ウォークマンの誕生以来、ヘッドフォンで音楽を聴くというスタイルは一般的となった。もちろん、ウォークマン以前にもポータブル音響機器は存在したが、それは一部愛好家の間やビジネスシーンで使われていたにすぎない。さらに、ポータブルCDプレーヤーが登場したときには、質のいいヘッドフォンとの組み合わせなら、下手なコンポを凌駕する音楽体験が得られるとも評された。
いまでは、ポータブルプレーヤーの主流はHDDタイプへと移り、多くの人が外出先で音楽を楽しんでいる。そして、そのほとんどが移動中の利用といえるだろう。つまり、通勤など、電車を中心とする交通機関に乗っている時間に聴くというわけだ。
そうした際に問題となるのが周りの環境音。特に地下鉄の走行音や、航空機のエンジン音は相当なものである。これを解消するために、音を最大限まで上げて、逆に周囲に騒音を撒き散らしている輩もいるが、「みっともない」「耳に悪そう」というだけでなく、「そもそも音が悪くなる」と思う。あんな割れた音で、好きな音楽を聴く必要があるのだろうか、と。
大音量で打ち負かすのではなく、耳へ周囲の音が到達するのをきちんと防げば、適度な音量で音楽を楽しめる。これを実現するためには、いくつかの方法がある。1つは、耳栓のようなカナル型というヘッドフォンで遮音性を確保する手段(SHUREの製品が有名)。そして、もう1つは、ノイズキャンセリングと呼ばれる機能を持つヘッドフォンの利用だ。
ノイズキャンセリングは、電子的な処理で周囲の音を「消す」もので、ヘッドフォンに小型マイクが内蔵されている。このマイクから拾った環境音に対して逆位相となる音を、音楽に重ねてヘッドフォンから出力し、ノイズを低減させる。
個人的には、ソニーのインナーイヤー型ノイズキャンセリングヘッドフォン「MDR-NC10」を使っていた時期がある。使い始めたのは10年近く前で、おそらく初代だったはず。この製品は結構気に入っていた。遮音性もなかなかだし、音質も好みに合っている。ただ、難点はケーブルの耐久性で、使い方が粗いのかどうかは知らないが、1年に1回ほど断線。ヘッドフォンの保証書など取っておかないので、3回以上は買い換えるはめに。1万円近くする製品なので痛かったが、まあ自分が悪いのだろう……。
買い換えるうちにも「MDR-NC10」は多少のマイナーチェンジをしていたように記憶しているが、その後、「MDR-NC11」「MDR-NC11A」へとモデルチェンジ。ここでは、最新機種「MDR-NC11A」(9870円)と、より本格的な「MDR-NC50」(2万4150円)を取り上げてみよう。
「MDR-NC11A」は、ドライバーユニット(イヤホン)と、ノイズキャンセリング回路を内蔵した本体部とで構成される。イヤホン自体は通常のインナーイヤー型ヘッドフォンと同様だが、超小型マイクが仕込まれている。ノイズキャンセリング処理には電源が必要なので、本体部へ単4形電池を収納し、電源スイッチや音量調整ダイアルも装備。ただ、本体といってもさほど大きくはなく、リモコンのようにクリップで衣服につけられる。
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