東京ビックサイトで開催されているフォトイメージング関連の総合展示会「フォトイメージングエキスポ 2005(PIE2005)」。フラッシュなど周辺機器も多く見られるなか、(厳密な意味では周辺機器といえないかもしれないが)、デジカメには欠かせない「電気」を供給する乾電池(円筒形電池)の展示も見受けられる。
デジカメが日常の品物になるにつれ、ランニングコストが低く抑えられることもあり専用充電池を利用する機種が多くなっている。しかし、どこでも入手できるという利便性は充電池にはないものであり、ファミリー層向けデジカメを中心に乾電池への需要は根強い。デジカメは乾電池には“酷な”機器のひとつだが、ここ数年はデジカメでの使用にフォーカスした乾電池が登場するようになってきた。
先駆けになったのは2001年に東芝が発売した「GigaEnergy」だといえるが、その後にも、松下電器産業の「オキシライド」、日立マクセルの「イプシアルファ」などが登場している。PIE2005の会場でも、松下電器産業や日立マクセルが自社ブースにて製品の紹介を行っていた。PIEの会場から垣間見える乾電池の最新動向を紹介したい。
オキシライドは正極素材としてオキシ水酸化ニッケル、および新開発の黒鉛と二酸化マンガンを採用しており、同社では「アルカリ乾電池より約1.5倍パワフル&長もち」とアピールする乾電池だ。
オキシライドはその特性上、高い電圧を長時間に渡って保持するためにデジカメなどの高負荷がかかる製品では約2倍の寿命を実現するというが、「アルカリ乾電池より」とアピールしているように、この電池は「アルカリ乾電池」ではない。電圧こそは1.5ボルトだが、初期電圧(開封時の電圧)は1.7ボルトであり、「オキシライド対応」を明記していない機器に使用するとトラブルを招く可能性がある。
同社でもこうした状況は把握しており、「豆球タイプの懐中電灯、ヘッドランプ等には 使用しないでください」とアナウンスしているほか、同社製品のオキシライド対応を進めている。「(同社の)現行デジカメは完全に対応しており、他のデジカメメーカーについてもオキシライド対応への働きかけを進めている」(同社)
各社に対応を働きかけるということ自体、すでに汎用性のある乾電池という定義から外れていることを意味するが、それすらも同社の狙いだという。
「オキシライドは新しいジャンルの製品といえるかもしれません。マンガンからアルカリへのシフトが起こったように、アルカリからオキシライドという流れを作り出したいと考えています」(同社)。汎用性をある程度切り捨ててまで、「ポストアルカリ」としてオキシライドの普及を促進したい考えだ。
一方、あくまでも「アルカリ乾電池」として性能向上を狙うのが日立マクセルのイプシアルファだ。
イプシアルファは正極の作用物質に反応性の高いイプシロン系材料を多く含んだ二酸化マンガンを使用しているほか、電解液の最適化や内部接触抵抗を低減した正極缶の採用などによって性能向上を狙ったアルカリ乾電池。4月から投入される新バージョンでは、負極材に使われている亜鉛粒子を200ミクロン以下の微細粒子に限定し、粒子数の増大と反応面積を拡大することによって発電効率を上昇させた。
イプシアルファも「従来品(アルカリエース)と比べて2倍のデジカメ撮影枚数」(同社)という高性能をアピールするが、「オキシライド対応のカメラでオキシライドと撮影枚数比較をすれば同程度、あるいは下回るかもしれません」とは同社でも認めている。しかし、イプシアルファはあくまでも「アルカリ乾電池」であり、“乾電池”としての汎用性を重視した上で性能向上を狙った製品だと同社では主張する。
「あくまでも“アルカリ”としての進化を狙った製品です。既存のアルカリ電池が使用できるすべての機器でトラブルなく利用できます。“乾電池”の持つ汎用性を大切にしたいと思っています」(同社)
松下電器はオキシライドで「ポストアルカリ」という提案を行っている。この提案は非常にドラスティックなもので、これまでの乾電池が備えている汎用性を一部犠牲にしながらも、“新しいジャンル”の製品として市場へ投入するというものだ。この考えに対し、日立マクセルではどう考えているのか。
「これまでにも“乾電池の形はしているけれど、厳密にはJIS規格に沿った製品ではない乾電池”がいくつか発売されていますが、商業的な成功は収めていません。それに、こうした製品はアルカリに比べて、保存性や単価で不利な点も見受けられます。既存の“乾電池”で動くことを前提とした製品が多い現状を見る限り、アルカリの改良を進めていくつもりです」
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