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次世代光ディスクは“10年”の視野で取り組む――松下電器のスタンス連載:次世代DVDへの飛躍(2/4 ページ)

» 2005年02月13日 11時21分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 たとえば昨年、松下電器はDIGAシリーズの最上位モデルとしてBDレコーダーを発売した。これも放送のHD化が進む中、オリンピック放送という多くのユーザーが興味を注ぐコンテンツをHDのまま録画したいというニーズに応えるものという位置付けである。だからこそ、記録型DVDをサポートし、あくまでも“DIGAの延長線上にある録画機”というスタイルにこだわり、BD市場立ち上げといった戦略的意味合いを薄めようとした。

photo 松下電器産業は、昨年6月30日にBlu-ray Disc(BD)の2層記録に対応したBD/DVDレコーダー“DIGA”「DMR-E700BD」を発表した

 「松下電器はやり始めると結構しつこいんです。ゆっくりと市場に浸透させ、そのうち普及してから、その上でコンテンツビジネスが行えるようになればいいというスタンス。ビジネス的なディールを行って、短期的に映画スタジオの支持を得るといったやり方をしても仕方がない」(小塚氏)。

 しかし、「DMR-E700BD」では、将来的にBD-ROMのパッケージコンテンツが出ても再生できないではないか? との意見もあるだろう。すると小塚氏は「だからこそ、僕らは急いではいない。BD-ROMのパッケージ化は2006年まで不可能で、それは映画スタジオもわかっているハズ。なのに仲間集めや短期ディールが繰り返される状況は危惧している」と話した。

 「放送がどんどんHDになっていき、受像器もHD化が進む。そんな中で、お金を払って購入するコンテンツがHDになっていくのは必然的なものですよ。だからゆっくりと取り組むのがいいんです」(岡村氏)。

 BDに対する強いモチベーションは、戦略の中心である“映像技術のHD化”から派生して存在する。だが、取り組む姿勢は実に松下らしく、落ち着いているといったところか。

自社技術を関連企業に供与しつつ基盤を固める

 ここ数カ月の間に、松下電器は光ディスク関連で3つの提携を発表した。

 まず、オリジン電気へのBD複製技術の供与がある。松下電器はBDの0.1ミリカバー層を生成する手法として、紫外線硬化樹脂を遠心力で拡げて被膜を作るスピンコート法による技術を開発してきた。スピンコート法は、均質なディスクを作るのが難しい技術だが、1層記録のROMなら、現時点でも高い歩留まりを実現しているという。歩留まり向上のメドさえ立てば、製法がシンプルなため製造ライン全体の規模を抑えることができる。もちろん、スピンコート法による2層ディスク複製技術も開発中だ。

 同時にBDFでは、3月の会合でROM規格に限ってメディアの物理マージンを拡大する方向で調整しているという。たとえば従来のBDは、厚み誤差の許容幅が3ミクロン以下だったが、これは大幅に緩和される。こうした規格の緩和により、BD-ROMの製造難度は大きく下がるという。松下電器は、物理マージンの拡大により、スピンコート法による2層BD-ROM複製にある程度の目処がつくと話している。

 このことを証明するため、松下電器はハリウッドにスピンコート法によるBD-ROM複製ラインを構築し、実際に安価にBD-ROMが生産可能であることを示そうとしている。その成果は追って情報も出てくることになるだろう。松下電器自身は、既に光ディスク複製装置の事業を行っていないが、前述のオリジン電気に研究開発成果を順次提供する。

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