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最強”を狙うアルカリ乾電池――マクセル「イプシアルファ」第1回 “知っていると得をする?! アルカリ乾電池のアレコレ

» 2005年04月01日 00時00分 公開
[ITmedia]

 いわゆる乾電池と言う場合、かつて主流はマンガン乾電池だった。マンガン乾電池とは二酸化マンガンと亜鉛の反応で電気を発生させる乾電池で、現在の主流となっているアルカリ乾電池も同じく二酸化マンガンと亜鉛を反応させる。マンガン乾電池とアルカリ乾電池の大きな違いは、その構造と亜鉛と二酸化マンガンをつなぐ電解液にある。

photo 一般的なアルカリ乾電池の仕組み。マンガン乾電池とアルカリ乾電池の大きな違いは電解液と構造にある

 マンガン乾電池は電解液に弱酸性の塩化アンモニウムや塩化亜鉛を利用するが、アルカリ乾電池は強アルカリ性の水酸化カリウムを利用する。また、マンガン乾電池は亜鉛を内装缶として使用するが、アルカリ乾電池は表面積が広く反応性の高い亜鉛粉末を使用している。この違いによってアルカリ乾電池は内部抵抗が低く、大電流を長く保持できるため、乾電池にパワーを求める用途が増えた、現在での主流の乾電池となったのだ。

 低電流用途ならばマンガン乾電池もまだ使われており、時計やラジオなどでは十分な能力を発揮する。しかし、低消費電力に見える機器でも多機能リモコンなどは信号発信時に意外な電力を消費する。こうした製品にはアルカリ乾電池を使ったほうがいいだろう。

デジカメ利用でさらに求められるパワー

 そのアルカリ乾電池は1960年ごろアメリカで商品化され、日本ではマクセルが1964年に国内で初めて量産を開始している。日本でも40年間の歴史がある。

 工業製品の信頼の証となっているのがJIS(日本工業規格)だが、アルカリ乾電池はJIS-C8511として定められており、JIS認定工場の製造するアルカリ乾電池には認定番号と共にJISマークがついている。最近安価なアルカリ乾電池が販売されているが、これらはJIS認定工場で作っていないらしくJISマークがついていない(ただし、認定工場で作ってもJISマークをつけない場合もある)。

 JISマークがついていない=低品質というわけではないが、JISで定められているのは一定基準での乾電池のパワーだけでなく、過放電耐漏液(機器に放置しても電解液が漏れない)、高温耐漏液(高温環境下に放置しても電解液が漏れない)、安全性(逆装填や外部ショート)も確保されており、JISマーク付のほうが安心感のある製品といえるだろう。

 近年、乾電池を使う製品もパワーを必要とするものが多い。その代表例がデジカメだろう。以前には乾電池を利用すると、50枚も撮影できないという機種があったほどだ。デジカメ自体の省電力化も進んでいるが、やはりデジカメで使う乾電池にはパワーが求められる。

 アルカリ乾電池で一番のパワーを誇るのがマクセルのイプシアルファだ。イプシアルファは、JIS規格で定められている「アルカリ乾電池」でありながらも、既存製品と比較して大幅なパワーアップが行われたアルカリ乾電池だ。れっきとした「アルカリ乾電池」なので、乾電池が利用できるすべての機器でそのまま安心して利用できる。2005年4月には去年のデビュー時からさらに20%のパワーアップを果した新バージョンが登場する。

乾電池とうまく付き合うノウハウ

 乾電池はその特性を理解すれば、より“おいしく”使うことができる。ここでは一定条件下における放電実験のデータ(2本直列で約500ミリアンペアを連続放電。一般的な乾電池の利用シーンよりは少々負担がかかっているといえる)をもとに、放電の特性とそこから得られるノウハウを紹介しよう。

 まずは、マンガン乾電池とアルカリ乾電池の違いを確認してみよう。500ミリアンペアの連続放電という条件は、マンガン乾電池には負担が重いものだ。同一ブランドのマンガン乾電池とアルカリ乾電池で放電してみたところ、利用可能時間はマンガン乾電池が42分に対し、アルカリ乾電池は165分と約4倍の差があった。パワーが必要な用途にはアルカリ乾電池というのがよくわかる実験結果となった。

 アルカリ乾電池もマンガン乾電池も放電開始前は1.5ボルト以上の電圧がある。ただし、使用時は電圧が落ちるので「公称1.5V」としているのだ。使っているにつれて電圧が低下し、これが一定電圧以下に低下すると「乾電池切れ」となる。

photo 同一の放電条件を設定してみたところ、マンガン乾電池とアルカリ乾電池ではアルカリ乾電池の方が“長持ち”であることが確認できた

電池切れと思っても、まだ使える場合がある

 乾電池は最初のうちは大電流でも使えるが、弱ってくると放電性能が悪くなる。つまり、大電流で使えなくなった乾電池は大電流放電は無理でも、小電流放電ならばまだ使えるケースが多い。

乾電池は冷やしたらダメ

 乾電池は化学反応で電気を生み出す。そして、大抵の化学反応は温度が高いと活発になる。このため、乾電池は温かいほうが性能を発揮できる。逆に冷たいと性能が発揮できない。そこで、室温状態での乾電池と冷蔵庫に入れて冷やした保冷剤で包んだ乾電池、それに使い捨てカイロで包んだ乾電池で放電テストを行ってみた。結果は一目瞭然で、冷やした状態では1/3以下の時間でテストが終了してしまった。

温度による放電時間の差(単位:分)
室 温 低 温 高 温
165 47 210
photo 放電時の温度を変えて実験

 ※常温(2)は、保冷剤を利用して強制的に冷却した乾電池が乾電池切れの状態となった後、一晩おいて再度テストしたもの。常温(3)は室温で乾電池切れの状態となった後、一晩おいて再度テストしたものだ。

 スキー場などで撮影する場合は、カメラと乾電池を別々にして乾電池だけ内ポケットにいれて保温に努めておくとより長く撮影できる。また、雪上で使っていてダメになったと思った乾電池でも、アフタースキーではまだ使える場合があることも覚えておこう。

 ただし、使い捨てカイロで乾電池を包んだのはテストのためで、乾電池を加熱するのは液漏れ、破裂、破損の原因となりキケンだ。暖める場合でも体温程度にしてほしい。

使用推奨期限切れ=ダメではない

 1993年には、乾電池へ使用推奨期限表示を行うようJISが改定された。使用推奨期限とは、JIS規格(C8511)に定められた性能を保証できる保管期限のこと。使用推奨期限を過ぎた乾電池を使うこともできるが、本来の性能を発揮することはできない。乾電池は未使用であっても、時間と共に徐々に性能が落ちていくからだ。

 単3型と単4型の場合、ほとんどのメーカーの乾電池は「製造から2年」が使用推奨期限とされている。防災用ライトに使うことを考えて非常袋などに入れておくならば、この使用推奨期限をひとつの目安にするといいだろう。購入時には使用推奨期限の確認を忘れないようにしよう。

photo 新しいイプシアルファには乾電池本体に推奨期限が大きく表示されているほか、ブリスターパッケージの背面には乾電池本体に印刷されている推奨期限を見ることのできる“確認窓”が設けられており、安心して購入できる

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