先週、突然浮上したかのように見えた「次世代DVD規格の統一交渉」。しかし、実際には断続的に統一に向けての可能性を探ってきた動きが表面化しただけのようだ。先週の時点で、何らかの具体的な動きは両社にはなかった。
ソニー、東芝ともに規格統一に向けての努力を明言はしているものの、現時点では製品化に向けての基本的なスケジュールに変更がない事も強調している。ただし報道によって規格統一への世論の高まりをきっかけに、硬直していた交渉に流れが生まれる可能性はあるだろう。
では、どのような方向で規格統一が検討されているのか。物理構造が異なり、相容れぬ部分の多いHD DVDとBlu-ray Disc(BD)をどのようにまとめようとしているのかを探ってみた。
次世代光ディスク規格統一に向けての話し合いは、東芝とソニーで行われているように報道されているが、実際にはここに松下電器産業が加わり、3社での話し合いが行われているという。ただし、一部報道に出ているような0.6ミリカバー層と0.1ミリカバー層の折衷案ではなく、あくまでも0.1ミリカバー層が基本線になっているようだ。
BD陣営では松下が2層50Gバイト対応の録画機をすでに発売していることもあり、録画用ディスクで2層50Gバイトを下回る方向での決着はあり得ないというのが、BDを支持するベンダーの一致した意見のようだ。
たとえば0.3ミリカバー層といった構造にした場合、容量はBDよりも小さくなり、ディスク製造コストの面でのメリットも少ない中途半端なメディアになってしまう。仮にHD DVDと同じ0.6ミリカバー層となると2層50Gバイトは絶望的になる。すでに商品化されているBDよりも少ない容量となってしまう統一規格での合意は、まずないと考えていいだろう。
そこで提案されているのが、0.1ミリカバー層やウォブルグルーブ記録といった特徴はそのままにより大容量を実現できるよう東芝の持つPRMLなどの信号処理技術を組み合わせるなどのパターンが提案されているようだ。0.1ミリカバー層の構造が採用されれば、既存のBD-REディスクとの互換性維持も可能になる。
次世代光ディスク規格の統一に向けて、BD陣営は東芝が加わった場合に必須特許のパテント収入配分を大幅に見直す事を前提に話を進めていると思われる。
BD規格は“トップランナー”方式で規格に採用する技術を決定しており、より優れた技術があるならば、既存の類似する技術でカバーできる範囲内でもより良い技術を採用するというポリシーで作られてきた。規格統一交渉の前面に出ているのはソニー・松下だが、その背後には多くの家電・IT企業がある。
言い換えれば東芝が持つ技術の中に、BD-ROMで使われようとしている技術に置き換え、より良い規格へとなる要素があるなら、BD+αの統一規格になった時、東芝にも技術的に中核を担う企業として参加できるのだ。
もし早期の規格統一が可能になれば、市場拡大の可能性や普及速度が速まり、企業収益の面でも大きなメリットがある。ここで物別れのまま進むよりも、得られる利益をシェアして市場拡大と消費者利益の確保に専念する方が良いとの判断がBD側にはある。
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