DVDメディアを買ってきてレコーダーに入れると番組が録画できて、再生ができる。当たり前と思われがちなことのようだが、進歩の著しいDVD関連技術の中で、その“当たり前”を維持することは想像以上の努力が要求される。
三菱化学メディアは、そんな“当たり前”を追求するメーカーだ。
「コンテンツをメディアへ記録して再生することは、“できて当たり前”と思われてしまいがちです。ですが、当社としてはその“当たり前”の確保へ力を注ぎ込んでいます」
こう語るのは三菱化学メディア 最高情報管理責任者 兼 最高コンプライアンス責任者 太村茂氏だ。
「PC向けのDVD+R DLは2.4倍速という記録速度に対応していますが、ドライブやソフトによってはその2.4倍ではなく2.5倍で書いてしまうことがあります。そのときにメディアへ要求される性能は、DVD-Rでいえば16倍速記録に相当するのです。メディアメーカーとしては、規格通り2.4倍速に対応できていればいいとも言えますが、“書けなかった”という事態が起こらないように、2.5倍速でも問題ないようなメディアの作り方をする、それがわたしたちの基本姿勢です」(太村氏)
同社は1991年に世界で初めて3.5インチMOを発売するなど、光ディスクの製造については長い歴史を持っている。このため、スタンパ・成型などの製造工程や品質管理についてかなりのノウハウが蓄積されており、そのノウハウはDVDメディアの製造にも生かされているという。
「当社のMOメディアは、規格から見ればオーバースペックともいえる作りになっています。そこで培った“余裕ある製品作り”のノウハウがDVD製造にフィードバックされています」(セールスサポート本部 セールスプロモート部 シニアマネージャー 内野健一氏)
「DVDの規格通りに製品を作ってもユーザーが満足できる品質になるとは限りません。メディア専業メーカーであるという強みを生かし、世界規模でドライブメーカーと連絡を取り合いながら、実際の利用時に満足できる製品を製造しています」(太村氏)
しかし、同社が最も得意としているのはCD-RやDVD-Rなど追記型メディアの記録膜に欠かせない「色素」だ。同社は以前から材料・化学系に強い光ディスクメーカーとして知られており、独自に開発した「アゾ色素」はいまでこそ外販されているが、CD-Rの時代には門外不出だったというほどの素材だ。
DVD-Rのような追記型メディアは上(印刷面)から「保護層」「反射層」「記録層」「保護層」という積層構造になっており、記録は「記録層」に行われる。RWやRAMのような書き換え型は記録層の上下に「誘電体層」が加わるが、基本的な構造は同じだ。
追記型DVDメディアの場合は色素(有機色素)が記録膜の材料として利用され、色素をレーザーで分解することによって記録を行う。書き換え型の場合には相変化材料が記録膜の材料として利用され、レーザーの強さで結晶状態と非結晶状態を作り出すことで、データの書き換え・消去を行う。
つまり、録画用DVD-Rに話を限定すれば、正確な録画を行うためには、照射されるレーザーに対して色素がきちんと反応することが求められる。しかし、あまりにも反応が鋭すぎれば太陽光などレーザー以外の光にも反応してしまい、「未使用のメディアなのに記録できなくなる」「記録したはずのデータが壊れてしまう」という事態の起こる可能性がある。
そのために各社は「ドライブの書き込みレーザーには敏感に反応するが、太陽光には強い」という矛盾した特性を持つ色素の開発に注力することになる。そこで同社が出した答えがアゾ色素だ。
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