NTTデータは2月16日、一般家庭PCのCPUやメモリなどの資源をインターネットで接続・統合し仮想的なスーパーコンピュータとして利用して、大学や企業に演算能力を提供する分散コンピューティングプロジェクト「cell computing」において、新たな大規模研究プロジェクトを開始したと発表した。
この新プロジェクト「cell computing βirth(セルコンピューティング バース)」では当初、慶應義塾大学医学部分子生物教室 清水信義教授の「ゲノムスーパーパワーを見つけよう!/自然免疫系遺伝子領域解明プロジェクト」と、東亞合成名古屋研究機構新製品開発研究所の「ゲノムのパズルを解こう!/ヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクト」の2つのプロジェクトを実施する。
NTTデータは2002年12月、日本初の大規模グリッドコンピューティングとして、日本IBM、インテル、NTT東日本、マイクロソフト、米United Devicesと共同でcell computingの実験を4カ月間実施し、大きな成果を得たとしている。
前回の実験では分散コンピューティングの基盤として専用のミドルウェアを開発したが、cell computing βirthではカリフォルニア大学バークレー校がCETI@home向けに開発したオープンソースの汎用分散コンピューティングソフト「BOINC」を利用する。
今回実施する自然免疫系遺伝子領域解明プロジェクトは、さまざまな生物が進化の過程で獲得した抵抗力、自然免疫系抗菌性ペプチドを含むゲノムDNA領域を解析して、生物種を越えて自然免疫系遺伝子領域に共通する特性を解明することで、今後ゲノムDNA配列が判明する生物種の自然免疫系遺伝子領域の予測を可能にするというもの。前回並みの1万2000台のPCが参加したとすると、4月ぐらいまでには結果が得られると予測する。
また、ヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクトは、24本あるヒト染色体はもともと1本の巨大な染色体だったのではないかという仮説に基づき、個々の染色体を超える超長周期の法則性を見つけ出そうとするもの。この計算は染色体24本の順列組み合わせ(24!)を作成して、それぞれの順列データごとに高速フーリエ変換を行うというもので、6×10の23乗という膨大な計算量となり、cell computing βirthの続く限り続けるという。
NTTデータの鑓水訟氏cell computingプロジェクトリーダは、「我々はPC資源を提供しようという個人の意志を集めて利用できる形に変換し、それを必要とされる所へ橋渡しする役目」演算資源のやりとりをする市場を提供するようイメージで事業化を目指すという。2年前は実験ということで4カ月で終了したが、今回は事業化を念頭に、特に終了期限を設けずに続ける計画。現段階では明らかにできないが、いくつかのプロジェクトが開始に向けて進んでおり、今後改めて発表の予定としている。
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