東京大学大学院学際情報学府制作展「iii Exhibition 2」が12月10日から12日まで本郷の東京大学内で開催された。「工学的研究分野から発せられるメディア・アートを中心とした作品」だというので、おもしろそうな気がする。11日に見てきた。
作品は全部で14あったのだけど、ちょっと全部は紹介しきれない。わたしが理解できた範囲で気に入ったもの6つを紹介しよう。
お気に入り。
立方体の黒い箱のうえに、シリコンゴムの白い柔らかいシートが乗っている。このシートを指でぎゅっと押すと、正面にあるディスプレイに押されてできた山が表示される。
ああ、触覚センサーでおしこまれた量を検出しているんだなと思った。ところがそれだけではないのだ。押し込んでさらにひねる(念を入れた指圧みたいに)と、画面の山もねじれるのだ。
こうなると単純な触覚センサーではない。どうなっているんだというので、作者のケビン・チャールズ・ヴラックさんに聞いてみた(彼は日本語を話すので助かった)。
実はこのシートの裏には縦横等間隔にドットが打ってある。それがちょっとすき間を空けて2層重なっているのだ。1層は赤いドット、もうひとつの層は青いドット。これを下からカメラで撮影して、各ドットの位置を計測。何も力が加わっていないときは、ドットは定位置にある。上から押し込まれると、そこの部分のドットがちょっと広がる。この広がり方を計測すれば、押し込まれた量が分かる。
そして、ひねりの力が加わったときには、赤いドットの層と青いドットの層の広がり方にズレが出るのだ。これから、ひねり量を求めることができるというわけ。
原理はこれだけ。あとはちょっとばかり力業。ドットの動きから「押し込まれ=ひねられ量」を計算するのには、3000×3000の行列式のコンボリューション演算をやりつづけることになるのだそうだ。そのためか、デモでは定期的に処理が停止して、アプリケーションが再起動するようなしくみになっていた。また、カメラで撮影するために、シートの裏側に距離が必要だ。立方体の箱はそのためにあったのだ。ヴラックさんは、将来は触覚センサーとして使えるものにしたいと考えているので、これらは大きな弱点になる。
でも、今回の展示だけをとってみれば、これはめちゃくちゃおもしろいインタラクティブアートだ。写真でわかったと思うのだけど、今回はこのセンサーが2台設置されていて左右の手でそれぞれを押すようになっている。画面ではそれぞれが赤と青で表示される。これもうまい。手荷物なんかそこら辺においちゃって、両手で、掌で押してみたり、親指でひねってみたり、指5本の先を全部設置させて“ぐに〜”とかもやってしまう。わたしも、ヴラックさんに笑われるくらいずっといじってたんだけど、見てると他の人だって相当いじっている。
カメラなんかを上において四角く飛び出すかななんてのもやりがち。ゴムの特性上、鋭角はあんまりきれいに取れないので、なんとなく楕円形っぽい山になるんだけど。
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