乾電池の広告を見ると「一層長持ち」「クラス最強!」などの文字が並んでおり、実際に使用する側としてはどれを選べばよいか分かりにくい。
こうしたアピールが乱立する原因のひとつには、各社各製品で測定条件が異ることが挙げられる。JIS規格にはアルカリ乾電池の性能基準が用意されているが、残念ながら現在のデジカメのような大電流を想定したテストはない。また、「従来製品より長持ち」といっても、店頭に並んでいる各社の色々なブランドの中から1つを選ぶ目安にはならない。
単3型を2本使うコンパクトデジカメの場合、最新製品では100枚以上撮影できることをうたう製品も珍しくない。しかし、「100枚以上撮影できる」といっても、その測定条件が日常的なデジカメの利用シーンに沿ったものかどうかといえばイエスとはいえない。
ごく一般的な使い方を想定するならば、100枚を一気に撮影するということはまずあり得ないし、カメラ映像機器工業会(CIPA)の「電池寿命測定法(CIPA DC-02-2003)」にしても、休憩時間を挟むという特徴こそあるものの、日常的なデジカメの利用シーンを完全にシミュレートしたといえないだろう。
※CIPA DC-02-2003は、「液晶モニターは常時オン、30秒ごとに光学ズームを駆動し、1枚撮影、2回に1回はフラッシュを発光」「5分間撮影後に電源をオフにし、約1時間休止」という条件で測定を行う。
実際には、少し撮影してから時間をおき、しばらくしてから撮影する。あるいは週末ごとに少しずつ撮影していくという感じだろう。撮影した画像を、デジカメの液晶を使ってその場のみんなで楽しむということもあるだろう。
ここでは、とある週末の1日におけるデジカメの利用シチュエーションを想定し、その繰り返しにどれだけ耐えられるか? という測定を行った。シチュエーションはこんな感じだ。
昼間は街に外出、気になるものはメモがわりにカメラで撮影
デジカメはメモリと乾電池の残量がある限り、何度でも撮影ができる。昼間のシチュエーションとして、ウィンドウショッピング時のメモがわりに使うことを想定し、小まめに電源をON/OFFして撮影するというテストを行う。
具体的なテスト内容としては「1分に1回のペースで電源オン、テレ端にズームし、フラッシュなしで撮影したのち、電源オンから25秒後に電源を切る。この条件で1時間に10枚撮影して、残りの50分は休む。これを3回繰り返す」とした。つまり昼間は30枚の撮影となる。
夜はデートor飲み会、会話を楽しみながら撮影&再生
デートや友達と飲みながらデジカメを使う場合、小まめに電源を切って乾電池の節約に努めるということは考えにくいので、電源は入れっぱなしと想定し、また夜なので常時フラッシュ撮影を行うことにした。また、撮影した画像を友達に見せることも想定した。
具体的なテスト内容は「電源を入れてから、1分に1枚のペースで強制フラッシュモードで撮影し、1枚ごとにテレ端とワイド端を移動して合計20枚撮影。その後5分間の休憩をはさんで、5秒に1枚のスライドショー再生を15分間行う」とした。夜の部は20枚の撮影と15分のスライドショー再生となる。
このシチュエーションの場合、現在のデジカメ撮影枚数の目安となっているCIPAの測定条件(CIPA DC-02-2003)と比較すると撮影間隔は長く、電源入切の頻度も多い。だが、フラッシュの使用頻度は少なめでCIPAテストにはない再生(スライドショー再生)を組み込んでみた。なお、昼の部と夜の部は3〜6時間の間を置いている。
乾電池には標準的なアルカリ乾電池のほか、微粒亜鉛粒子を採用し超重負荷性能を向上させたアルカリ電池であるイプシアルファ、新世代乾電池をうたうニッケル系乾電池を用意し、デジカメにはニッケル系乾電池にも正式対応した機種を使用した。このデジカメはアルカリ乾電池でCIPA条件で公称150枚、ニッケル系乾電池で公称235枚の撮影ができるという。アルカリ乾電池とニッケル系乾電池に最適化されたモードが用意されているので、テストはそれぞれのモードに切り替えて行っている。
使用したデジカメは電池残量を残量十分/残量減/残量警告/電池切れという4段階で表示するタイプ。電源オン直後は警告等が出ない場合があるため、チェックは撮影終了後に行った。撮影の公称値が235枚ということなのでテストは5日間の予定で行ったが、現実には4日間で終了した。
●1日目初日ゆえにどの製品も残量減などの警告なしに終了した。
●2日目アルカリ乾電池が昼の部27枚目で残量減の表示を出した。夜の部では3枚目で残量減を表示したのち、再生テストの後も残量減が表示された。イプシアルファは夜の部の5枚目で残量減を表示したが残量警告までにはいたらず、そのまま終了。ニッケル系乾電池は問題なく終了した。
●3日目アルカリ乾電池は昼の部の2枚目からと、10枚の中休み後に残量減を表示した。残量減が頻繁に表示され、そろそろ切れる感じがする。夜の部も1枚目で残量減、2枚目で残量警告を表示し、3枚目でついに電池切れとなった。合計131枚の撮影が行えた。
イプシアルファは昼の部は警告なし。しばらく時間をおいたせいか、復活した感じだ。夜の部の3枚目で残量減が表示されたがそのままテスト終了。ニッケル系乾電池は夜の部9枚目で残量減が表示されたがそのままテストは完了した。明日決着だろうか?
●4日目イプシアルファは昼の部4枚目、11枚目、21枚目にそれぞれ残量減が表示されたが、昼の部は完了して粘りを見せた。夜の部は1枚目で残量減、3枚目で残量警告、そして5枚目で電池切れとなった。合計185枚の撮影が行えた。
ニッケル系乾電池は昼の部5枚目、11枚目、21枚目にそれぞれ残量減が表示されたものの、なんとか完了した。しかし、夜の部は残量減が表示された瞬間、残量警告の表示を出すことなくいきなり電池切れとなってしまった。合計181枚の撮影が行えた。
イプシアルファとニッケル系乾電池を比べると、電池の長持ちという面では双方とも甲乙つけがたい性能を発揮したが、ニッケル系乾電池は残量減の表示が出てから実際に使えなくなるまでの時間が短かった。
残量警告が短時間しか表示されないのでは、「まだ大丈夫」と思っていても、デジカメのスイッチを入れてみたらもう使えなくなっていた、という事態を引き起こしかねない。ニッケル系乾電池の特性といってしまえばそこまでだが、筆者としては「たくさん撮れる」と同じぐらいに「あと何枚撮れるか」を正確に把握しておきたいと思う。
このテストで使用したデジカメはアルカリはもちろん、ニッケル系乾電池にも対応する消費電力が比較的少ない製品だったが、イプシアルファを使用した場合には、従来アルカリ乾電池比で40%以上、加えてニッケル系乾電池よりも多くの撮影をこなすことができた。
デジカメの取扱説明書には「対応乾電池」の欄があり、正式に対応している乾電池の種類が記載されている。単3型乾電池を利用できるデジカメの場合、アルカリ乾電池ならばまず間違いなく利用できるので、純然たるアルカリ乾電池であるイプシアルファならば、どんなデジカメでも安心して利用できる。
多くの撮影が可能であるという「スタミナ」と、どんなデジカメでも問題なく利用できる「安心」を兼ね備えたイプシアルファは、まさにデジカメでの利用にも適した乾電池といえるだろう。
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