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次世代光ディスクは“10年”の視野で取り組む――松下電器のスタンス連載:次世代DVDへの飛躍(4/4 ページ)

» 2005年02月13日 11時21分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 光ディスクの取材を続けて強く感じたことだが、メディア側の制限が強ければ強いほど、エンジニアの“腕”が画質に影響する。DVDの場合、メインコンテンツは4〜4.5Mbps程度でエンコードされることが多いが、この程度のビットレートだと、圧縮時、各ツールのパラメータ最適化次第で、かなりの高画質化を行えるという。末次氏は「パラメータ固定のフルオート圧縮では満足できる画質にはならないが、良いエンコーダとエンジニアのセンスによって、商用コンテンツに足る画質を得られるという点で、DVDはSD映像用ディスクとして実に絶妙の容量だった。だからこそ、DVCCは画質という切り口で他のポスプロ会社と張り合えた」と振り返る。

 松下電器は昨年、そのDVCCをコア事業ではないとして他社に売却し、末次氏はPHL所長へと就任した。だが、もしDVCCが続いていたとしたら、「HD DVDが主流になった方が、ポスプロとしてのDVCCにとってはビジネスがやりやすかっただろう。H.264の方が圧縮ツールが多く、高画質を得るためのノウハウやツール開発に高い技術力が必要になる。一方、24MbpsのMPEG2が存分に使えるBD-ROMでは、誰が圧縮を担当しても、そこそこ高画質になってしまう。MPEG2のノウハウは十分に蓄積されている上、ビットレートが24Mbpsならばアラは出にくい」(末次氏)。

 しかし、現在はBDを推進する立場にいる。「映像圧縮の技術者が腕を競う時代じゃないのかもしれない。ポスプロビジネスにおける他社との差別化という観点では、低ビットレートの方がビジネスチャンスは大きいが、それは他方、低ビットレートではパッケージコンテンツ製作のコストが高くなることを意味する。DVCCを離れ、パッケージコンテンツビジネスを見ると、誰もが簡単に高画質を得られる高ビットレートのMPEG2が使えるBDの良さがわかる」(末次氏)。

 さらに映画ビジネスからも離れ、次世代光ディスク全体を俯瞰すると、「光ディスクの用途は映画の販売だけではない。松下電器はBDというメディアを使って、HD映像を切り口に“BDワールド”を作ろうとしている。その中で映画ビジネスはごく一部。もちろん、われわれにとって大手映画スタジオとの関係は大切なものだ。しかしそれだけに拘っていては、目標を失う」と、末次氏は考えるようになったと話す。それ故か、普及を必要以上に急ぐそぶりは全く見えない。

 おそらく、次世代光ディスクの奔流がHD DVD、BDのどちらになったとしても、DVDとの併売は長く続くことになるだろう。昨年の終わり近くになって、松下電器がHD DVD支持へと心変わりするとの噂がハリウッドを駆け巡ったというが、普及が何年も先になることを見越して腰の据わった動きをする松下電器の行動を見る限り、同社がBDからHD DVDへと鞍替えすることはあり得ないようだ。

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