米Apple Computerが米証券取引委員会(SEC)に提出した四半期報告書「Form 10-Q」からは、同社の2005年会計年度第1四半期(2004年12月25日締め)のビジネスの状況を包括的に読み取れる。この最新の四半期報告書の中で特に注目すべきポイントとしては、新しい会計手続きがAppleの純利益にどのような影響を及ぼすか、またコンシューマー向けの新しいMac製品ラインがプロユースのMacラインの売上を食いつつある兆候などが挙げられる。
Appleは10-Qにおいて、米財務会計基準審議会(FASB)が2004年12月に実施した変更により、株式ベースの報酬を従来とは異なる方法で計上しなければならなくなったため、同社の純利益にも影響が及ぶことになると報告している。「FASBの新しい規則の適用については今後も検討を続けるが、経営陣はこの変更によって営業成績に実質的な影響が及ぶものと考えている」とAppleは記している。
今回の場合、新しい規則の影響で、2004年12月25日締め四半期のAppleの純利益は2億9500万ドルから2億7500万ドルへと2000万ドル減ることになる。同様に、この新しい会計手続きの影響で、前年同期のAppleの純利益も6300万ドルから3400万ドルに引き下げられることになる。
またこの報告書によれば、Appleは2004年9月25日締めの会計年度に合計で約2300万ドルの組織再編費用を費やしたほか、解雇手当として1440万ドル、資産減損分として550万ドル、リース解約の関連費用として350万ドルを計上している。Appleはさらに、同社最高経営責任者(CEO)スティーブ・ジョブズ氏に提供したGulfstreamジェット機の関連費用として、2005年と2004年の第1四半期にそれぞれ41万9000ドルと28万2000ドルを計上している。
Appleは同四半期の純利益について総括し、コンシューマー向けシステムの需要が増加しつつあることに言及している。Appleは同四半期に45万6000台のiMacと27万1000台のiBookを販売し、それぞれ6億2000万ドルと2億9700万ドルの売上高を上げている。これは、前年比でそれぞれ147%、34%の増加となる。Appleはこうした堅調な売上増の理由として、iMac G5の供給が増えたこと(前四半期にはiMac G5の供給量は抑えられていた)や、iBookの新版の投入、年末商戦期に伴う季節的な需要増の影響を挙げている。
iBookとiMac G5の好調な売れ行きは、逆にAppleのプロユース製品の不本意な結果を強調している。Power Mac G5の売上高と販売台数はそれぞれ4%と19%減少し、PowerBook G4の売上高と販売台数はそれぞれ23%と22%減少している。
Appleによれば、Power Mac G5の売れ行きが鈍っているのは、ユーザーの関心がiMac G5に向かっているせいだという。またAppleはPowerBookの売れ行き低迷については、「一部には、新型iBookへの移行のせい」と考えている。もっともAppleによれば、そうした製品ライン間の動きは「新製品の発表後にはよくあること」だという。
引き続き今四半期にもこうした傾向が続くかどうかは興味深い点と言えるだろう。今四半期には既に、PowerBookの新モデルと新しいMac miniが登場している。Mac miniはこれまでで最も低価格のMacintoshモデル。はっきりとコンシューマーにターゲットを据えた新製品となる。
Appleの教育チャネルの売上高も前年比で劇的な成長を遂げたが、この点もiMac G5とiBookの人気の高まりが理由だ。教育チャネルでの売上高と販売台数は、第1四半期にそれぞれ20%と11%増加している。また同四半期のAppleの米国教育チャネルの売上高は、第1四半期の売上高としては過去7年間で最高の数字を記録している。
同様に、Appleの直営店における売上高も堅調な伸びを示し、第1四半期の売上高は5億6100万ドルと、前年同期の2億7300万ドルよりも105%増となっている。Appleはこの売上倍増の理由として、店舗の数が73店舗から101店舗に増加したことのほか、店舗当たりの売上増を目指して全米で一斉に行なわれたキャンペーンの成果だと指摘している。この取り組みにより、店舗当たりの売上高は48%増加している。
Appleは2005年に新OS「Mac OS X v10.4」をリリースする。同OSはコードネームで「Tiger」と呼ばれ、2005年上半期のリリースが予定されている。Appleは昨年サンフランシスコで開催されたWorldwide Developer Conference(WWDC)で初めてこの新OSを披露して以来、新しい検索技術のSpotlightや新しいインタフェースのDashboard、Core Image技術など、同OSに搭載予定の各種の新技術を自慢げにアピールしている。
Appleは研究開発に多額のコストを投じる傾向にあり、10-Qでもその点は明らかだ。第1四半期の研究開発コストは、前年同期の1億1900万ドルから、1億2300万ドルに増えている。ただし、この間にはAppleの売上高も増加しているため、研究開発コストが全体に占める比率は6%から4%に下がっている。Appleによれば、こうしたコストのうち1480万ドルはTigerの開発に関連したものという。前年同期にはTigerの開発コストはゼロだった(Tigerは2004年6月に発表された)。Appleは研究開発コストの増加分の大半は、新しいスタッフの雇用に伴う費用だと説明している。
Appleの10-Q報告書の中で最も注目を集めるのは、おそらく「訴訟手続き」の項目だろう。Appleはこの項目において、係争中の訴訟や和解に至った訴訟など、同社が最近係わってきたすべての訴訟について概略している。
それによれば、Beatlesの権利を扱うレコード会社Apple Corpsとの訴訟をめぐり、同社の弁護活動が続いている。Apple Corpsは2003年7月、Apple ComputerがiTunes Music Storeを発表したことは1991年の両社の取決に違反しているとして、Apple Computerを訴えた。Appleは報告書において、Apple Corpsが2004年11月に「Amended Bill of Particulars(詳細の修正案)」を提出したのを受けて、Appleは同年12月23日に「弁護人を立てた」と説明している。
またCagney対Apple Computerと呼ばれる、2004年1月に起こされた集団訴訟については、近く判決が下る予定だ。この訴訟でAppleは、メールインリベートに関連した取引でカリフォルニア州の物品販売税を不正に集めたとされている。またJPEG画像圧縮技術の特許をめぐるCompression Labsとの訴訟も続いているが、この訴訟の審理が始まるのは2005年10月以降と見られている。
さらに10-Qによれば、Elite ComputersやMacadamなど再販業者5社との訴訟も続いていると記している。「この再販業者のうちの1社Macadamについては、Appleの再販業者の認可を無効にした。Macadamは再販業者としての再認可を求めて、裁判所に一時命令を申請している」とAppleは説明している。Macadamオーナーのトム・サントス氏は今週、顧客宛ての公開書簡で、事業を閉鎖する決断を明らかにした。その理由について、同氏は一部には「当社のナンバーワンサプライヤーであるApple Computerの一貫したマナー違反のせいだ」と説明している。
最後になるが、AppleはSlattery対Apple Computer訴訟をめぐり2月に返答を提出するとしている。この訴訟は、Appleが「市場における独占的権力」を利用して、iTunes Music StoreユーザーにiPodを買わせ、iPodユーザーにiTunes Music Storeの利用を強要したとして起こされた集団訴訟だ。
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