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ワンボディで“本物の5.1chサラウンド”を――ヤマハ「YSP-1」レビュー:フロントサラウンド特集(1/3 ページ)

» 2005年01月14日 08時43分 公開
[浅井研二,ITmedia]

 前回の低価格5.1chシステムに続き、今回はフロントスピーカーのみでサラウンド再生環境を提供する製品を取り上げたい。いわゆるバーチャルサラウンドだが、こうした方式は意外と古くから存在する。また、決して初心者向きというわけではない。

 リアスピーカーの設置場所がどうしても確保できないケースのほか、ピュアオーディオ製品のハイエンドスピーカーをすでに所有していて、それに見合うだけのセンターやサラウンドが入手しづらい場合にも利用される。実際、2本のスピーカーだけで(仮想とはいえ)5.1ch分の音響を提供するためには、むしろ、質が高くて表現力に優れたスピーカーが要求されるものだ。

 現在、バーチャルサウンドの方式で最もメジャーな存在は、ドルビーバーチャルスピーカーといえるだろう。ドルビーデジタルのディスクリート5.1ch音声、または、ドルビープロロジックIIで5.1chに分離されたマルチチャンネル音声をもとに、2本のスピーカーのみで仮想音場をつくりだす。従来からあったバーチャルサラウンドでは、包囲感に重点を置いたものが多かったが、ドルビーバーチャルスピーカーの場合は、まさに5.1chシステムで設置されるスピーカーと同じ位置へ、仮想的に各チャンネル成分を独立して定位させることを目指してつくられている。


 今回のレビュー特集で紹介する製品も、多くがこのドルビーバーチャルスピーカーを利用しているが、各社独自のバーチャルサラウンド技術を搭載したシステムもいくつか存在する。最初に紹介するヤマハの「デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1」もその1つだ。この製品はワンボディのシンプルな構成ながら、価格は15万7500円となかなかのもの。本体は幅1030×高さ192×113ミリ、重量は13キロと価格に見合うだけの風格はあるが、さらに凝っているのが見えざる内部だ。

photo 独自技術で5.1chサラウンド再生を実現する「デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1」。5.1chの実際の位置にはスピーカーが存在しないという意味ではバーチャルサラウンドだが、各チャンネルの音成分は独立してリスナーへ届けられるので、ヤマハではリアル5.1サラウンドとうたっている

 ボディ内部には11センチのウーファー用ユニットのほかに、防磁型4センチのコーン防磁型ユニットを40個も装備している。このスピーカーの集合体を、1つひとつ個別に時間制御(ディレイ、すなわち遅延)して、小型スピーカーから出力される多数のビーム状の音により、サラウンド再生を行う。

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 多くのバーチャルサラウンドでは、大なり小なり壁の反響音を利用するが、「YSP-1」では指向性の高いスピーカーを用いることで、その反響音をより積極的に、より緻密に制御しているわけだ。これを実現するため、英国の1Limitedと共同で「デジタル・サウンド・プロジェクター・テクノロジー」を新開発したという。

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 アンプすら組み込んでしまった1ボディの恩恵は、設置や接続の際に十分に感じられる。放熱のため、上部に5センチ以上の隙間を確保する必要はあるが、薄型テレビとともにラックに置いたり、あるいは、壁掛け金具もオプションで用意されている(重量は結構あるので、しっかり固定できる壁が必要)。ただ、残念ながら、床置きはあまり推奨されないようだ。基本的には、長方形/正方形の部屋に、四方にいずれかの壁と並行に設置する。もし、それが無理なら、部屋のコーナーに置いても設定で対応可能だ。

 以上のように設置は簡単なのだが、そのサラウンド再生の仕組み上、いくつかの条件を満たさないと、十分な音響効果は得られない点には注意が必要だ。壁からの反射を利用するため、「ビーム経路上に(反射すべき)壁がない」「壁が吸音素材」「部屋の大きさが幅3〜7メートル、奥行き3〜7メートル、高さ2〜3.5メートルに当てはまらない」「スピーカーと聴取位置の距離が2メートル未満」といったケースでは、うまく反射を確保できず、十分な効果が得られないようだ。

 さらに、「ビーム経路上に家具などの障害物」があってもまずい。当然といえば当然なのだが、これは専用リスニングルームでも持っていないかぎり、少しシビアな条件かもしれない。ただし、ある程度の障害物なら、後述のマニュアル設定でビームを調整することで、回避可能だ。

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