその映像に見入ってしまうわけにはいかない。ただ、自動車内の「ながらメディア」としては、ラジオ、CD、MDとそろっており、新たに音声の多チャンネル放送に利便性を感じるものかどうかについては、実際に使ってみるまでは半信半疑にならざるを得なかった。米国で成功しているのは、あくまでも広大な国土の中で、ローカルのラジオ放送はエリアをまたぐ度に中身が変わってしまうことのストレスを解消するからであろうと考えていた。

 しかし、ドライブの最中に「ながら」で音声を聞くにしても、最初から自分で用意するCDやMDには新鮮さはないし、ラジオについても必ずしも自分の好みに合った番組を放送しているとは限らない。そこで改めて、モバイル放送の音声チャンネルを眺めてみると、さすがに多チャンネル放送であるだけに、特定のジャンルに特化したものが多く、自分の好みのチャンネルがあることに気付く。自分の好みのジャンルでありながら、CDやMDとは違って、次に何が出てくるのか分からない音声放送ならではの楽しみがある。

 地方に出かけて行って、高速道路に乗って長距離を走ってみて感じるのは、トンネルの数の多さである。トンネルから抜け出したと思ったら、もうすぐ次のトンネルが待っている。ラジオを聴いていても途切れ続けるので、放送の中身すら分からないまま走っているということがよくある。

 現段階では、モバイル放送もギャップフィラーが設置されていない地方のトンネル内では聞こえないが、いずれはギャップフィラーの整備によって、トンネル内でも視聴できるようになる。少なくとも既存のラジオ局がトンネル内で聴けるための設備投資を行うという話は聞いていないので、いずれはモバイル放送の強みが大いにアピールされることになるはずである。

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