ITmedia NEWS >

「iTMSが早く登場すればいい」――Moraプロデューサーが語る音楽配信への期待(前編)インタビュー(2/2 ページ)

» 2005年04月13日 20時03分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
前のページへ 1|2       

“1曲すべて○○円”のストアは実現するか

 現在日本で行われている音楽配信サービスでは価格設定はもちろん、ポータブルプレーヤーへの転送回数制限やCD焼き込みなどについても、楽曲1曲1曲で扱いがそれぞれ異なる。それが「音楽配信=面倒でよく分からない」という意見につながっていることは否定できない。

 iTMSが日本でもすべての曲に対して「1曲○○円、転送無制限、CD焼き込み10回」などといった統一のルールをひっさげて登場した場合、MoraあるいはMusic Dropでもそうした統一ルールが適用される可能性はあるのか。

photo 購入できる楽曲のルールがすべて統一されているiTMS

 「楽曲の扱いについては提供するレーベル側が決めることなのですが……。我々としては1曲99セントというような低価格戦略が良いとは考えいません。価格と品揃え、どちらを優先するかと問われれば品揃えの充実です。価格については売り手のレーベル側と買い手との間で自然に調整がつくものと考えています。転送制限やCD焼き込みルールについても、CD焼き込みが可能になったからその楽曲の売り上げが伸びたという話も聞きません。(統一のルールとして)導入されるべきかも分からないというのが正直なところですね」

 iTMSが価格も含めた統一ルールを導入できたのには実は訳がある。アメリカで楽曲の違法コピーが大きな問題になっていた頃、レーベル側は自社によるコントロールを半ばあきらめる形でアップルへ安価かつ、ゆるいDRMで曲を販売できるライセンスを与えたのだ。同社はこうして得た権利にiPodという魅力的なハードウェアを組み合わせることでアピールをはかり、結果として2003年5月の開始から1週間で100万曲を販売(開始16日で200万曲を販売)という成功を収めることになる。

 日本では早くから違法コピーを警戒し、権利保護を施した形での音楽配信サービスが模索された。1999年〜2000年頃にはさまざまな権利保護システムを導入したサービスが開始されたが、1曲300〜350円程度という設定が多かったうえ、購入したPCでしか聞けないなどの問題があり、定着できたとは言い難たかった。

 「(日本の音楽配信サービスが)権利保護を念頭に置いたサービスを早くから模索してきたことについて、異論反論があることは理解しています。しかし、MoraやMusic Dropといったサービスを利用してくれているユーザーが増えているというのも現実です。アメリカ式ともいえる、統一ルールの適用が正しいとは一概にいえないと思いますね。価格についても、ヨーロッパのiTMSの販売価格(0.79ユーロ)を米ドル換算すれば99セント以上になりますし、価格はその国に見合った値付けになるべきではないでしょうか」

 日本とアメリカでは音楽配信サービスがたどってきた経緯が異なるため、米国のiTMSのような統一ルールの導入は難しいのではないか、というのが赤坂氏の見解だ。

 「我々は音楽のデジタル流通を専門に手がける企業ですから、iPodも同時に販売するアップルや、その他のサービスへユーザーを誘導できる大手ポータルとはビジネスの規模も性質も異なります。まずは、ユーザーに使いやすいシステム、幅広い楽曲ラインナップを準備しながら、楽曲の提供者へも利益を還元するライフサイクルを作り出すことが目標ですね」


 インタビューの後編は4月14日に掲載する予定。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.