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三波共用テレビ、「アンテナ問題」の難しさ(2/3 ページ)

» 2004年12月24日 12時52分 公開
[西正,ITmedia]

アンテナ問題の“もどかしさ”

 三波共用機を購入した顧客に対して、アンテナの取り替えを促すにはどうしたらいいのか?

 デジタルテレビを購入した顧客は、プラットフォーム側で把握することができる。そこで、プラットフォーム側から顧客宅に電話をかけるなどして、(アンテナを換えれば)110度CS放送が見られることを伝えることは可能だ。ただ、110度CS放送にまったく関心のない顧客に対して、何度も何度も電話をかけるようなことになれば、苦情の種をまくようなものである。

 それだけに、まずは110度CS放送の認知度を高めていくことが最優先になるだろう。テレビのCMに力を入れた効果もあり、スカパー!の名はかなり知れ渡ってきている。それでも、スカパー!が多チャンネル放送サービスであることが知られるようになっただけで、個別チャンネルの具体的な中身までは知らない人も多い。多チャンネルであるが故に、プラットフォームとしても、個別チャンネルの宣伝までは手が及ばないのは、ある意味で、当然のアイロニーと言えるかもしれない。

 まして、110度CS放送となると、そのチャンネルの放送内容自体はスカパー!とサイマルなのだが、チャンネル構成はスカパー!とイコールではない。「110度CS」というネーミングを使い続ける限り、スカパー!の宣伝効果のうちのごくわずかしか、110度CS放送には効いてこない可能性が高い。

 量販店や電気店に陳列されている三波共用機には、ちゃんと110度CS放送の名も三波の1つとして並べられているが、そもそも売れている最大のポイントは薄型であるためであって、「三波を見たい」からではない。だから、110度CS放送とはどういうものかにまで特に関心が及ばないのであろう。店員にしたところで、顧客から「110度CSとは何ですか?」と聞かれても、きちんと答えられない人がいてもおかしくはない。

 こうなると、店員に対しては、110度うんぬんの知識を持ってもらうより、有料チャンネルのラインナップをセールスしてもらう方が効果的なように思われる。せっかく三波共用機を買ったのに、110度CSが映らないことに、顧客が不満を持ってくれるぐらいでないと、アンテナ問題を解決することは難しいだろう。

 プラットフォーム側からすれば、これほど、もどかしい問題もないだろう。顧客の方から「110度CS放送が映らない」という連絡さえくれば、アンテナの交換に協力することなどは簡単だからである。サービス開始当初、CSデジタル放送自体の認知度が低かった頃から、まずはチューナーを普及させることを目的に多額のインセンティブを支払ってきた経緯がある。それに比べれば、アンテナの交換などは、手間賃を入れたところで一万円少々のコストでしかない。

 できることならば、三波共用機の購入者宅に電話をかけて、アンテナは無料で交換することをアピールしても構わないくらいであろう。だが、公取の規制もあって、むやみに無料サービスを提供するわけにはいかない。あくまでも、顧客からの連絡を待つことにして、連絡さえあれば顧客側の負担がほとんどない形で、積極的にアンテナの交換に出向くというスタンスを採らざるを得ないのである。

 三波共用機は少しずつ価格が下がっているが、まだまだ高価な買い物であることに変わりはない。そうした出費をいとわない顧客にこそ、有料放送も受け入れられやすいだけに、アンテナ問題の解決が急がれることは間違いない。チャンネルのラインナップを見れば、地上波やBSとは違った魅力が訴えられるであろうし、そのためにも映像を見てもらうことが一番のアピール手段になる。

 110度CS放送事業を軌道に乗せていくためには、アンテナ問題の解決こそが最優先課題なのだ。プラットフォーム側としても引き続き対策を練っていかざるえないだろう。

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